2019年10月18日金曜日

「それでも」私はガリレオ!

 リーダの長田です。

 京都新聞の第1面に、「星を見つめて 京大花山天文台から」というコラムが今年5月1日から1年間載っています。私も執筆に少しだけ協力し、10月下旬からは、いよいよせいめい望遠鏡に関する5回があります。その第1回、テクノロジーが宇宙観を変えた例として、「地球は動いている」から始めて、ガリレオが天体望遠鏡で見た金星や木星の姿がコペルニクス転回をもたらしたとするのは、良い書き出しかと思うのですが、ここ、「『それでも』地球は動いている」とは書きたくなかったのでした。

 理不尽な宗教裁判の中、信念を護ってこの言葉をぼそりとつぶやく孤高の科学者ガリレオというイメージは一般受けするものかも知れません。しかし、田中一郎「ガリレオ裁判――400年後の真実」によると、おそらく歴史の真実ではない、そもそもこの言葉は1633年当時の資料には全く出て来ず、18世紀のヨーロッパの人々の願望を反映した創作のようです。(ガリレオ裁判とは、正しくは「異端審問」と言うものであり、近代的手続の法概念に言う「裁判」ではないのだ、ということも初めて知りました。)ただ、日頃「地球は動いている」とガリレオが言っていたことは、間違いないでしょう。

 理学部や工学部だけでない全学共通講義の「宇宙科学入門」でガリレオの話をすると、必ず東野圭吾原作のテレビドラマ「ガリレオ」についてレポートに書く学生がいました。

 さて、8月下旬に、インドネシアのバンドン工科大学に行きました。西チモール地域の南緯10度 標高1300mティマウ山に建設中の3.8m望遠鏡に、赤外線を観測する機能を持たせることがいかに有意義か、「赤外線天文学」の話をしてきました。その時の学生の1人が、長田はガリレオに似ていると言ってくれたそうです。え、私があの偉大なるガリレオ・ガリレイに?と聞き返すと、いや、インドネシアでは日本のテレビドラマもなかなか良く見られていて、「ガリレオ」で帝都大学理工学部物理学科准教授を演ずる福山雅治さんも人気だとのことでした!

 岡田育さんという方の「ローラと新垣結衣が同じに見える異文化圏の目」(読売新聞 大手小町 編集部のサイト)を4月に読んだことは思い出しつつも、単に日本のキョージュと言ってもそれだけで同じに見えるわけではないだろうと思う私なのでありました。


 「暗黒の中世」(これもまた後世のヨーロッパ人の創作かも知れませんが)をイスラムの地で生き延びていた天文学、21世紀は、世界最大のイスラムの人口をかかえるインドネシアでも花開いてほしいと思います

[付録] 「太陽と似た恒星の周りを公転する系外惑星の発見に対して」2019年のノーベル物理学賞が授与されました。2015年12月18日のプロマネ栗田さんのブログ「マイヨール博士の言葉」をどうぞ御参照あれ。





2019年10月7日月曜日

初めての岡山天文台特別公開

こんにちは、広報・サイエンス担当の野上です。

 105()に岡山天文台初の特別公開が行われました。京都大学が持つ他の天文台、すなわち花山天文台と飛騨天文台の方はこれまでにもやってきていました。花山天文台の方は1999年に天文台創立70周年記念事業の一環で始まったので20年の歴史があり、飛騨天文台ではその次の年、2000年に始まりました。岡山天文台では今年220日にせいめい望遠鏡完成記念式典を行なってから、2つ目の一般の方への公式な公開行事となりました。

この岡山天文台特別公開の告知ページはこちらでした。ここにある通りで、公開時間は9時半から16時半、参加費無料、申込不要、定員なし、どなたでも参加可能、天文台まで自家用車で来てもらうこともできますし、JR鴨方駅から無料の送迎バスで来ていただくこともできます(9時ちょうどから15時ちょうどまで、途中13時ちょうど発のみ休止で1時間おきに発車)というものでした。内容は、せいめい望遠鏡ドーム内での見学+スタッフによるリレー解説、せいめい望遠鏡ドーム棟1階でのポスターパネル展示・解説、国立天文台ハワイ観測所岡山分室の188cm望遠鏡ドーム内での講演の3本立てでした。

リレー解説はこのブログの執筆者の一人の長田さんと私、岡山天文台の木野さんが30分ずつ交代でせいめい望遠鏡の解説をしました。せいめい望遠鏡の歴史、新技術、科学的な狙いなどの話をしましたが、メインは望遠鏡を実際に動かして見せること。せいめい望遠鏡は縦横高さが9m弱くらいですが、この大きさのものが動くスピードとしてはとても速く、いつも歓声が上がっていました。このスピードは世界的に見ても同サイズ以上の望遠鏡の2倍以上はあり、どの方向にも1分以内に望遠鏡を向けることができます。せいめい望遠鏡はこれを活かして、非常に変化の速い爆発現象の、まだ誰も見たことのない最初期の状況を観測しようとしています。

188cm望遠鏡ドーム内での講演は、11時から柴田さんによる「せいめい望遠鏡の目指すサイエンス:天体爆発現象とスーパーフレア」、13時から東京工業大学の佐藤文衛准教授による「188cm望遠鏡とHIDESで見つける太陽系外惑星」+東京大学の川内紀代恵研究員による「188cm望遠鏡の観測装置マスカットで迫る太陽系外惑星の特徴」、1445分から私が話をした子ども向け講演「せいめい望遠鏡のココがすごい!」でした。
188cm望遠鏡ドーム内で、望遠鏡の真下に椅子を出して講演を行なうスタイルは国立天文台岡山天体物理観測所時代からのもので、これまで通り50脚の椅子を出していたら、最初の講演で立ち見が出るくらいにお客様にきてもらったので、急遽ほかから20脚ほど持ってきました。
私の話はせいめい望遠鏡リレー解説で話した内容を噛み砕いたものにしたつもりでしたが、イマイチ子どもたちの反応は薄かったような。。。
この中で、「ブラックホールってどんな天体?」という質問への岡山天文博物館こども天文クラブのクラブ員の方の回答で、そのレベルの高さに驚かされるようなこともありました。

せいめい望遠鏡ドーム棟1階でのポスターパネルでは、せいめい望遠鏡の仕組みや実際にどういう観測がなされているか、また、花山天文台や飛騨天文台の紹介などが、京都大学の多くのスタッフによりなされていました。場所が狭い割に多くのポスターがあり、参加者の方にはなかなかゆっくり解説を聞いていただくことやポスターを見ていただくことが難しかったかもしれません。これは反省ですね。これらの解説、講演、展示以外でも、受付、参加者誘導、鴨方駅での案内、テント設営などなどで、当日スタッフだけで合計20名以上となりました。うち半分くらいは京都と飛騨からの参加でした。
 
さて来場者の方ですが、正確なところは把握が難しかったものの、400名以上は来ていただけたようです。中には京都でのイベントによく来られている方の顔もありました。岡山天文台特別公開は初めてで、どれくらいの参加者があるか不安もあったのですが、当日が好天に恵まれたこと、浅口市教育委員会や岡山天文博物館でも広報をしてもらったこともあり、予想以上の参加者だったと思います。今回の反省点も踏まえて、また来年以降も継続して行なっていきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。




たくさんの方にご来場いただきました