2013年11月29日金曜日

浅口市公民館での宇宙☆自然講座特別企画

 プロジェクトリーダの長田です。
柴田さんとともに、岡山天文博物館の 宇宙自然講座特別企画 京大おもしろ天文楽セミナー「3.8m望遠鏡がひらく宇宙」で講演をして来ました。

 私の話したのは「銀河系の中心部のナゾにいどむ京大3.8m新望遠鏡」ということで、数十人の熱心な方々の前で楽しむことが出来ました。「ガンマ線バーストの観測というのは、ガンマ線の波長が宇宙膨張のせいで延びて光や赤外線になるのですか」とか、「水島工業地帯の光害は支障にならないのですか」「補償光学をこの望遠鏡でも行なうなら、レーザーを上空に打ち出すのですか」「たくさんの焦点に、観測機器を並べるのですか」といった鋭い質問が出ました。

(簡単な答えを言いますと、「ガンマ線が突発的に輝いた時に、可視光線の残光もある、それを観測する」、「夜空が暗くないと出来ない観測ももちろんあるので、不要な光は出さないのが良いが、強調した赤外線の観測など、ハワイのマウナケアと全く遜色のない観測が出来るものも多い」、「レーザーガイド星を使わない方式での極限補償光学を開発しつつある」、「ナスミス焦点2箇所だけに観測装置を並べる」です。)

 その後は浅口市やその周辺の学校の先生方やPTAの方々との懇談も行ない、かつて188cmが東洋一の望遠鏡として建設された当時に県知事がおっしゃったという「岡山のニュートンを育てる」といった教育での貢献が、この新望遠鏡でも出来ればと思った次第です。




 
(木野さんのブログに続けての蛇足)ところで、私は2回生向けの英語のクラスの補助を担当していますが、そこでISON 彗星の話題が出ました。ネイティブの講師は、日本語で表すと明らかにコメット・イスンと言っているので聞いてみると、こういう略語の場合は、確立しているもの以外はどう発音しても勝手だがとの注釈付きですけど、普通にisonを発音すると、「イ」ソンが近いようですね、http://www.pronouncehow.com/english/ なんてサイトで聞いてみても。

 なお、私はニクスンとかオバーマと書くべきかどうかの論争に巻き込まれるつもりはありませんが、Halley彗星がどうしてハリー彗星として定着しなかったんでしょうねえ、不思議です。

2013年11月18日月曜日

早起きは三文の徳?


 制御担当の木野です。
 
  アイソン彗星が明るくなっているらしいので、ちょっと早起きして近所の見晴らしのいい場所で見てきました。
太陽に非常に接近する軌道なので、金星より明るくなるかもしれないと期待されている彗星です。
とはいえまだ5等星、京都の街明かりと低空の霞のせいであまり良く見えません。
口径50mmの双眼鏡で、かろうじて存在が分かる程度だったでしょうか。
12月にかけて明るい状態が続くので興味がある方は国立天文台のWebページなどを参考に探してみてください。

   早起きついでに、南禅寺まで紅葉の様子を見に行ってきました。
この時期の京都は土日ともなれば観光客で大変込みあうのですが、平日の朝なら混雑もなく静かでとても良い雰囲気です。
出勤前にこんなことができるのは、観光地に住んでいる者の特権ですね。



          南禅寺 三門の紅葉 2013/11/18
 
京都市街地の紅葉は次の週末あたりがピークでしょうか。

 

 
 
 

2013年11月8日金曜日

南極料理人を観て予習する


 プロジェクトマネージャーの栗田です。先週「南極料理人」(2009年製作)という映画を観ました。ドラマ音痴の僕でも「倍返し」は知っていて、その俳優さん(堺雅人さん)が主演で出てきたので期せずもミーハーな気分で楽しみました。
  この映画はヘンテコな研究者の性質をとてもうまく表現していてよくできていると思いました。かなり誤解を恐れずに言えば、今後「天文学者ってどんな人」と一般の方から聞かれるたびに僕は『「南極料理人」を観てください。』と答えたいくらいです。望遠鏡は僻地に作られます。きれいな夜空を得るために、人里離れた標高が高く、乾燥した極寒の地となります。そこでの生活は往々にして人間をあの映画の登場人物のように改造します。でも帰国して机に向かうと普通の研究者になります(なかなか戻れない人もいますが)。

 さて、なぜ僕がその映画を観たかというと予習のためです。私たちの望遠鏡の技術を応用した望遠鏡を南極のドームふじに建設しようという計画が2つもあるからです。そのうちの一方のリーダーである東北大学の市川教授が京大に打ち合わせに来られるので、その前にドームふじの雰囲気を知っておこうと思ったわけです。本題の議題はというと、どうやって望遠鏡を軽くしたり、-80℃でも壊れないようにするか、などです。南極はご存知の通りとても遠い上に道がありません。輸送するためには望遠鏡はできるだけ軽くて小さい方が良いのです。さらに極寒での作業ですから、組み立ても簡単でなくてはいけません。このような要求を満たすのが京大3.8m望遠鏡の技術というわけですね。



2013年11月1日金曜日

Spring has come


こんにちは。鏡製作担当の高橋です。
 
妙なタイトルだな、と思われた方が沢山いらっしゃると思います。
秋も深まってきたこの時期に何を言っているんだ!という感じでしょうか。
春は来ていません。来たのはバネでした。複数個のばねですし、一つだとしてもタイトルは間違っているのですが、思いついてしまったので、失礼します。
さて、このバネですが、何に使うバネかというと、鏡の自重変形をキャンセルするために使います。ある程度大きな鏡の形状をを測定する際には、鏡自身の重さによる変形が無視できなくなります。支えている点から離れるほど、変形量が大きくなってしまい、望遠鏡使用時の形状を測定できなくなってしまうのです。
 
この問題を避けるために使うのがバネによる支持です。
鏡を支持点3点上に設置した際に、鏡背面の点にかかる自重分だけバネが下から支えることで、自重変形をキャンセルすることができるのです。
もちろん、ただのバネをそのまま下に置いても必要な反力を得ることはできず、鏡背面に当たった時に必要な圧縮量になるようにあらかじめ調整が必要です。
ただ、ばね定数が180 gf/mm のばねを±36g程度の範囲に調整するのに必要なばね長さの精度は±0.2mmで、これはそれほど難しくはありません(とっても簡単!というほどでもないですが)。あらかじめ調整したバネ支持治具を10~20個程度使うことで、必要な形状を測定できるようになるのです。
今回は、形状測定時に必要な、縁の下の力持ちのお話でした。
 
では。