2013年4月12日金曜日

2013/4/12

   光学など担当の岩室です。
   今回はすばる望遠鏡の観測装置の話です。
   京大では、すばる望遠鏡用のファイバー多天体分光器の開発も行ってきました。 この装置は、満月1つ分の領域内で最大で同時に400天体のスペクトルを得る ことのできる装置で、宇宙が最も活発に活動していた中期の宇宙を詳しく観測 するためのものです。開発には10年近くかかりましたが、既に多くの研究者に 利用されて数々の新しい研究結果が発表されています。
   図は、1つの観測例で 横方向に伸びている白い筋が星のスペクトル(多くは黒い筋と対になっています)、 これに対し点状に見える物が80億光年程度の遠方からの銀河の光です。活発に 星生成を行っている銀河は、水素や酸素などの原子から放射される幾つかの 特定の波長の光で光っており、このようにスペクトルを調べることで、その 銀河の活動性や、おおまかな距離を知ることができます。この画像には、他にも 多くの遠方天体のスペクトルが写っています。
   現在開発している望遠鏡はすばる望遠鏡の約半分の口径ですが、より多くの 観測時間が使えるため、すばる望遠鏡とは違った特徴を生かして観測をする ことになります。こういった結果が出るまでにはまだまだ時間がかかりますが、 早く結果が見たいものです。
 
 
 
 

2013年4月5日金曜日

4年生の挑戦

プロマネの栗田です。
 
先日4年生(京大では4回生と呼ぶ)の卒業研究(京大では課題研究と呼ぶ)の発 表会が無事終わりました。24年度の学生3人は星の明るさを正確に測るための装 置(ホトメータ)の開発をテーマとしました。
 星の明るさを測るというのは天文 学にとってもっとも基本的な技術の一つです。例えば、同じ星でも異なる距離に あれば遠くの星はより暗く見えます。つまり、明るさの違いをより正確に知るこ とができれば星や銀河までの距離が分かるのです。肉眼で星の明るさをしらべた 場合、2倍の違いを見分けるくらいしかできません。でも専用の装置を作れば 1/1000くらいの違いまで見分けることができます。このような装置なら遠くの星 がその星の前を横切る惑星の影によって暗くなることも検出することができま す。しかし1/1000の精度は簡単には達成できませんし、達成している観測装置も ほとんどありません(あってもギリギリですね)。
  今回4年生は装置の機能と目標天体を絞ることで「明るさの計測」だけに特化し た専用装置を開発しました。装置はほぼ完成したのですが、残念ながら実験室で の調整が間に合いませんでした。例年成果発表の前夜は発表資料の作成や練習に 明け暮れるところですが、「星の光を装置に取り込みたい」という強い希望から 屋上の望遠鏡で観測を行いました。もちろん調整不足でうまくは行きませんでし たが、その後の発表は好評でした。新しい4年生とともにもう少し手直しして、 この装置の可能性を確認したいものです。