2020年7月22日水曜日

祇園祭と星


2020年は、コロナ感染を避けるために、祇園祭の宵山や巡行が中止になったのは残念であった。祇園祭はもともと疫病退散・無病息災を願う行事であるから、祭の趣旨からすると中止は本末転倒であろう。しかし、現代人の立場からすると、まあやむを得ないかと思う。ちなみに、祭で配られる粽に、「蘇民将来之子孫也」というお札がついているが、これを家の玄関に飾っておけば、この家の人は蘇民将来の子孫であるという印になり、疫病から免れるという。(詳しい話は省略。)

 

長刀鉾は、祇園祭の先祭で、山鉾巡行の先頭を行く鉾であり、最も有名な鉾と言ってもいいだろう。10年位前に、長刀鉾に(多分?)初めて上った。そして驚いた。なんと、鉾の、人が乗って演奏する場所の天井に、中国の星座である、二十八宿がずらっと並んでいたのである。星座といっても、星を2つか3つ繋ぐだけの星座もある。二十八宿は、天の赤道に設定されているという説明をよく見かけるが、その割には、黄道に近い感じもするし、でも黄道とも限らず、実際のところは私はよく知らない。白道にも近いような気がする。いずれにしても、天井を一周囲むように、ぐるりと並んでいる。一周囲むということで、多分、東側に並ぶ宿の列は青龍に、南側の宿の列は朱雀に、西側の列は白虎、北側は玄武と、四神に対応しているのだろう。長刀鉾にのったところで、宇宙を(夜空を)見上げることになるとは思いもよらなかったので、驚いた次第である。鉾の内部を四神で守護するという意図なのかどうかわからないが、面白いことである。ちなみに京都(というか平安京)は、東に鴨川(青龍)、南に巨椋池(朱雀)、西に山陽道或いは山陰道(白虎)、北に舟岡山(玄武)の四神相応の地という話はよく聞く(諸説ありかもしれないが)。

 

この時撮った写真を載せようと思っていたのだが、行方不明であることがわかった。そこで、その代わりに、長刀鉾の二十八宿については、googleで 長刀鉾、二十八宿 で画像検索するとでてくる。粽に蘇民将来之子孫也のお札も、同じくgoogleで 蘇民将来之子孫也 でググルと写真が出てくるので、これで代用願いたい。私が撮った写真より見やすい感じがする。(それにしても、最近は蘇民将来之子孫也Tシャツまであるんですねぇ。家に貼るより効き目ありそう?)
 
          太田記

花山天文台支援のためのクラウドファインディングが始まります!



こんにちは。サイエンス担当の野上です。

 

2020728日に花山天文台を支援するためのクラウドファンディングが始まります。URLhttps://the-kyoto.en-jine.com/projects/kyotodaigakutenmondai
です。ただし、開始日の728日までは上記URLは無効です。


 

岡山天文台の設立に伴い、附属天文台としては花山天文台の運営費の大部分をそちらに回すという決断を行ないました。そのため花山天文台は苦境に陥るわけですが、その中で、設立90年を超える歴史ある天文台の維持、さらには教育・アウトリーチ活動の拠点としての発展を目指して、様々な方々、自治体、団体の方々と努力を続けてきています。今年の1月には掛け値なしの世界的スーパースター、クイーンのギタリスト、ブライアン・メイ氏が花山天文台を訪問され、心温まる応援メッセージを下さったことが新聞やニュースでも取り上げられました。その時の言葉、「Keep Kwasan Alive!」は私たちの合言葉になっています。これを実現する取り組みの一環として、京都新聞社さんにご協力いただき、クラウドファンディングが始まります!

 

クラウドファンディングのタイトルは「91年の歴史を持つ京都大学花山天文台に、花山宇宙文化センターを作りたい。」です。説明文の最初は、「アマチュア天文学の聖地と呼ばれる京都大学の花山天文台。 91年の歴史を持つこの天文台に、次世代の天文教育の拠点となる花山宇宙文化センターを作りたい。国からの補助金が減る中で、持続可能な形で宇宙文化教育の拠点として次世代に受け継ぐことを目指したプロジェクトです。この国の宇宙文化教育を維持するためご協力ください。」で始まります。ご賛同いただけます方は、是非ご協力ください!

 

最終的な目的は花山宇宙文化センターを作ることにあるわけですが、第1回は期間を10月一杯までの約3か月とし、家族で楽しめる小冊子「うちゅうぼん」の制作、様々な展示の充実、公共交通機関でのアクセス確保のためのバス停の設立などのため、300万円を目標額と設定しています。これが達成できれば、第2回、第3回と行なっていき、支援してくださる皆さんと少しずつ進めていければと思っています。

 

花山天文台の宇宙文化センターは、普通のプラネタリウムや科学館では難しい、京大の研究者の全面的なバックアップに基づいて最先端の天文学に一般の方が気軽に触れられる場所となり、「文化としての宇宙」の発信を行ない、次世代を担う子供たちが宇宙、自然、科学、技術に興味をもつきっかけを提供することを目指します。このクラウドファンディングは直接的には花山天文台の支援ですが、それは岡山天文台と飛騨天文台の支援につながりますし、長期的な観点では日本の天文学、学術、そして文化の発展に資すると考えていただけますと幸いです。

 

最後にもう一度合言葉、Keep Kwasan Alive!


写真は、ブライアン・メイ氏来訪の際の、
花山天文台支援関係者で45㎝屈折望遠鏡を取り囲んだ集合写真です。











2020年7月10日金曜日

せいめい望遠鏡での研究成果を記者発表しました!

こんにちは。サイエンス担当の野上です。


このブログ記事を書いているのが7月7日(火)なのですが、昨日、すなわち7月6日(月)に記者発表を行ないました!我々の研究グループで進めている恒星スーパーフレアに関するものです。そのもとになった論文がオンラインで公表されるのが7月10日(金)午前0時(深夜)なので、早ければオンラインニュースではこの時間に、新聞ではこの日の朝刊に出るのではないかと思います。それまで内容を明かせませんが、うちの大学院生の行方宏介君(D3)が主著の論文です。どうぞお楽しみにしていてください!


あれ?このブログが掲載される頃にはもう報道されているはずですね。まだ見てないよ、という方は、どうぞ新聞やネット記事等を探してみてください。


ということで、研究成果は報道に譲るとして、今回は記者発表がどういう風に行われるか書こうと思います。研究成果を記者発表する場合、当然まずは成果を論文として発表することが必須です。論文が受理され、出版されることが決定すると、「この研究成果は是非皆さんに知ってもらいたい!」という場合、記者発表を大学の広報室に申し込みます。


この際に成果説明の書類を付けて申し込むのですが、この書類の書き方がポイントになります。とにかくわかりやすく簡潔に書くことが求められます。大学の広報室は、この成果書類と記者発表の日時等を記した書類を合わせて報道各社に送ります。それを見た各社の記者さんなどが、自分のところで報道する価値があると判断すれば、記者発表に参加します。いかに優れた研究成果でも、その価値が記者に伝わらなければ会場にも来てもらえないわけです。科学面担当の記者でも天文のことは全然知らない方も当然多いです。ですので、成果書類はわかりやすく簡潔に。専門用語はなるべく避けて、使わざるをえない場合や専門用語とまで言えなくても一般の人に伝わらないような単語には、用語説明も付けます。そしてもう一つ大事なのは、キャッチーな絵を付けること。人目を引ける絵が作れれば、掲載率がぐんと高まります。


この絵は、きちんとスペースが確保されていれば、そのまま紙面に載る場合が多いです。データそのもののグラフが出る場合もありますが、それではなんのこっちゃわからない場合がほとんどですので、ポンチ絵や想像図などを用意することになります。研究者がそういう絵を書くのが得意ということはほとんどありませんので、得意な大学院生を探したり、プロのイラストレーターにお金を払って依頼したりすることになります。京大でもイラストレーターと契約しているのですが、お金がない我々は、今回国立天文台の方に作図を依頼しました。さすが国立天文台!広報の方でイラストが得意な方が描いてくれるのです!今回の成果は国立天文台が担っているせいめい望遠鏡の共同利用で得られた成果で共同研究者に国立天文台方も入っていますので、京大と国立天文台との共同記者発表ということになり、こういう取り計らいをしてもらえました。この絵を下に付けておきます。恒星フレアの噴出物が惑星に影響を与えそうな感じが出ていますでしょうか?


さて、記者発表当日には、京大の記者室で報道陣を前にプレゼンをすることになります。ですが、今はともかく3密を避けなければいけません。記者発表もzoomで行ないました。対面で行なうと近くの新聞社やテレビ局しかきてくれませんが、今回はせいめい望遠鏡のある岡山方面や東京方面の会社もあったようです。今回は3人の分担で、私が司会を務め、共同研究者の前原さん@国立天文台から背景説明やせいめい望遠鏡などの紹介、そして行方君から本題の説明をしました。学会等のプレゼンよりもずっと丁寧にスライドを作り、しっかり発表練習をしました。普通この手の記者発表は、研究者の発表20~30分+質疑応答30分とかなのですが、40分を超える熱演となり、その後の質疑応答も1時間くらい続きました。行方君は記者発表は初めてなのですが、非常に落ち着いて当意即妙に質問に答えており、司会の私が感心してしまいました。


質問が出終わったところで発表終了となりました。対面での記者発表ではここから記者と研究者の個人的な質疑応答があるのですが、zoomではそれができません。発表スライドは事前にネットを介して記者に送っていたのですが、そのスライドにこちら側3人のメールアドレスと携帯番号を書いておきました。行方君には発表後に数社から電話で問い合わせがあったそうです。


さて、記者発表がどういうものなのかを書いてきましたが、いかがでしたでしょうか。この発表がきちんと記事にされるかどうかは記者や報道各社の判断になります。大きな事件などがあれば、そちらが優先されて後日掲載とか、最悪お蔵入りということもあり得ます。私の感覚では今回はある程度たくさん報道してもらえると思っているのですが、皆さんの目に留まっているでしょうか?


今回は記者発表をしたので研究内容は書きませんでしたが、せいめい望遠鏡の成果はこのブログでも取り上げていきたいと思います。どうぞご期待ください!


ところで、この7月6日は私の誕生日で、行方君からのとてもよいプレゼントになりました。50歳(四捨五入すれば100歳!)になりましたが、いまだ天命を知るには程遠く。精進を続けたいと思います。