2014年5月30日金曜日

3.8m望遠鏡研究会

  プロの天文学者は、晴れていれば夜な夜な観測していると思われているらしい。だが、一般にはそうではない。どっかで読んだぞ、という方はこのブログの愛読者ですね。一般にはそうではないシリーズ第2弾です。(シリーズ化したのか?!)

201452223日、3.8m望遠鏡を用いたサイエンスや、そのための観測装置、望遠鏡時間の運用などについて、発表・討論するワークショップ(研究会)を開催しました。場所は、国立天文台本部(三鷹)で行いました。その発表内容は、http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/psmt/3rd_scienceWS.htmlにありますので、是非ご覧ください。「そうではないシリーズ」としては、この裏方の仕事を書きます。

この手の研究会を開催しようとする場合、まず旅費の確保が肝要です。ある程度の旅費がないと一箇所に集まることができないからです。国立天文台では、このような研究会開催のために旅費を補助するという制度を設けており、我々世話人は、旅費確保のために、3月には書類書きを行っていました。世話人の間で議論しながら、研究会の趣旨や必要とされる予算を算出し、作文します。今回は無事審査に通り、補助をして頂けることになりました。

旅費の目処がついたところで、研究会の開催をアナウンスし、その趣旨をお知らせして、講演募集を行います。しかし、その前にある程度のラインナップをそろえたいので、関心の高そうな人にお誘いをします。むろん、主催者側である京大や岡山観測所の人にも声をかけ、講演の概要を決めていきます。このような相談メールが飛び交い、あるいは会議で議論したりします。こうして研究会の骨格プログラムを作成しながら、講演申込や参加申込を受けつけます。懇親会も重要な機会ですので、そのお膳立てもしないといけないのですが、人数がなかなか読めずに四苦八苦します。

申込締切後には、講演時間や休憩時間を考えてプログラム編成を行います。今回はわりとすっとできましたが、講演数が多いと苦心することになります。同時に、旅費補助を希望した人を集計して、旅費の概算をします。今回は予算とほぼ同じになったので、たいした苦労はありませんでしたが、足りない場合は苦労します。(補助者が決まったら、後は事務の人にお願いします。)と、いうような仕事をGW中に行っていました。

そしてプログラムがほぼ決まったところで、再度アナウンスして、皆様是非お集まりください、というメールを天文学会のML等に流します。当日は懇親会会費徴収もありますし、受付の手配を国立天文台の方にお願いすることも重要な任務です。

かくして、研究会開催の運びとなります。スムーズな進行も世話人の役目で、タイムキープしながら進めます。議論が伯仲すると止めるのも気がひけ、かといって時間は守らないといけないので、苦しい立場におかれます。今回はTV会議接続希望も多く、その対応にも大童でした。(他所のシステムは使い方がよくわからない!)その後、発表内容をPDFでもらって収録として整備するという仕事が待っています。こうしてできたのが上記URLというわけです。

 このような仕事は皆我々自身で行います。今回の世話人は、京大附属天文台野上さん、国立天文台岡山天体物理観測所泉浦さんと筆者でした。次は8月のワークショップ!

太田耕司







研究会の様子






2014年5月23日金曜日

3D立体プリンターによる土星

 「今はやりの3D立体プリンタを買いました」と20139月のブログに書きました。目的は、土星や銀河系の立体模型をつくって、盲学校などでの出前授業に用いるためです。望遠鏡計画にも積極的に関与している3名の学生さん(江見さん、河端さん、長友さん)が相談してつくりあげてくれました。

 図はその試作品です。困ったのは、土星の本体と環を、どうくっつけるか、です。頭を悩ませました。が、結局、妙案もなく、橋渡しをしてつなげたものにしました。土星の環の内縁、外縁のサイズは文献からとってきたものですが、みてみれば、相当大きいですね。実際、できたものを間近でながめてみると、何となく実感が湧いてきます。

 さて今後ですが、アンモナイトや三葉虫の化石の模型を3Dプリンタでつくろうかと考えていましたら、「型をとって石膏でつくるのが手早い」と言われて、そういうものかと当初の信念がゆらいでいます。その代わり出てきたアイデアは、日本列島近辺におけるプレート運動や、台風の渦巻く雲を表す模型です。京大地球物理学教室の平原教授や余田教授と打合せをしていて、そんなテーマが浮かび上がりました。うまくできるかどうか、お楽しみです。できたら、今年度後半から予定している全国の盲学校巡りに持参し、生徒たちに触ってもらって、感想を聞いてきます。

 余談ですが、私たちはふだん目でみてものごとがわかった気になっていますが、見るだけではわからないこと、触ってみて初めてわかることがたくさんあります。ざらざら感などの触感だけでなく、温度(暖かさ、冷たさ)、重さなどもわかります。また、裏表を同時に触察できるのも、目による観察ではまねができないものです。そういえば、宇宙の中で目で見える(望遠鏡などで観測できる)物質は、1%に過ぎないということが最近わかりました。宇宙にはダークマターやダークエネルギーなど目で見えないもので満ちており、支配されていると思うと不思議な感じがします。


嶺重 慎



Dプリンタでつくった土星(試作品)

2014年5月16日金曜日

Is Everything All Right?

リーダの長田です。

  半年ほど前のスプリング ハズ カムという絶妙なタイトルに刺激されて、前回も英語の題名にしましたが、今回も悪ノリして続けます。

  日本語は論理的な言語じゃない、英語には敬語や婉曲表現がなくて微妙なニュアンスが伝えられないというような誤解があります。
いわく、日本語では文末に動詞が来るために最後まで聞かないと意味が取れない;しかし、英語でも関係代名詞や接続詞を連ねて長い長い文や意味のわかりづらい文を作ることが出来てしまいます。自分たちがもっぱら使う言語を奇妙に卑下するのはあんまり賢明なことではないように思います。しかし、世界で一番と言って他の言語がダメと決めつけるのも良くありませんね。

  ただ、Mother Tongueならぬおふくろの味などで幼少期に慣れてしまった味がやっぱり一番とは私も思うので、この点に関しては、某国の料理で美味しいものが多いとはあんまり思えません。七つの海を駆け巡ったのも、自国の料理に飽き足らなかったのではないかと勘ぐる始末。さらには、レストランに行って途中でウェイターやウェイトレスがやって来てイズ エブリシング オーライ?と聞くのもヘンな習慣だなあと思っていました。見よう見まねでWe are just fine.と言い続けつつ、うっとうしいと感じていました。
でも、これこそ英語の婉曲表現の一つで、必ずしも、料理に髪の毛が入ってないかといったことを聞きに来てくれているわけじゃなく、「さらにお金を払って追加注文してよ」と言いに来ているそうですね。微妙なニュアンスがわかってないのは私だったのです。ジャストファインと答えるのは、だから、それを断っているわけで、イヤそうな顔をして言っちゃあいけないなあと思った次第です。

  これも含めて、昔言っていたことを思い出すと赤面することも多いですが、この前のブログにならうと「是非とも初心忘るべからず、時々の初心忘るべからず、老後の初心忘るべからず」、人生の各段階における到達点やその時の経験を捨てずにとっておきなさい、そうすれば役に立つ、と信じて暮らしています。

  さて、望遠鏡計画はまさにEverything is All Right、このまま順風満帆に進んで行ってほしいものです。



で、某国の料理はイマイチでも、南アフリカには美味しい料理がちゃんとありました。






2014年5月9日金曜日

2014/5/9

 制御担当の木野です。

 今は分割鏡をはじめとする望遠鏡の制御システムを作っていますが、以前は分割鏡の形を精密に調べる「CGH干渉計」という測定器を開発していました。
高精度な鏡を作るには欠かせない装置ですが、4年ほど前に開発を終え、特にこの1年は全く出番がありませんでした。
しかし望遠鏡の予算がつき、建設へ向けた準備が進み始めたので、これら計画初期に開発を終えた装置を再び使える状態に整備する必要があります。
長い加工時間を要する分割主鏡の量産は最初に始まるので、それに合わせて近いうちにCGH干渉計の再設置・再調整を予定しています。

 このCGH干渉計はお椀型に凹んだ鏡の球心に置いて使います。
3.8m望遠鏡の場合、鏡から球心までの距離は10mも離れているので、鏡を加工する機械をまたいで高さ10mのタワーを建て、その上にCGH干渉計を置いています。
しかしこの測定タワー、普段はあまり使われないため階段がついておらず、頂上へのアクセス手段は「梯子」のみなのです。

 CGH干渉計は精密な測定器なので、調整にも結構手間がかかります。過去の経験上、設置・調整作業にはおそらく梯子を10往復以上することになるでしょう。
総距離100m以上の垂直移動。30階建の高層ビルに梯子で登るようなもので、デスクワークで鈍った体には結構キツイ。翌日の筋肉痛は確定です。
測定タワーの上に置かれたCGH干渉計(上方の黒い箱)手摺の向こうは高さ10mの空中です。