2013年12月19日木曜日

最近のCMOSカメラ


  光学など担当の岩室です。
 
 京都大学理学部では、高校生向けにELCASという全12回の科学体験講座を開いています。私は12/21に担当予定なのですが、この講座に参加しているある高校生から「高校にある望遠鏡で眼視観測をしているが、もっと良く見えるようになりませんか」と相談を受けました。その時は、「一眼レフCCDカメラか、CMOSカメラを取り付けてみては」とアドバイスしましたが、高校生のクラブ活動程度でも使えるものがあるのかが気になって調べてみました。通常、非常に暗い天体撮影を行う場合には高効率・低ノイズの特殊なCCDカメラが必要ですが、高校生のクラブ活動ではとても購入できる価格のものではないからです。少し調べてみたところ、ASI120MC というカラーのCMOSカメラが安価で良さそうだとわかったので、ELCAS の私の担当回の最後にこれで観望会をしてみようかと思い、ELCAS の予算で購入してもらって、余っていた古いカメラレンズと組み合わせてみました。
これで試しにオリオン星雲を撮ってみたものが以下の画像です。



 

レンズは口径約60mmf/1.8で、三脚固定ではオリオンなどの天の赤道上の天体は検出器上を1秒間に2画素ずつ移動していくことになりますので、少し流れるのを我慢しても露出時間は2秒しか取れませんでしたが、思ったより綺麗に星雲が写りました。今の世の中、検出器も相当進歩したので、この程度の画像は結構簡単に撮れるものなんだなと感心しました。

 3.8m望遠鏡で眼視で見たらもっと明るく見えるように思われるかもしれませんが、実は、星雲のように広がって光っている天体の面の明るさは、望遠鏡を大きくしても変わらないので(大きい口径で光を沢山集める一方で、大きい望遠鏡だと像が拡大されて薄められるため)、実は眼視では大きい望遠鏡でも星雲などの光を明るく見ることはできないのです。3.8m望遠鏡での観望会では、眼視の他に、このような簡単なカラーCMOSカメラを付けて、眼視では見づらい星雲のリアルタイム画像を見てもらうのも楽しいのではないかと思います。

2013年12月13日金曜日

感動した!


  感動した!(K泉J一郎風に)
何に??
  11月半ばに、京大基礎物理学研究所で、ガンマ線バーストの国際研究会がありました。1年前の丁度今頃、金沢でガンマ線バーストの国内研究会があって、このブログに以下のように書きました。

「ショートガンマ線バーストの残光の可視スペクトルがまだないこともあり、何がどう見えるのかよくわからないのですが、研究会では、理論モデルから、予想される可視域で光るメカニズム、可視の光度、スペクトル等の情報を得ることができて大変有用でした。」

  しかし、この時にはまだエネルギー収支から予想される光度や類推によるスペクトルの予想程度だったのですが、ナント今回は、爆発で形成される元素を考慮しそれによる吸収量まで評価に入れた詳細な計算をしていて、現実的な具体的光度進化やスペクトル進化の理論計算結果が発表されていました。見てきたようなスペクトルを見せてもらいました。いやー、科学の進歩は日進月歩というけど、1年でここまで来るとは本当にすごいなーとしみじみ感じ入ったという次第です。
 ただ、残念ながら新しい理論モデルによると、これまで想定されていたより暗くて、観測が難しくなる傾向にあって、厳しい状況になってきました。しかし、理論だってまだ完璧とは限らないし、そもそも比較的近くで発生する現象なら(頻度は下がるものの)検出可能であるかもしれないので、これに失望する必要は全くなく、観測屋としてはただ前進あるのみです。 

                                                                    太田耕司
 
 
 
 
 
会場になった基礎物理学研究所。湯川博士がノーベル賞を
受賞されたことを記念してできた建物(研究所)で、湯川
記念館ともいいます。よく見ると中央左寄に湯川博士の胸
                      像が見えます。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 

2013年12月6日金曜日

二百分の一の授賞


 先日、毎日出版文化賞の授賞式に行ってきました。

-えっ、何か著書が受賞されたのですか?

 答えは、YES/NO、そうともいえますし、そうでもないともいえます。

-えええっ、どういう意味ですか?

 今回、自然科学部門に、岩波科学ライブラリーというシリーズが受賞しました。私は恥ずかしながらその中の一冊を執筆しました。20年間で200冊出ていますので、単純に割り算すると、1/200だけ受賞したことになります。通常、こうした賞は、一冊の本(あるいはシリーズの本)が対象ですから、今回の受賞は、破格の扱いということになります。しかし、1/200でも嬉しいです。

-受賞式はいかがでしたか。

 いろいろ楽しい思いをしました。何よりも、受賞者のスピーチです。一流といわれる人はかくあるべきか、ということがよくわかりました。みなさんの、執筆にかける共通した思いは、「渾身」というひとことで表されるでしょうか。うんうんうめくような思いで、極限までに自分を研ぎ澄ませ、魂を絞りつくすようにして作品を生み出し・・・、それでいて、人を思いやる温かさに満ちあふれておられるのです。とても感動いたしました。まさに、芳醇な赤ワインをいただいた後に残るような余韻が、スピーチ後も会場に漂っていたのを実感し、まことに稀有な体験でした。

-ところで、著書の内容は?

 私が書いたのは、「ブラックホールを見る!」という2008年に出した本です。ブラックホールの常識は、「何でも吸い込む怖い穴」ですが、このブラックホール観が、今世紀に入って、がらりと変革をとげつつあります。すなわち、宇宙最大のエネルギー源としての働きが、にわかにクローズアップされてきたのです。3.8m望遠鏡計画も、まさにそのようなブラックホールの働きの一端をとらえるべく建設されています。早く完成させて、皆さまがたに、ブラックホール活動の観測について、ご報告したいものです。

 

(嶺重 慎)


 

2013年11月29日金曜日

浅口市公民館での宇宙☆自然講座特別企画

 プロジェクトリーダの長田です。
柴田さんとともに、岡山天文博物館の 宇宙自然講座特別企画 京大おもしろ天文楽セミナー「3.8m望遠鏡がひらく宇宙」で講演をして来ました。

 私の話したのは「銀河系の中心部のナゾにいどむ京大3.8m新望遠鏡」ということで、数十人の熱心な方々の前で楽しむことが出来ました。「ガンマ線バーストの観測というのは、ガンマ線の波長が宇宙膨張のせいで延びて光や赤外線になるのですか」とか、「水島工業地帯の光害は支障にならないのですか」「補償光学をこの望遠鏡でも行なうなら、レーザーを上空に打ち出すのですか」「たくさんの焦点に、観測機器を並べるのですか」といった鋭い質問が出ました。

(簡単な答えを言いますと、「ガンマ線が突発的に輝いた時に、可視光線の残光もある、それを観測する」、「夜空が暗くないと出来ない観測ももちろんあるので、不要な光は出さないのが良いが、強調した赤外線の観測など、ハワイのマウナケアと全く遜色のない観測が出来るものも多い」、「レーザーガイド星を使わない方式での極限補償光学を開発しつつある」、「ナスミス焦点2箇所だけに観測装置を並べる」です。)

 その後は浅口市やその周辺の学校の先生方やPTAの方々との懇談も行ない、かつて188cmが東洋一の望遠鏡として建設された当時に県知事がおっしゃったという「岡山のニュートンを育てる」といった教育での貢献が、この新望遠鏡でも出来ればと思った次第です。




 
(木野さんのブログに続けての蛇足)ところで、私は2回生向けの英語のクラスの補助を担当していますが、そこでISON 彗星の話題が出ました。ネイティブの講師は、日本語で表すと明らかにコメット・イスンと言っているので聞いてみると、こういう略語の場合は、確立しているもの以外はどう発音しても勝手だがとの注釈付きですけど、普通にisonを発音すると、「イ」ソンが近いようですね、http://www.pronouncehow.com/english/ なんてサイトで聞いてみても。

 なお、私はニクスンとかオバーマと書くべきかどうかの論争に巻き込まれるつもりはありませんが、Halley彗星がどうしてハリー彗星として定着しなかったんでしょうねえ、不思議です。

2013年11月18日月曜日

早起きは三文の徳?


 制御担当の木野です。
 
  アイソン彗星が明るくなっているらしいので、ちょっと早起きして近所の見晴らしのいい場所で見てきました。
太陽に非常に接近する軌道なので、金星より明るくなるかもしれないと期待されている彗星です。
とはいえまだ5等星、京都の街明かりと低空の霞のせいであまり良く見えません。
口径50mmの双眼鏡で、かろうじて存在が分かる程度だったでしょうか。
12月にかけて明るい状態が続くので興味がある方は国立天文台のWebページなどを参考に探してみてください。

   早起きついでに、南禅寺まで紅葉の様子を見に行ってきました。
この時期の京都は土日ともなれば観光客で大変込みあうのですが、平日の朝なら混雑もなく静かでとても良い雰囲気です。
出勤前にこんなことができるのは、観光地に住んでいる者の特権ですね。



          南禅寺 三門の紅葉 2013/11/18
 
京都市街地の紅葉は次の週末あたりがピークでしょうか。

 

 
 
 

2013年11月8日金曜日

南極料理人を観て予習する


 プロジェクトマネージャーの栗田です。先週「南極料理人」(2009年製作)という映画を観ました。ドラマ音痴の僕でも「倍返し」は知っていて、その俳優さん(堺雅人さん)が主演で出てきたので期せずもミーハーな気分で楽しみました。
  この映画はヘンテコな研究者の性質をとてもうまく表現していてよくできていると思いました。かなり誤解を恐れずに言えば、今後「天文学者ってどんな人」と一般の方から聞かれるたびに僕は『「南極料理人」を観てください。』と答えたいくらいです。望遠鏡は僻地に作られます。きれいな夜空を得るために、人里離れた標高が高く、乾燥した極寒の地となります。そこでの生活は往々にして人間をあの映画の登場人物のように改造します。でも帰国して机に向かうと普通の研究者になります(なかなか戻れない人もいますが)。

 さて、なぜ僕がその映画を観たかというと予習のためです。私たちの望遠鏡の技術を応用した望遠鏡を南極のドームふじに建設しようという計画が2つもあるからです。そのうちの一方のリーダーである東北大学の市川教授が京大に打ち合わせに来られるので、その前にドームふじの雰囲気を知っておこうと思ったわけです。本題の議題はというと、どうやって望遠鏡を軽くしたり、-80℃でも壊れないようにするか、などです。南極はご存知の通りとても遠い上に道がありません。輸送するためには望遠鏡はできるだけ軽くて小さい方が良いのです。さらに極寒での作業ですから、組み立ても簡単でなくてはいけません。このような要求を満たすのが京大3.8m望遠鏡の技術というわけですね。



2013年11月1日金曜日

Spring has come


こんにちは。鏡製作担当の高橋です。
 
妙なタイトルだな、と思われた方が沢山いらっしゃると思います。
秋も深まってきたこの時期に何を言っているんだ!という感じでしょうか。
春は来ていません。来たのはバネでした。複数個のばねですし、一つだとしてもタイトルは間違っているのですが、思いついてしまったので、失礼します。
さて、このバネですが、何に使うバネかというと、鏡の自重変形をキャンセルするために使います。ある程度大きな鏡の形状をを測定する際には、鏡自身の重さによる変形が無視できなくなります。支えている点から離れるほど、変形量が大きくなってしまい、望遠鏡使用時の形状を測定できなくなってしまうのです。
 
この問題を避けるために使うのがバネによる支持です。
鏡を支持点3点上に設置した際に、鏡背面の点にかかる自重分だけバネが下から支えることで、自重変形をキャンセルすることができるのです。
もちろん、ただのバネをそのまま下に置いても必要な反力を得ることはできず、鏡背面に当たった時に必要な圧縮量になるようにあらかじめ調整が必要です。
ただ、ばね定数が180 gf/mm のばねを±36g程度の範囲に調整するのに必要なばね長さの精度は±0.2mmで、これはそれほど難しくはありません(とっても簡単!というほどでもないですが)。あらかじめ調整したバネ支持治具を10~20個程度使うことで、必要な形状を測定できるようになるのです。
今回は、形状測定時に必要な、縁の下の力持ちのお話でした。
 
では。
 
 
 



2013年10月18日金曜日

宇宙落語会

 附属天文台長の柴田です。
  前回のブログでは、花山天文台特別公開ウィークと野外コンサートのことを書きました。今回は、市民向けのイベント企画、「宇宙落語会」のことを書きます。
  宇宙落語会というのは、最新の宇宙科学や宇宙開発などの話をネタに新作落語を作り、プロの落語家に上演してもらうという試みです。2年前に始まりました。宇宙落語会の始まりは、NPO花山星空ネットワークの理事を務める私の友人の岡村勝君が、「知人(の知人)にプロの落語家がいるんやけど、京大の宇宙総合学研究ユニットでやっている「宇宙とアート」プロジェクトみたいな感じで、「宇宙と落語」を融合させたらおもしろいんとちゃうか?」というアイデアです。
  岡村君は京大理学部時代の同級生(1回生のクラスが同じ)で、数学科を出て、大学院は京大工学研究科数理工学科に進み、のち日本鋼管を経て、20年前からソフト開発ベンチャー企業(株式会社ヒーロー)を経営している社長さんです。私の世間(とくにビジネスの世界)の情報はすべて岡村君からの情報です。ちなみに、3.8m望遠鏡プロジェクトの産みの親の藤原洋君(同じく京大理学部の同級生)の産業界での活躍を教えてくれたのが岡村君です。岡村君がいなければ、3.8m計画は産まれていなかったかもしれない、という恩人の一人です。ということで、岡村君は3.8m計画にも積極的に応援してくれていて、宇宙落語会でも3.8m望遠鏡計画の寄附集めのちらしなど一緒に配ってくれています。

 さて、今年の11月30日の午後に、第3回の宇宙落語会を京大時計台で開催しますので、皆さんぜひご参加ください。周辺の方々にも宣伝してください。宇宙落語は、関西落語界の重鎮になりつつある林家染二師匠が上演し、新進気鋭の若手落語家の桂福丸さん(京大法学部出身)が宇宙に関係した古典落語を上演します。また、京大出身のシンガーソングライター脇阪真由さんに特別出演(ミニコンサート)していただきます。

さらに今年は、基調講演者として元天文学会理事長で神戸大名誉教授の松田卓也さんをお招きします。松田さんは、京大天体核研究室出身で、かの林忠四郎教授門下、佐藤文隆先生の直弟子という方。理論家には珍しく、元は天文少年だったそうです。私が京大理学部に入った頃に、ブルーバックス佐藤文隆・松田卓也著「相対論的宇宙論」が出版され、熱中して読んだ記憶があります。私はそれ以来の松田さんのファン。その松田さんが「コンピュータが人類を超える日―2045年問題」という、大変興味深い内容の講演をされます。ちなみに松田さんは、私がこれまで会ったことのある研究者の中で、最も話がおもしろい人です。知る人ぞ知る「プレゼン道入門」の伝道者。宇宙落語会には最適の人でしょう。乞うご期待!


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2013年10月4日金曜日

演奏会のお知らせ


光学など担当の岩室です。
私の所属している京都混声合唱団の演奏会が近づいて来ましたので、今回は演奏会のお知らせです。
 

日時:2013113日(日・祝)14時開演
 
会場:京都コンサートホール 大ホール
 
曲目:メンデルスゾーン作曲 オラトリオ「エリヤ」
 
指揮:広上淳一
 
管弦楽:京都市交響楽団
 
 

 
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 この曲は全42曲からなる2時間を越える大曲で、京都混声は1985年に1度演奏して以来(若かりし私も出演してましたが)28年ぶりの演奏となります。
預言者「エリヤ」の生涯を描いた内容は、旧約聖書からの言葉が数多く引用され、非常にドラマチックなものです。今回の演奏会では、液晶モニタ2台を併用して歌詞表示だけでなく、何か所かで挿絵を用いた視覚効果も用いて演奏する試みも行う予定ですので、話の流れを知らなくてもお楽しみ頂けるのではないかと思います。
 
今回の演奏会は合同演奏会ということで、大津のびわこアーベントロート合唱団と一緒に演奏を行います。この合唱団は京都混声とは古くから交流があり、滅多に演奏できない大曲を合同でやりましょうということで、2年半前からスタートしたプロジェクトです。長くかかったプロジェクトが結実するときの達成感は、長くかかった研究開発が完成する時の達成感と共通するものがあり、なかなか得難いものです。新望遠鏡も早く完成させて、皆で達成感を味わいたいですね。
 
 

 

2013年9月27日金曜日

台風18号の残した爪跡


ボードの太田です。

91516日にかけて台風18号が接近し、京都でも大きな被害が出ました。私に最も直接的に関連した被害は、地下鉄東西線が数日止まったことです。通勤途上の地下鉄御陵駅が冠水して水をくみ出すのに何日もかかったため、この間、自転車通学していました。(なお、京阪京津線はこれを書いている今でも止まったままです)

自転車通学していると、いろいろと台風の爪跡を見ることになりました。このブログの趣旨とは関係無いのですが、他に書くネタもないので、記録に載せておこうと思います。写真は92122日にかけて撮ったもので、既に1週間弱が過ぎています。
 

写真1

 
 まず写真1は、近所の安祥寺川ですが、川の土手に自生していいた梅の木が根こそぎ倒れてしまったところです。16日にはすごい量の濁流がありましたが、今はその残骸だけが見えています。この梅は白梅で3月になるときれいに咲いていたので、大変残念です。

 
写真2


写真2は、この安祥寺川のもう少し下流になりますが、橋のかかった岸がくずれ落ちています。嵐山の渡月橋はくずれませんでしたが、ここは崩れてしまいました。この付近は流木や土砂が道にあふれていましたが、写真を撮った日にはもう随分撤去されていました。

 
写真3

 
写真3は、琵琶湖疏水第2トンネル入り口付近です。山から土砂が流れてきて疎水に入り込んでいます。他に倒木が疎水にかかっているところもありました。これらの為だと思いますが、疏水はストップしていて今も水が流れていません。

写真4
 


写真4は、山科の毘沙門堂の経蔵裏で、大きな木が倒れています。毘沙門堂の奥の山科聖天さんのあたりは16日には道に水が流れていました。今日見に行ったら、安祥寺川が土砂で埋まっていて、もとは道の数m下を流れていた川が、道と同じ位になっていました。今後はちょっとした雨でも道が冠水するかもしれません。この奥に住んでいる人は困るでしょうねえ…。

2013年9月20日金曜日

3D立体プリンターを買いました!


 今はやりの3D立体プリンタを買いました。
 何が目的かというと、土星や銀河系の立体模型をつくるためにです。つくってどうするのかと言いますと、視覚障害者のための学習教材として活用します。
 ここ数年、私は点字・点図(点字の点で表現した触る図)の天文学習教材を製作して、盲学校などで出前授業をしています。そこで問題となったのは「立体表現」です。土星がいい例です。土星を図にすると、丸い本体に、細長い楕円がくっついています。見ることになれている人(晴眼者)は、そうは思いません。「環が球を取り囲んでいる」とすぐに理解できます。が、生まれながらに目の見えない人には、わかりません。実際、盲学校の出前授業で、土星の環についてことばで説明した後、「土星はどういう形をしていますか」と確認テストをすると、「円から楕円が飛び出している」という解答を得て、がっくりしました。これは何とかしないといけない、立体模型をつくろう、となりました。
 今、頭を悩ませているのは、土星の本体と環を、どうくっつけるか?
 土星本体と環は、つかず離れず、微妙な関係を保って、宙に浮いています。それをどう地上で実現するか。「透明な棒で支えればよい」はバツ。視覚障害者に色は区別できません。「磁石でくっつける」、これもうまくいきそうにない。「天井から糸でつりさげる」、うーーん、持ち運びが不便だ。ということで、土星本体と環の間につっかい棒を入れるしかないかも。妙案をお持ちの方はおしえてください。
 今後ですが、アンモナイトや三葉虫の化石の模型はぜひつくりたい(そんなもの売っている、なんて、夢の無いことを言ってはいけません。)ゆくゆくは、3.8m望遠鏡の「手のひらにのる」模型をつくって、あちらこちらに展示をしたいと考えています。幸い、学生さん3人が興味をもってくれて、さっそく作業しています。皆様の前で公開できるかどうか、学生さんのがんばり次第です。

嶺重 慎




                        画像:5階実験室にある3Dプリンタの実物

2013年9月18日水曜日

東北大学の天文学会にて


 プロジェクトリーダの長田です。
 
東北大学で開かれた日本天文学会の秋の年会に行って来ました。学会では3.8m望遠鏡の進捗状況を発表しました。いろいろと励まされることもありました。
 
さて、仙台の街を見て歩いていると観光名所は何でもかんでも伊達政宗という感じでした。そして珍しいものというと支倉常長(はせくらつねなが)ばかり出てくるのですが、支倉は伊達政宗の命を受け、遣欧使節を率いて1615年にはローマにまで達し、教皇パウルス5世に謁見しています。
 
そして、翌1616年にこのパウルス5世の命令のもと、イエズス会の枢機卿ベラルミーノに召喚されてコペルニクスの学説を撤回するよう言われたのがガリレオ・ガリレイだったのでした。彼のこの後の書物では、コペルニクスの地動説を説く人とそれまでのアリストテレス流の天動説を信奉する人とが対話する形を取っていて、コペルニクス学説に片寄っているわけではないとの理屈でしたが、1633年に2度目の宗教裁判で有罪となるのは皆さん御存知のとおりです。
 
望遠鏡で初めて宇宙の不思議にふれたガリレオとニアミスをした人が、東北の地にいたとは知りませんでした。
 
伊達政宗の墓所である瑞鳳殿の石段(の一部)。なかなか大変でした。ここまで上ってきた、これからも上っていくぞ!と。
 
 
 
 
 

2013年9月6日金曜日

流れ星

  制御担当の木野です。
 
  ちょっと書く時期が遅くなってしまいましたが、お盆休みの頃、近所の山にペルセウス座流星群を見に行ってきました。
最近は天文現象の人気も高いですし夏休みの自由研究としても定番なので、どの程度の人出があるのかというのが興味の対象です。
(もちろん流れ星もちゃんと見てきましたよ。)

  極大が予想された812日の深夜に、京都の市街地から北方向、鞍馬を通って花脊峠・杉ノ峠まで登りました。
ちなみに杉ノ峠は京都大学から20km、標高は800mほどの場所で、天の川がくっきり見える綺麗な星空です。
途中、林が途切れて空が開けた場所ではどこも数台の車が停まっていて、合計では2030台ほど、人数にしたら50人以上といったところでしょうか。
特に観測イベントなどは開かれていなかったはずですし、流れ星を見に山中まで出かけている人がこれほど多いとは、やはり結構な人気なのだと実感しました。

  流れ星の方は23分に1個ほどと結構たくさん流れていました。
杉ノ峠に居合わせた方々とおしゃべりをしつつ流れ星をビデオカメラで撮影。
下の写真はそのビデオに写った流れ星たちです。


                   

写真説明:
1時間半の動画から流れ星が写っているフレームのみを抽出して重ねあわせた画像。
全部で6個の流れ星が写っている。
(左下の赤い光は付近の鉄塔についている航空障害灯)




2013年8月30日金曜日

お茶


プロマネの栗田です。
 
7月下旬、H7N9新型インフルエンザによる渡航注意喚起が明けた直後の中国、雲南にゆき、東アジア中核天文台連合(EACOA)による「中口径望遠鏡によるサイエンスワークショップ」で私たちの望遠鏡計画の発表をしてきました。前後の予定が詰まっていたので、会場のホテルに深夜2時に到着、その日に発表、翌朝5時にホテルを発つという、いわゆる弾丸ツアーでした。

発表後には中国や韓国の天文学者から望遠鏡の技術に関して活発な質問があり、当計画への関心と期待をつよく感じました。また久しぶりに再会できた研究者らに挨拶ができて短いながらも充実した時間を過ごせました。

話は変わりますが、ホテルのロビーでお茶を頂いたのですが、その価格の違いに驚きました。一番安いお茶は一杯100円程なのですが、もっとも高いものはなんと1万円程度するのです!ホテルの宿泊料金が4千円くらいなので、どれほどおいしいのか気になるところです。さすがお茶の国、中国です。ずいぶん昔、世界ふしぎ発見で、雲南省がお茶の原産地だとミステリーハンターが説明していた気がします。では。

 

2013年8月8日木曜日

息抜き!


鏡製作担当の高橋です。
  3.8m望遠鏡関係者でお送りしておりますこのブログ、テーマは「なんでもあり」です。ということで、今回は遊びに行ったお話から。

以前のブログで話に出した白川郷よりも東側、北アルプスの槍ヶ岳に登ってきました。他府県よりお越しの方は出発時刻がどうしても遅くなってしまうので、2泊3日で登られるのが通常コースのようですが、岐阜に住んでいる私は早朝から出発することが可能で、運よく天候にも恵まれたため1泊2日の日程で往復することが出来ました。途中の山小屋の水がおいしいとか、珍しい動物に出会えたことなど、色々と楽しみがありましたが、一番はやはり景色です。
特に山頂付近、視界が開けてからの景色はまさに絶景。初心者の私は既にヘロヘロでしたが、一歩を踏み出す力になりました。
そして、山頂。少し遅い時間に到着したためかガスが多く、周りの山々はあまり見えませんでしたが、代わりに珍しい現象を目にすることが出来ました。
「ブロッケン現象」。雲に自分の影が写り、周りに虹が見えるこの現象、生まれて初めて見ました。カメラの性能と腕前に限界がありますが、比較的よくとれた1枚をお見せします。両手を挙げている姿が分かりますか?
 光の不思議な現象、ということで、何とか望遠鏡にこじつけて終われないものか、うーん。無理でした。

今回はやはり、「こんなリフレッシュをしてきました!」というお話で終わります。心機一転、頑張ります。