2018年8月24日金曜日

火星大接近天体観望会@京大吉田南グラウンド:私家版顛末記


627日のブログで野上君が宣伝していた観望会の様子を、私の経験した範囲内で紹介しようと思う。
731日―82日の3日間、19時頃から21時頃にかけて京大の吉田グラウンドで観望会が開催された。附属天文台主催で、宇宙物理学教室、NPO法人花山星空ネットワーク、花山天文台の将来を考える会、京都大学宇宙総合学研究ユニットの共催だが、京大天文同好会の協力もあった。(場所を貸してくださった京大野球部にも感謝。)皆さんのご協力で望遠鏡は毎日10台近く出て盛況であった。観望だけでなく、ミニ講演も1日に4回行い、火星や惑星の紹介もあった。
731日は火星大接近の日だったが、20時をまわらないと高度も低くグラウンドからみてもまだあまり高くない。しかし、この期間は、19時頃にはまだ金星が宵の明星として輝いており、望遠鏡で見ると半月のような形に見え、びっくりする人も。更にその東側にはこれまた明るく輝く木星が。縞模様を見て多くの人が感動。ガリレオ衛星の解説を聞いて、ふーん、と感心する人も。更にその東側にはやや暗いものの土星が輝いており、これも望遠鏡で輪が見えて、喜んでいる人が多かった。なかには土星の衛星を見つけた人もいた。土星だけでなく木星の人気が高かったのは意外(?)だった。そうこうするうちに、火星がよい高さになってくるので、いよいよ待望のご対面となるわけだが、火星では、少し前から砂嵐が発生していて、模様があまりよく見えない時期であった。しかし、砂嵐も火星名物であり、それはそれでよい思い出になったのではないかと(勝手に)思っている。このように火星に限らず多くの惑星を見ることができてよかったのではないかと思う。
観望会開催前には、一体何人位が参加するのか?ちょっとでは寂しいけど、いっぱいだと望遠鏡等が足りないだろうし、と心配していたが、結局、来られた方は、731日(火)(火星大接近の日)には600名(カウンターで勘定しているのでかなりの精度)、81日(水)は460名、82日(木)は270名とだんだん減ってきたが(最終日は天気が少し悪かった)、合計約1300名となかなかの盛況だったと言えよう。望遠鏡には、多い時には10人程度の列ができていた。(少ない時には待ち時間なし。)夏休み前半のためか、小学生等小さなお子さんが多く、親子で感動されている方が多かったように見受けられた。また、小さな子供たちは盛んに素朴な質問をして、その関心の高さにも圧倒された。
最後に一つとてもびっくりしたことを。昔(10年くらい前らしい)、岡山の国立天文台の公開日に京都から手伝いに行ったことがあるのだが、その時私の話を聞いたという小学生がナント私の顔を覚えていて声をかけてきた。そして、「その時の話を聞いて頑張って勉強して京大理学部に入りました、3回生になったら宇宙物理に進みたい」とのこと。私は記憶にないのだが(すいません)、こういったことがあると公開・観望会等の一層の励みになる。

太田 2018820



                        観望会の様子(西村昌能氏撮影)



2018年8月10日金曜日

天文教育と天文普及

 数ある学問の中から天文学を選んでよかったな、と今にしてつくづく思う理由の一つに、天文学は社会(一般市民)との距離が近い学問ということがあげられます。
 天文学と社会をつなぐ接点「天文教育・普及」活動に関する全国規模の研究会が、8月5-7日に慶應大学日吉キャンパスにて開かれました。主催は日本天文教育普及研究会(全国の天文研究者、小中高の先生、プラネタリウムや科学館など教育施設スタッフ、天文愛好者からなる団体)です。この研究会では毎回、思いもよらぬ、発想豊かな事例紹介が目白押しで、大きな刺激を受けています。今回も全部で160人超の方々が集まり、朝から深夜に至るまで熱い議論が繰り広げられました。初日にはJAXAの吉川真さんによる「はやぶさ2」の特別講演があり、また間瀬康文さんによる「はやぶさ実物大模型」の展示もありました(図1)。
 さて、今回の研究会、一つの大きな特徴がありました。初日限定ですが、すべての講演に手話通訳と、UDトーク(音声認識ソフト)を用いた言語情報の文字投影がついたことです。今回の研究会テーマは「みんなで楽しむ天文・宇宙」。宇宙や天文に興味をもち、もっと知りたい、もっと学びたいと思うことは障害のあるなしに関係ありません。しかしながら、音声情報を取り入れることが難しい聴覚障害者にとって、手話通訳などの情報保障がない会合には出席しづらいのです。そこで今回、本庄谷拓さんほか関係者の多大な協力を得まして、1日だけですが手話とUDトークを導入しました。
 今回、10人弱の視覚障害者・聴覚障害者の参加がありました。私は天文用語の手話表現をテーマに発表をしたのですが(内容はいずれまた)、参加の盲ろうの(視覚と聴覚に障害がある)方から今後の目標について質問がありました。「プラネタリウムや講演会等で、手話通訳や文字情報投影がごく当たり前になること」と答えました。

嶺重 慎


図1:はやぶさ実物大模型たけとよモデルⅡ
特定非営利活動法人ギガスター 間瀬康文氏提供