2020年1月31日金曜日

織姫星ベガはもうすぐ超新星爆発しますか


 リーダの長田です。
 京大では、人社系研究紹介フリーペーパー「ACADEMIC GROOVE Vol.1 SIGNAL」を発行しました(2019111日)
https://www.kura.kyoto-u.ac.jp/act/622
とあり、たしかに黒っぽい冊子が生協の食堂にも置いてあります。どうやらメインは、理系研究者が書く「貴方にSIGNALを与える起爆書ガイド」というところで、理学研究科でも生物の教授(私の一つ上と思います)が、自分の大学生時代には「二十歳の原点(高野悦子)」を誰もが持っていた、と書かれています。  私の大学時代はと言えば、今のNHKEテレ「100分で名著」に出てくるような本を読みあさってもいましたが、ふと思い出したのはハヤカワSF文庫のペリー・ローダンです。ドイツ生まれのスペースオペラ、日本での出版も2019年末で1200話を超えているとのことで、日本版の刊行が始まったのは1970年代だったのでした。ウィキペディアでも、単に作品としてだけでなく、「宇宙英雄ペリー・ローダン作品一覧」などという項目まであります。かつて、ギネスブックで「世界最長の小説シリーズ」とされていたと聞きます。
 ドイツでの第1話は1961年、アポロ計画をほうふつとさせる人類初のアメリカの月着陸船に搭乗したペリー・ローダン少佐が宇宙の高度知性体と遭遇し、人類が銀河種族となって行く話です。おそらく私は150(日本版で75)ぐらいまで読んだのではないかと思います。その第10話は「決戦!ヴェガ星域」で、その後(1975年)太陽系帝国は、27光年を超空間ジャンプで一気に飛び越え、ヴェガ星系にある42個の惑星のいくつかに基地を築きます。しかし、なぜか第19話「宇宙の不死者」ではヴェガが膨れ上がって爆発しそうになるのです。それはまあ、恒星の運命も変えてしまうこともできる極めて高度な技術を持った知性が、生命を不死にする話につながって行きます(ローダンが不死になってくれないと、ドイツでの数千話、日本での1200話にならないわけです)。150話ぐらいで終わっている私には想像もつきませんが、さらに人類は、アンドロメダ銀河まで遠征したりM87銀河の支配種族とやり合ったりして行くようです。
 さて、最近のアウトリーチの講演で良く聞かれるのは、「オリオン座の赤い1等星ベテルギウスは近々に超新星爆発しますか」という質問です。ベテルギウスは年齢1000万歳、星の進化の最終段階に来ている、質量が太陽の10倍の赤色超巨星です。しかも2019年の末には急激な明るさの減少が観測され、何かが起こっている、すわ超新星爆発?とのニュースが流れました。N新聞の方からも「ベテルギウスの超新星爆発をせいめい望遠鏡で観測したいですね」と年賀状をいただきました。私も観測したいです! ただ、たしかに終焉が近いとは言うものの、例えば1000年の文明が滅びつつある、という時に、そういう予兆が出ても999年で滅びるのか1000年まで生き延びるのかわからないように、およそ1000万年の寿命のうちで今夜超新星爆発があるのか、1万年後なのか、それはわからないというのが、ほとんどの天文学者の考えでしょうね。


画像の説明:
ヨーロッパ南天天文台による、ベテルギウスの想像図。右に見える尺度は太陽系での天王星、海王星の軌道に相当する長さまで描かれており、超巨星ベテルギウス(太陽から木星までの距離ほどの大きな半径を持つ)から、ガスがそういった遠方までも湧き出している様子が想像されている(著作権 CC 4.0の画像)。

 織姫星ベガの方は、質量が太陽の3倍足らず、ガスが流れ込んでくることもなく、おそらく何億年か後には静かに恒星としての一生を終えて行くものと思います。想像を絶する宇宙の知性体がペリー・ローダンの行く手に現れない限りは。








2020年1月10日金曜日

日本天文学会天文功労賞


サイエンス担当の野上です。

あけましておめでとうございます。
昨年はせいめい望遠鏡の共同利用が始まりました。正直なところ、いろいろな点で見切り発車のようなもので、ソフト面・ハード面とも大小さまざまなことがあり、なんとかかんとか切り抜けてきた感じです。それでもトラブルに対応しながらだんだんと望遠鏡全体としての性能も上がってきて、観測もそれなりに順調に行えるようになってきており、ぼちぼち成果が上がってきています。今年はどーんと発表できるような成果を期待しましょう。私も頑張ります。今年もどうぞよろしくお願いします。

さて、私は日本天文学会の天体発見賞選考委員を10年ほど務めています。
この賞の歴史は古く、天文学会の天体発見賞受賞者名簿を見ると1936年から始まっているようです。初期は彗星の発見が多かったのですが、だんだんと新星・超新星に移行してきています。ここで表彰されているのは、いわゆるアマチュアの方々です。発見された天体を見ると、確かにその分野の研究が大きく進む契機となった天体が含まれています。
アマチュアの方々の活躍が今でも先端を切り拓く可能性のある研究分野は多分多くなく、これも天文学の魅力の一つなのでしょう。こういう天体発見における日本人アマチュアのレベルは世界一と言ってよく、その源流の一つである花山天文台の初代台長・山本一清氏のアマチュア育成の功績はいくら強調してもしすぎることはないでしょう。

そして天体発見賞選考委員会は、天文功労賞の選考も行ないます。これは、「天文観測活動等が天文学の進歩及び普及に寄与した、天文学研究を主たる業務としない個人、または団体を対象に、長期的な業績と短期的な業績に分けて表彰」するという制度です。この長期部門の選考で、私はいつも大きな感動を包まれます。

この10年の長期部門の受賞者転載します。
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18(2018) 吉田誠一
 彗星観測データベースのオンライン普及と新天体自動捜索プロジェクトの主導
17(2017) 冨岡啓行
 小惑星による恒星食の多数回観測と小惑星の衛星の検出
16(2016) 藤森賢一
 60年以上の長期にわたる太陽活動の観測
15(2015) 永井和男
 長期にわたる変光星の観測,自作ソフトウェアの公開、及び変光星観測者の育成指導
14(2014) 宮坂正大
 長期にわたる太陽系内小天体の位置観測と物理観測の指導普及活動、プロ-アマ協調における研究観測
13(2013) 堀川 邦昭
 長期に及ぶCMTによる木星面諸現象のドリフトの定量的観測の継続
12(2012) 前川公男
 長期にわたる電波ビーコン発信による流星電波観測への貢献
11(2011) 浜野和弘巳・浜野和博子
 長期にわたる緻密なライトカーブ観測による小惑星研究への貢献
10(2010) 門田健一
 長期にわたる膨大な数の彗星観測および新天体確認への貢献
9(2009) 板橋伸太郎
 60年にわたる太陽黒点観測
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 こんなんですよ!皆さん10年、20年と続けられていて、中には60年以上なんて言葉も出てきています。本当に長期にわたって、本業でもないことに時間もお金もかけて、コツコツとやり続ける方がおられるわけです。その情熱に胸を打たれます。本当に頭が下がります。きちんとその活動を認め、表彰する天文学会も素晴らしいと思います。

 さて、先日2019年度の選考委員会が開かれ、天体発見賞も天文功労賞も推薦する方が決まりました。正式な決定は113日の天文学会代議員会で決まるのでここでは明かせませんが、ふさわしい方となっていると思います。

 こういう方々を「選考する」という、大変おこがましいことをする委員に私も名を連ねているわけです。精進しなきゃいけないなあとわが身をふり返させられる年末年始が、この10年続いています。

 写真は正月らしく初日の出。
のトップページにあるものです。新年早々無断転載すいません。






2019年12月27日金曜日

空を見上げる

中学の帰りのバスの中、何気なく夕暮れの空を眺めていると月と金星が接近していました。ひょっとすると、と期待してしばらくバスに揺られながら見ていると、金星が月に隠されました(お、金星は月より遠いや)。バスを降り、家までの道中しばらく眺めていました。「今日は金星食がありました。」とテレビが伝えていたことをなんとなく覚えています。

何気なく観れた現象なので、頻繁に起こることだと思っていたのですが、どうも前回は2012年8月に起き、それ自体が23年ぶりだったそうです。そう、つまりその前とは僕が観た金星食で、確かにあったのです。その時の様子がYoutube にアップされていました。

次回はなんと2063年です(何とか観れるかな)。しかも金星は宵の明星、明けの明星と言われるように夜間は観測困難です。2012年は明けの明星のときで、午前3時ころの大変高度の低い位置でした。知らずして見ることは朝帰りの酔っぱらいか漁師さんしか不可能です。つまり何気なくこの現象を観れたということはそれはそれはラッキーなことだと思います。

最近、生まれて初めて月と重なる飛行機を目撃しました(あ、月は飛行機より遠いや)。写真では見たことがあるのですが、これもネットで調べてみると、飛行場近くで日時、方角を狙って撮影しているようです。では、偶然見れる確率はどれほどでしょうか。まじめに計算するとめんどくさいので、これでどうでしょうか。まず空の広さは月に対しておよそ10万倍あります。飛行機はパッと夜空を見たとき、複数飛んでいるときもあれば全く飛んでない時もありますが、まぁここは1機だけ必ず度飛んいるとしましょう。
僕が観たときのように飛行機が高高度を飛んでいるとき、飛行機は月より十分小さく見えます。また飛行機はあっという間に月の前面を通過してしまいます。

つまり月も飛行機もランダムに空のキャンバスに放り投げられたとみなせます。ということは夜空をチラ見したときに、月と飛行機が重なる確率はざっくり10万分の1と言えます。毎晩1回夜空をチラ見したとすると(毎日晴れだとしますが)、この現象に遭遇するには273年かかりそうです。。



2019年11月29日金曜日

お役立ち情報 その3


光学など担当の岩室です。

 このシリーズも3回目になりましたが、ビニール傘の直し方、ケーブルの巻き方、に続いて3年ぶりのお役立ち情報です。今回は物干しスタンドの延命方法です。
皆さんのご家庭でも物干しスタンドと呼ばれるパラソル状の物干し台を使っているかと思いますが、強度の強いステンレスの骨組み構造に比べて、アーム部分はプラスチックで、だんだんと劣化して折れていきますよね。最後には腕がほとんど無くなって骨組み部分の処理に困ったりします。しかも、交換用アームはなぜか販売されていません(本体の売れ行きが落ちるからなのだと思いますが…)

 パラソル型の物干しスタンドとよく似たものとして、パラソルハンガーと呼ばれるものがあります。これには中央の軸が細いものと太いものの2種類があって、ここで使うのは太い方です。例えば、これです。持ち手のような部分が下部に突き出ているものであれば、多分どのパラソルハンガーでも使えると思います。実は、この商品、中央の軸部分の太さが物干しスタンドの接続部と同じ太さになっています。なので、中央の軸を引き抜けば物干しスタンドのアーム部分として使えるのです。手順は以下の通りです。



上左:アームが何本か折れた物干しハンガーです
上右:購入したパラソルハンガーです
中左:持ち手最下部の引っ掛け部を外します
中右:軸周辺の引き抜き防止用の爪に厚紙を挟んで爪が引っかからないようにします
下左:引きぬいて部品を並べたところです
下右:新しいアームを物干しスタンドに付けたところです

 腕が幾つか無くなったアームは、外置きの更にボロボロの物干しスタンドのアームと交換して、外置き用として使います。この方法で、最終的には全てのアームが風化して折れるまで使い切ります(外置きはプラスチックの劣化が早いので2年程度で全て折れます)
我が家はこの方法で物干しスタンドのアームを5回程度交換しており、同じ物干しスタンドの骨組みを10年以上延々と使い続けています。その場合問題となるのがスタンド下部の脚の付け根部分で、ここばかりは交換品になりそうなものは見たことがありません。上写真最後のコマをよく見れば、3本の内の1本の脚の付け根が結束バンドで補強されていることがわかります。この脚の付け根は既に割れていてかなりガタの来ている状態です(外置きのものはもっとひどい状況ですが)

 物干しスタンドなんて安いものなので、パラソルハンガー2個分程度の値段で十分買えるのですが、使える部分を捨てちゃうのは勿体無いですよね。私は結構貧乏症で、通常ならすぐに捨てるようなものでも使える可能性がありそうであれば残し、部分的に使えそうであれば解体して使える部分を残します。
逆に、使えないと思うものであればバンバン捨てるます。使えるか使えないかの判断が悪ければ、ゴミ屋敷の主人になりかねない素質があるので、周りの人は結構注意が必要かもしれません…

2019年11月19日火曜日

マルチメッセンジャー天文学事始:その後の重力波

 201941日から、米国のアドバンスド・ライゴ(advanced LIGO)とヨーロッパのアドバンスド・バーゴ(advanced VIRGO)等が連続観測を開始し(O3ランという)、10月はメンテナンスでお休みだったが(49月をO3a11月からをO3bと呼ぶ)、この間の様子を少し記そうと思う。

我々が最初に受けたアラートは、S190408anというイベントであった(48日世界時に検出)。これは連星ブラックホールで、距離は1473Mpc(これは光度距離で、新聞や雑誌で普通に使う言葉で言えば、33億光年に対応)というものであった。その後、ぽつぽつアラートが出たが、ほとんどは連星ブラックホールであった。10月までのアラートの統計をとってみたところ、連星ブラックホールからの重力波は、1週間に1回程度の頻度で発生している。最初の重力波検出(150914)では連星ブラックホールということで大変オドロイタのであるが、今や日常茶飯事になってしまった。150914では太陽の30倍程度の質量のブラックホールの連星ということで、これにも驚いたが、これらのイベントの多くもそのような重いブラックホールで、その起源が気になるところである。また、こういった系からは強い重力波が放出されるため、多くのイベントは遠くて、33億光年というのもびっくりするほど遠いものではない。現在これを書いているのは11月だが、連星ブラックホールというアラートが来ても、「ああ、またか」という感じで、昔の興奮はどこに行ったのか、と思ってしまう。連星ブラックホールの場合は、合体しても電磁波を出す積極的な要因が見出せず、また、あっても非常に弱いと予想される。しかも何十億光年も離れているとみかけの明るさは絶望的な暗さになると予想され、我々の望遠鏡では(すばるは別かもしれないがそれでも非常に厳しいであろう)、とても検出は難しい(検出が困難なのと他の変動天体との峻別が困難)ので、早い時期から諦めモードになった。連星ブラックホール出現の報には、「ああまた出たか。今回もスルー」という立場を取らざるを得ない。毎週何も見えないであろう天体を一所懸命に探すのはあまりに非効率的である。

そこで、連星中性子星の合体や、中性子星とブラックホールの連星の合体とされる重力波に集中することにした。これらは中性子星があるので、電磁波で輝くと予想されるからである。実際、170817では、電磁波が検出され、理論モデルとの比較でいろいろな知見が得られた。これも10月までの統計で見ると、年間に数回程度の頻度が見込まれる。また、連星の片一方の星の質量が太陽質量の3-5倍と推定される場合には、(ブラックホールの最小質量と中性子星の最大質量の間という意味で)mass gap(質量のギャップ)と呼ばれるケースに分類され、これも興味深いケースなので、こういうイベントが出ると張り切って観測を実施することになる。

201988日(世界時)には、久々に連星中性子星の可能性が高いアラートが出た。可能性としては40%程度だったのでやや微妙ではあるが、日本では午前中だったので、朝からJ-GEM内では盛り上がり、今夜は観測だ!と張り切っていた。が、夕方になる前にこのアラートは撤回されてしまった。まあ観測前だったので被害(?)がなかったということで良しとするかという感じであった。ところが822日(世界時、日本時では午前10時頃)には、ナント確率ほぼ100%の連星中性子星イベントが報じられた。しかもこれは近くて、170817の再来か!と、また興奮状態に陥った。しかし、2時間後には撤回された。。。829日にはmass gapイベントが出たが、これは位置不定性が大きく、なんか変だなと思っていたら、撤回された。という感じで、気のせいか(いや、多分統計を取ると気のせいではないと思うが)、連星中性子星とか中性子星とブラックホール連星、mass gapのイベントは、撤回されるものが多いと思う。一体何が原因なのかよくわからないが。と、いう感じで、今のところ、電磁波対応天体発見には至っていない。国際研究会でも何の報告もないので、世界中誰もその後電磁波をとらえたイベントはなさそうである。

20191110日に、バースト型と分類されるアラートが来た。これは初めてみるイベントで、皆さんびっくりした。バーストに分類されるのは重力波の波形モデルを介さずに検出されたものであるが、連星系ではないだろうから、多分超新星であろうということで、初の超新星検出か!と大騒ぎになった。超新星が起源だとすると、もともと重力波は弱いので、近傍宇宙で発生したことになり、J-GEMでは距離は数十kpc程度内だろうという話になった。数十kpcというのは、お隣の銀河とよく称されるアンドロメダ銀河(M31)よりもずっと近く(M31600kpcの距離にある)、我々の銀河のまわりを回っている、大マゼラン、小マゼラン銀河程度ということである。超新星1987Aみたいのが出るかもしれない!ということでわくわくした。ただ、南天が主な領域なので、日本から観測可能な領域はわずかであった。近傍銀河のカタログを元に北天の可能性のある銀河は観測してみたが、特に何もない。南天は、IRSFとかB&CMOAIIといったJ-GEM連合の望遠鏡が活躍できる。一方で、このような近距離で超新星が爆発したら、南半球の人なら目でも見えるかもしれない。そういった報は何もなくて、皆で不審に思っていた。しかし、超新星爆破で重力波が到来しても、電磁波で輝くまでには時間がかり、1-2日は遅れる可能性もあるので、もうしばらく様子を見ることにした。やがて、大マゼラン銀河で新星らしきものが出現という報があったので、これをMOAIIB&C望遠鏡で観測したところ確かに増光天体が見つかった。しかし、これはその後他の天文台でスペクトルが取られ、超新星ではないことがわかった。残念。

ところで、この距離で超新星爆発が起これば、時間差がさほどなくニュートリが出ると予想されるので、スーパーカミオカンデ(SK)でニュートリノ検出があったのかどうか、J-GEM内で話題になった。大マゼラン銀河中での超新星1987Aでは、カミオカンデでニュートリノを検出できたのだから、SKなら確実にニュートリノを検出できるはずである。しかし、残念ながら我々はSKとホットラインがなく、また緘口令がひかれているのかもと疑ったりしていた。1114日にSKを運用している宇宙線研究所に行く用事があったので、同研究所のSKには直接携わってない知り合いに聞いてみたら、あっさり「何も検出されてない」との返事。やはりどうも怪しいなあ、と思っているうちに1115日に撤回。うーん、なんて人騒がせな、、、もう少し早く撤回して欲しかったなあ。
と、いう日々が続いている。

     太田記

2019年10月18日金曜日

「それでも」私はガリレオ!

 リーダの長田です。

 京都新聞の第1面に、「星を見つめて 京大花山天文台から」というコラムが今年5月1日から1年間載っています。私も執筆に少しだけ協力し、10月下旬からは、いよいよせいめい望遠鏡に関する5回があります。その第1回、テクノロジーが宇宙観を変えた例として、「地球は動いている」から始めて、ガリレオが天体望遠鏡で見た金星や木星の姿がコペルニクス転回をもたらしたとするのは、良い書き出しかと思うのですが、ここ、「『それでも』地球は動いている」とは書きたくなかったのでした。

 理不尽な宗教裁判の中、信念を護ってこの言葉をぼそりとつぶやく孤高の科学者ガリレオというイメージは一般受けするものかも知れません。しかし、田中一郎「ガリレオ裁判――400年後の真実」によると、おそらく歴史の真実ではない、そもそもこの言葉は1633年当時の資料には全く出て来ず、18世紀のヨーロッパの人々の願望を反映した創作のようです。(ガリレオ裁判とは、正しくは「異端審問」と言うものであり、近代的手続の法概念に言う「裁判」ではないのだ、ということも初めて知りました。)ただ、日頃「地球は動いている」とガリレオが言っていたことは、間違いないでしょう。

 理学部や工学部だけでない全学共通講義の「宇宙科学入門」でガリレオの話をすると、必ず東野圭吾原作のテレビドラマ「ガリレオ」についてレポートに書く学生がいました。

 さて、8月下旬に、インドネシアのバンドン工科大学に行きました。西チモール地域の南緯10度 標高1300mティマウ山に建設中の3.8m望遠鏡に、赤外線を観測する機能を持たせることがいかに有意義か、「赤外線天文学」の話をしてきました。その時の学生の1人が、長田はガリレオに似ていると言ってくれたそうです。え、私があの偉大なるガリレオ・ガリレイに?と聞き返すと、いや、インドネシアでは日本のテレビドラマもなかなか良く見られていて、「ガリレオ」で帝都大学理工学部物理学科准教授を演ずる福山雅治さんも人気だとのことでした!

 岡田育さんという方の「ローラと新垣結衣が同じに見える異文化圏の目」(読売新聞 大手小町 編集部のサイト)を4月に読んだことは思い出しつつも、単に日本のキョージュと言ってもそれだけで同じに見えるわけではないだろうと思う私なのでありました。


 「暗黒の中世」(これもまた後世のヨーロッパ人の創作かも知れませんが)をイスラムの地で生き延びていた天文学、21世紀は、世界最大のイスラムの人口をかかえるインドネシアでも花開いてほしいと思います

[付録] 「太陽と似た恒星の周りを公転する系外惑星の発見に対して」2019年のノーベル物理学賞が授与されました。2015年12月18日のプロマネ栗田さんのブログ「マイヨール博士の言葉」をどうぞ御参照あれ。





2019年10月7日月曜日

初めての岡山天文台特別公開

こんにちは、広報・サイエンス担当の野上です。

 105()に岡山天文台初の特別公開が行われました。京都大学が持つ他の天文台、すなわち花山天文台と飛騨天文台の方はこれまでにもやってきていました。花山天文台の方は1999年に天文台創立70周年記念事業の一環で始まったので20年の歴史があり、飛騨天文台ではその次の年、2000年に始まりました。岡山天文台では今年220日にせいめい望遠鏡完成記念式典を行なってから、2つ目の一般の方への公式な公開行事となりました。

この岡山天文台特別公開の告知ページはこちらでした。ここにある通りで、公開時間は9時半から16時半、参加費無料、申込不要、定員なし、どなたでも参加可能、天文台まで自家用車で来てもらうこともできますし、JR鴨方駅から無料の送迎バスで来ていただくこともできます(9時ちょうどから15時ちょうどまで、途中13時ちょうど発のみ休止で1時間おきに発車)というものでした。内容は、せいめい望遠鏡ドーム内での見学+スタッフによるリレー解説、せいめい望遠鏡ドーム棟1階でのポスターパネル展示・解説、国立天文台ハワイ観測所岡山分室の188cm望遠鏡ドーム内での講演の3本立てでした。

リレー解説はこのブログの執筆者の一人の長田さんと私、岡山天文台の木野さんが30分ずつ交代でせいめい望遠鏡の解説をしました。せいめい望遠鏡の歴史、新技術、科学的な狙いなどの話をしましたが、メインは望遠鏡を実際に動かして見せること。せいめい望遠鏡は縦横高さが9m弱くらいですが、この大きさのものが動くスピードとしてはとても速く、いつも歓声が上がっていました。このスピードは世界的に見ても同サイズ以上の望遠鏡の2倍以上はあり、どの方向にも1分以内に望遠鏡を向けることができます。せいめい望遠鏡はこれを活かして、非常に変化の速い爆発現象の、まだ誰も見たことのない最初期の状況を観測しようとしています。

188cm望遠鏡ドーム内での講演は、11時から柴田さんによる「せいめい望遠鏡の目指すサイエンス:天体爆発現象とスーパーフレア」、13時から東京工業大学の佐藤文衛准教授による「188cm望遠鏡とHIDESで見つける太陽系外惑星」+東京大学の川内紀代恵研究員による「188cm望遠鏡の観測装置マスカットで迫る太陽系外惑星の特徴」、1445分から私が話をした子ども向け講演「せいめい望遠鏡のココがすごい!」でした。
188cm望遠鏡ドーム内で、望遠鏡の真下に椅子を出して講演を行なうスタイルは国立天文台岡山天体物理観測所時代からのもので、これまで通り50脚の椅子を出していたら、最初の講演で立ち見が出るくらいにお客様にきてもらったので、急遽ほかから20脚ほど持ってきました。
私の話はせいめい望遠鏡リレー解説で話した内容を噛み砕いたものにしたつもりでしたが、イマイチ子どもたちの反応は薄かったような。。。
この中で、「ブラックホールってどんな天体?」という質問への岡山天文博物館こども天文クラブのクラブ員の方の回答で、そのレベルの高さに驚かされるようなこともありました。

せいめい望遠鏡ドーム棟1階でのポスターパネルでは、せいめい望遠鏡の仕組みや実際にどういう観測がなされているか、また、花山天文台や飛騨天文台の紹介などが、京都大学の多くのスタッフによりなされていました。場所が狭い割に多くのポスターがあり、参加者の方にはなかなかゆっくり解説を聞いていただくことやポスターを見ていただくことが難しかったかもしれません。これは反省ですね。これらの解説、講演、展示以外でも、受付、参加者誘導、鴨方駅での案内、テント設営などなどで、当日スタッフだけで合計20名以上となりました。うち半分くらいは京都と飛騨からの参加でした。
 
さて来場者の方ですが、正確なところは把握が難しかったものの、400名以上は来ていただけたようです。中には京都でのイベントによく来られている方の顔もありました。岡山天文台特別公開は初めてで、どれくらいの参加者があるか不安もあったのですが、当日が好天に恵まれたこと、浅口市教育委員会や岡山天文博物館でも広報をしてもらったこともあり、予想以上の参加者だったと思います。今回の反省点も踏まえて、また来年以降も継続して行なっていきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。




たくさんの方にご来場いただきました