2014年7月31日木曜日

僕のともだち

プロマネの栗田です。

昨晩録画しておいたNHKスペシャル「調査報告 STAP細胞 不正の真相」を観ました。この件に関して論文不正は事実とされていますが、STAP細胞の有無の結論は出ていません。また様々な有識者から見解が出ているのでおこがましく僕が触れることはしません。ただ、僕自身も発表時はとても心躍って勇気づけられたことを覚えています。その時、生物分野の研究をしている複数の友人にSTAP細胞の解説や今後の展望を訊きました。研究者らの生の反応をお楽しみください。

2014130日の僕の(アホな)質問メールの抜粋
「鳥取大と理研のニュースが立て続けに出て、とんでもない研究成果だなぁとぼんやりと感動していますが、実用化まで行きそうなのでしょうか。また、今回みたいな聞いたこともない切り口のように、多くの研究者が独自の手法でこういった問題に挑んでいるのでしょうか。」

同日A氏からの返信の抜粋
「低pHで未分化な細胞が誘導されたのは、興味深い研究結果だと思います。厳しい審査も通ったので、今報告されている実験結果は事実なのでしょう。原著論文で、「サンショウウオのanimal cap(狭義で何を意味してるかは不明瞭ですが、どこかの器官か組織だと思う)を低pHにさらすと、本来できないはずの神経ができます!(1947)」とあります。ここが彼女達のアイデアの原点だったのかもしれません。 ==== 他のラボでの追試が待たれますね。」

同日B氏からの返信の抜粋
「コレスポ(論文の責任著者)をちゃんとおぼかたさんが取っていることがやはり凄く重要だと思います。また、遺伝子組換えを経ないことは、時代の流れから凄く重要ですね。体細胞が胚細胞に戻るっていうのは生物学ではほんとに驚きの発見です。植物ではトチポテンシーということで、植物ホルモンバランスを換えれば植物体をカルス状態から再生できますが、完全な胚細胞にはできないのでは。ということで、かなりのインパクトですね。最初に投稿してから1年かかっているそうなので、かなりの実験をしてデータは確かでしょう。 ==== 山中先生の流れでいくと、おぼかたさんは最年少ノーベル賞もあるかもしれませんね。アイデアを大切に大きな発見をするとこが凄いっすね。僕だったら、逃げますね。」

同日僕のアホな返信の抜粋
iPSから10年も経っていないわけだから、今回の(方法)が最適かどうかも分からないですね。5年後には何もしなくても初期化するみたいな技術が出てきたりして。。」

同日C氏からの返信の抜粋
「コレスポ(論文の責任著者)ですが、よくこれだけの内容のコレスポになろうとしたことに尊敬。30歳の僕では怖くて無理です。今ならできるかな?これだけの研究者ですから、たとえこれからどんな結論を迎えようとも立ち向かっていけるとは思うのですが、万が一この結果が思い描いていたもの違った時、彼女はどう対処し立ち回るんだろうか?(例えば、リプラミング出来たのではなく、たまたま幼弱細胞集団に多機能性を持つストレスに強い細胞が僅かながらにあったとか、、。だとしても、すごい発見であることには変わりないですが。)」

以上、報道では伝わらない研究者らの臨場感が伝わったのではないかと思います。とくにC氏のコメントは緊張感と予見にあふれています(「僅かながらあった」のがES細胞でなければいいのですが。。)。番組を見逃した方はNHKオンデマンドでも視聴できるようです。では!




2014年7月22日火曜日

観望会

制御担当の木野です。

この3.8m望遠鏡プロジェクトでは3ヶ月に一度ほど、計画に関わるメンバが顔を合わせての会合行っています。先週末の19日にも第33回の会合がありました。
望遠鏡を作るための技術的な報告が多いのですが、いざ望遠鏡の完成が現実味を帯びてくると、次はどのように運用していくのかという話題も増えてきます。

望遠鏡の観測時間の大半は京都大学をはじめ、全国の天文学者たちに割り振られて最先端の研究に使われるのですが、一部の時間は、寄附をしていただいた方や一般市民の方々に観望会という形で還元されます。
この観望会の在り方については、今回も含めて何度か話題に挙がっています。大きな望遠鏡で星を見る貴重なチャンスなので、ぜひ楽しんでいただきたいという気持ちは全員共通しているのですが、その実現方法となると意見は様々で、「テレビやインターネットで綺麗な星の写真を見慣れている人が多いから、高感度なカメラで撮ってモニタに映すのが良いのでは?」、「いやいや、望遠鏡を自分の目で覗いて見るという行為に意味があるんでしょう」、「でも大きな望遠鏡だと、どうしても高倍率になりすぎるから、空気の揺らぎで星がボケてよく見えないよ」、「他の望遠鏡の観望会では、空気で星が揺らいでいること自体に感動している人も居ましたよ」などなど、話はまとまらず・・・

ちなみに今の天文学者は望遠鏡を覗いて観測することはほとんどありません。
人の眼より高感度で、多くの情報を捉えられるカメラや分析装置を使って、パソコンのモニタ越しに観測するのが一般的です。もしかすると一度も望遠鏡を覗いた経験がない天文学者も大勢いるのかもしれません。

という訳で、観望会について皆様からご要望・ご質問などありましたら、このブログのコメント欄か、tenmondai-kikin@kwasan.kyoto-u.ac.jp宛にメールでお寄せ下さい。
観望会用に準備する設備は、まさに皆様のための設備です。眼視観測については素人な天文学者に向けて率直な意見をいただければ幸いです。



719日の技術検討会で発表に聴き入る参加者



2014年7月11日金曜日

天文台長の柴田です。

先日、620日~29日に英国とチェコに海外出張してきました。 英国天文学会の plenary talk に招待されたのと、チェコ・プラハで Prof Z. Svestka 追悼の国際会議 Solar and Stellar Flares の会議(私もSOCの一人)に出るのが主目的の海外出張です。ともにスーパーフレアが目玉の話題です。折角なので、ついでに英国のグリニッジ天文台を見学してきました。ここでは、グリニッジ天文台訪問の話を少し紹介します。
 
  グリニッジ天文台は、ご存知のように、経度0の基準、世界時の基準となる、世界で最も有名な天文台です。ところが、研究の第一線からしりぞいているらしい、今はどうなっているのだろう?というのが最近の私の関心でした。調べると、博物館・市民天文台(国立海洋博物館national maritime museum の一部) として多くの観光客がやってくる観光名所となっているようなのです。花山天文台の未来を考えるためには、ぜひとも見学・視察してその運営のやり方を参考にする必要がある、というわけで行ってきました。
 ロンドンの中心に行き、船でテムズ川を下りグリニッジに到着しました。途中の船からの眺めは抜群。ロンドン全体の様子が良くわかりました。グリニッジ天文台の最寄の港は、かつて大英帝国の多くの船が航海の後、ここにやってきた港なのです。航海にとって天文の知識は安全航海のための必須の知識でした。だから天文学は実用学問であり、「天文学者」は偉かったのです。だから英国では Astronomer Royalという官職があります。過去には、ハレー彗星のEdmond Halleyが第2代(1720-1742)、電波天文学でノーベル賞を受賞したMartin Ryle12代(1972–1982)のAstronomer Royalでした。現在この職についているのはケンブリッジの理論天文学者 Martin Rees (1995present)です。
グリニッジ天文台は小高い丘の上にあります。ロンドンの街の眺めが素晴らしい。入場料は7ポンド(~1200円)。入ってすぐのところで人々が並んでいるので何があるのだろう?と、たどっていくと、prime meridian (経度0の線=本初子午線)が地面に書いてあり、本初子午線記念碑の前で、それを人々がまたいで写真を撮るのを待っていました(写真参照)。それが人気らしい。私は残念ながら時間がないのでパスしました。
グリニッジ天文台には、昔ながらのフラムスティード初代天文台長が住んでいた建物、Meridian Building(子午線館;子午環(これは花山天文台にもあります)や四分儀、さまざまな種類の時計が展示)28インチ(71cm)望遠鏡ドームがあるほか、最新のプラネタリウムやミュージアム(天文学の歴史や最先端の天文学の成果を紹介)もありました。
 ミュージアムでは、天文学の歴史の展示コーナーのところに
1054  Chinese and Japanese astronomers note a new star flaring up in Taurus.
The remains are now identified as the Crab Nebula.
と書いてあったので、ちょっと嬉しくなりました。(欧米人は意外と知らないので)
 28インチ望遠鏡ドームの壁には観望会の案内が貼ってあり、見ると参加費が結構高いのに驚きました。2時間でプラネタリウム付ですが、大人一人16ポンド(~2780円)、会員は14ポンド(~2400円)、子供は12ポンド(~2100円)。ちなみに、NPO花山星空ネットワークでは、大人1300円、子供700円、NPO会員1000円、で観望会をやっています。英国ではこの倍の値段でやっているのか!というのが衝撃でした。
 立派なみやげものショップが2箇所もあり、さらに軽食が取れるカフェもあり、半日たっぷり楽しめるところでした。
 
   10年後には、岡山3.8m望遠鏡が世界の最先端の研究を牽引する傍ら、花山天文台はグリニッジ天文台のように世界中から観光客が集まる観光名所(かつ教育普及と文化発信の拠点)になっている、というのが、私の夢です。
(2014年7月5日)





                グリニッジ天文台の Meridian Building(右図)。
                 人々がprime meridianをまたいで記念写真を撮る
                (左下図)ため、並んで待っている。
                                             (2014621日)



2014年7月4日金曜日

はじめまして。野上です。

このブログではお初になります。サイエンス担当の野上です。
現在は京大理学研究科附属天文台に所属していますが、71日付で同宇宙物理学教室に移籍します。これを機にブログデビュー致します。以後よろしくお願いします。メンバー表ではこれまで写真が出ていませんでしたので、ついでに写真も貼っておきます。

このブログでは「はじめまして」なのですが、3.8m望遠鏡プロジェクトにはずっと以前から関わっておりまして、その辺りのことは天文月報9月号(820日発行)に書いた記事で触れております。我々の研究グループの成果である、太陽型星でのスーパーフレアの連載記事の一つです。天文月報のホームページで、無料でPDFファイルが公開されるはずですので、ご興味がおありの方は是非お読みください。

その記事でも書きましたように、この計画がある程度まともに議論されるようになってからでも、もう15年以上の時間が流れています。それがいよいよ本格建設に着工という段になっており、もう観測が楽しみで仕方がありません。
この望遠鏡でのサイエンスは、1)突発天体の天体・現象の解明、2)第二の地球の直接撮像、3)スーパーフレアの解明をうたっています。って、今3.8m望遠鏡計画のホームページのサイエンスのところを確認したら、スーパーフレアの話が載っていませんでした。私が書くのをサボっているせいです。どうもすみません。

私は主に1)と3)に絡んでいます。スーパーフレアについては、高分散分光装置という作るのに人手もお金もかかる大掛かりな装置が必要です。しかし、突発天体・現象については、単純な撮像カメラさえあれば、ある程度のことはできます。この望遠鏡は合計18枚の鏡を組み合わせて1枚の鏡として使いますが、1枚目の鏡が載っているだけでも観測はできるはず。これだって、口径1mくらいの望遠鏡に匹敵するはずですもんね。そんなわけで、まだ望遠鏡として完成とは言えない段階から、色々観測できるんじゃないかなー、と首を長くしています。

突発天体現象にしろ、スーパーフレアにしろ、地球上では全く起こり得ない空間的・エネルギー的な現象です。宇宙は爆発に満ちています。いやー、どんなことが観測できるのか、ほんとに楽しみですねー。