2014年4月23日水曜日

初心忘るべからず

プロジェクトマネージャーの栗田です。

4月3日に滋賀県東近江市の「西堀栄三郎記念探検の殿堂」のロボット製作サークルに所属する中高生らが当研究室を訪れました(京都新聞関連記事)。彼らはなんと国内のロボットサッカー大会で準優勝をはたし、さらに日本代表として7月にブラジルで開催される世界大会に出場するとのことです(是非サッカー日本代表のユニフォームを着てロボットを操って欲しいものです。)。
今回の訪問の目的は生徒たちが最先端の研究に触れることとのことで、実験室に来ていただき、望遠鏡計画の説明や開発中の機器を見学してもらいました。生徒たちがとても熱心だったので、予定時間を越えて雑談をしてしまいました。お別れのとき、退去する彼らの足がピタッと止まりました。彼らが釘付けになったのはちょうど1週間ほど前に行った実験室の大掃除で出た廃材+ゴミの山でした。凝視したまま躊躇している彼らを見て、あぁ、きっと欲しいんだろうなぁ、と思い、「持って行っても良いですよ。」というと一斉に群がりだしました(これには引率の方々も驚いていました)。「先生、これ良いですか!」と差し出すのはハンダがベチョベチョの基板だったり、配線がついたままのコネクタだったり、切り落としのアルミ板。。目をキラキラさせて何十分もゴミの山から動きません。モノを大切にし、自分の夢に生かそうという彼らの姿を見てとても嬉しくなりました。しかし、これでは次の訪問先に遅刻してしまうので後で郵送してあげることにしました。
研究規模が大きくなるとネジ1本を大切にする気持ちが薄らいでいきます。もう一度研究室に配属したときの気持ちを思い出してみることにしました。
廃材を物色する生徒たち。がんばれ未来のスーパーエンジニア!

2014年4月18日金曜日

テーブル周辺

 すっかり暖かくなって、細かいものさえ飛んでこなければ良い季節になってきましたが、相変わらず23度の現場から鏡製作担当の高橋です。

 今回は、鏡を加工する最前線、ナガセインテグレックス製研削機N2C-1300Dのテーブル周辺について、加工時の準備をご紹介します。

 テーブルと言っても、食卓的なものではもちろんなく、硝材等を載せる直径1.3mの鉄板に数十のネジ穴があけられたものを我々はテーブルと呼んでいます。
このテーブル、数um程度にフラットで、このフラットさを保ったまま回転することができます。
加工する硝材をテーブルに載せる際には、それらを支持し、固定するための下準備が必要で、下準備のための部品を「ジグ」と呼びますが、大別するとそれらの役割は2種類。
硝材を横から支えることと、下から支えることです。

 横から支えるジグの役割は、テーブル回転の遠心力や砥石の影響で硝材が飛んで行ったり、ずれたりしないように支えること、下から支えるジグの役割は、接触点が明らかな平面で硝材を支えることで、このジグのそれぞれの高さは1um以内程度に揃えられています。

 これらのジグは、ワークの違い(重量等)によって種類が変更されたり、追加されたりもします。例えば、自重変形が無視できない硝材の場合には、下から支えるジグに以前紹介したバネ支持が追加されたり、といった具合です。

 で、それらジグの固定はどうするのかというと、テーブルにあけられたネジ穴を利用したり、マグネットを利用したりします。
ネジどめは、しっかりと固定ができますが、ネジ穴の位置が決まっているため、少し不便な場合もあります。一方、マグネットはネジ穴の位置によらず、手軽に固定できますが、強い力や激力には弱いため、それぞれ用途に応じて使い分けています。

 こうして出来あがる下準備ですが、硝材は、高いものだと高級車が買える程の値段がするため、設置の際は深い注意が必要で、緊張の一瞬となります。


 では、今回はこのへんで。


ジグ準備中の一コマ。
上に見えている円盤が研削砥石です。




2014年4月7日月曜日

特別展「明月記と最新宇宙像~千年を越えて羽ばたく京の宇宙地球科学者たち~」

  天文台長の柴田です

 今年の93日~1018に、京大総合博物館で、特別展「明月記と最新宇宙像~千年を越えて羽ばたく京の宇宙地球科学者たち~」が開催されることになりましたので、皆様にお知らせします。
これまで京大総合博物館では、宇宙に関係した企画展として、2008年に「京の宇宙学」、2011年に「はやぶさ帰還カプセル特別公開」、2012年に「日食展」が開催されました。われわれ(附属天文台と宇宙物理学教室のスタッフや院生)は、そのつど全面的に協力してきました。「京の宇宙学」は京大全体の宇宙関係の研究成果を紹介するのが目的、「はやぶさ」は帰還カプセルの公開、「日食展」は京都で282年ぶりの金環日食に合わせて開催、というふうに、色々な理由がありました。しかし、今回のきっかけ(開催理由)はちょっと面白いのです。
皆さんご存知のように、藤原定家の日記「明月記」には超新星の記録が残されています。20世紀前半、欧米の天文学者たちは「かに星雲」が膨張していることを発見し、大きさと速度から、千年ほど前に爆発した星の残骸である(らしい)ことを明らかにしたのですが、ヨーロッパの古い文献をいくら探しても、爆発(明るい天体の出現)の記録が見つかりませんでした。それで「かに星雲」の正体は長らく謎のままでした。そういう時代に、日本のアマチュア天文家・射場保昭(Iba Yasuaki)氏が、「明月記」の中に「1054年おうし座付近(「かに星雲」の位置)に木星くらいの明るさの客星出現」という記述がある、ということを、英文で欧米に知らせたのです。1934年のことでした。これがきっかけとなり、(中国や韓国にも独立の記録があったこともあって)、「かに星雲」を作った爆発の正体が、「超新星」であることが確立されたのです(Mayall and Oort 1942, PASP 54, 95)。ここまでは良く知られた話なのですが、「アマチュア天文家・射場保昭」とはいかなる人物か?というのが、全く謎でした。
20106月に、京大名誉教授の竹本修三先生(地球物理学)が、私に次のようなメールを送って来られました:
『明月記を英文で紹介した日本人は誰だろうかということが話題になり、たまたまその頃、「宇宙と生命」の研究会のときに柴田さんから、「それは射場保昭氏である」というお話をお聞きしました。そこで、いろいろ調べてみましたが、その経緯は添付ファイルの6163ページに書きました。ここまでは分かったのですが、射場氏の生年、没年や本職は何をやっておられた方かについては、依然不明です。』
その後、竹本先生がこの原稿をHPにアップされておられたところ、201258日、竹本先生より
『射場保明氏に関するビッグ・ニュースです。氏の二男(満家氏:76歳)がご健在だということが最近わかりました。』
とメールが送られてきました。射場保昭氏の二男の射場満家氏が、インターネットを検索中に竹本先生の原稿を読まれ、
『私は射場保昭の二男です、、、』
というメールを竹本先生に送って来られたのです。連絡を受けて、私も竹本先生と一緒に満家氏にお会いしました。それで一気に射場保昭氏の顔(添付写真)や生没年(18941957)、本職(肥料輸入商)などが明らかになりました。
しかも、興味深いことに、射場保昭氏は、京大花山天文台の初代台長である山本一清博士(18891959)とも親交があり、山本博士の影響を受けていたことが、山本天文台アーカイブの解析から冨田良雄さんによって明らかにされました。山本博士は、日本人で最初の国際天文学連合の委員会の委員長として国際的に活躍するだけでなく、多くのアマチュア天文家を育てたことで知られています。そのアマチュア天文家育成の結果として、明月記の記録が世界に知られるようになり、最先端の天文学の発展に貢献したのです。何とおもしろいめぐり合わせでしょうか。
今回の京大総合博物館での特別展は、こういう京大ならではの、ユニークな宇宙地球科学研究の歴史を明月記とともに展示し、超新星や天体爆発現象に関連した最新宇宙像を紹介します。さらに、かに星雲の解明に貢献した歴史は、現在も天体爆発現象の解明に世界で最も威力を発揮する3.8m望遠鏡の開発という形で、脈々と受け継がれている、というアピールもしたいと思っています。関係の皆様には、ぜひご協力をお願いします。(ここには書ききれませんでしたが、おもな展示内容は、「山本一清博士」、「明月記」、「最新宇宙像」、「射場保昭氏」のほか、「京大宇宙地球科学のパイオニア達」、「石塚睦博士」に関する展示もあります。また、期間中には4次元宇宙シアターや天体観望会も特別開催します。)


射場保昭(いば・やすあき)氏
18941957)(射場満家氏より)

2014年4月1日火曜日

観測装置の名前

こんにちは。観測装置担当の松尾です。
昨日、京都もついに桜の開花宣言がありました。
皆様の地域はいかがですか?
 ここで小ネタをひとつ。
ちなみに、昨日は327日ですが、桜の咲く(39)の3x9=27で桜の日だそうです。
(う〜ん、少し無理矢理ですね)

今日は研究から少し離れたお話を提供します。
私たちが作っている観測装置についに名前がつきました。
その名も「Second-generation Exoplanet Imaging with Coronagrahic Adaptive optics」です。日本語訳すると、第二世代太陽系外惑星撮像です。
 では、第一世代はあるのか?と聞かれると、すばる望遠鏡で2009年からスタートして5年目を迎えた惑星探査プロジェクトがそれにあたります。
海王星軌道(30AU)の惑星が発見され、世界中のメディアに取り上げられ話題になりました。
 私たちは、第一世代の観測装置の経験を活かして、観測装置の性能を大きく引き上げて、地球軌道(1AU)の惑星の発見を目指します。

そもそも観測装置に名前をつける理由は、名前を簡略化して呼べることや親しみを持たせることにあります。
後者の代表的な例がすばる望遠鏡です。すばる望遠鏡は愛称が一般公募されて決まりました。今では愛称ではなく、正式名称として使われています。すばる望遠鏡の計画・建設段階での名前は、すばる望遠鏡ではなく、大型光学赤外線望遠鏡(Japan National Large Telescope: JNLT)でした。JNLT4文字に簡略化されますね。

私たちのグループでも京大岡山3.8m望遠鏡の惑星探査装置と毎回呼ぶのは大変なので、
英語で第2世代太陽系外惑星撮像という意味を込めて、その英語の頭文字で呼ぶことにしました。
 その頭文字は「SEICA (せいか)」です。
なぜ、呼び名を「せいか」にしたか?と聞かれると、「私の長女の名前 !?」だからです。

補足しておくと、私は決して推薦していません・・・。


最近のはやりのファッション?です