2012年11月19日月曜日

バリアフリー天文絵本(嶺重 慎)


望遠鏡プロジェクト・ボードの嶺重です。

 専門は「ブラックホール天文学」の理論ですが、今日は肩のこらない話題を。

 ここ数年、バリアフリー天文教材プロジェクトというのを進めています。これは、視覚障害者も含め誰もが使える天文学習教材を開発するもので、今年、念願の「絵本」を完成しました。(正直、この年になって、絵本を手がけるとは思ってもみませんでした。)

 しかし、絵本は難しい。担当編集者の「知識のおしうりをするな、感動をおしつけるな、こどもをわくわくさせられたら合格」との厳しい指導のもと、何度も何度も書き直したのが3年前のこと。それから、紆余曲折あって、ついに「ホシオくん 天文台へゆく」の全セットが完成しました。茨城県・水海道一高教諭の髙橋淳さん、()ロボット所属のアニメーション作家の坂井治さんとの共著で、活字版(墨字版ともいう)、点字・点図版、音声版(CD)からなります。それぞれに工夫が凝らされています。

 活字版は、視認性に優れた特殊なフォントを使い、視覚障害者のみならず、老眼の進んだ方にも読みやすいもの(人ごとではなくなりました)、点字・点図版は、ほぼすべての図を点図という「触って知覚する図」にしたもの、暗闇でも読めるという画期的な本であります(が、晴眼者=目の見える人が触覚だけで理解するのはまず無理でしょう)。音声版はNHKラジオの番組をいくつも担当されている高山久美子さんと読み聞かせボランティアの松本福太郎さんの掛け合いが楽しいすぐれもの(これも暗闇OKです)。

 絵本は、ホシオくんが新しくできた天文台を訪ねるところから始まります。ウチュウ博士の手ほどきでいろいろな天体を望遠鏡で観察し,わくわく驚きながら,宇宙について学んでいく内容です。対象は未就学児から(子どもの心を忘れていない)大人まで。興味がおありの方は、読書工房までお問い合わせください。http://www.d-kobo.jp/16.html

2012年11月14日水曜日

2012年11月13日

プロジェクトリーダの長田です。京都大学理学部が昨年から始めた、九州講演会へ行って来ました。
http://www.elcas.sci.kyoto-u.ac.jp/fukuoka2012/
「益川名誉教授と京都大学理学部の教授による講演会 ノーベル賞の源へ」というもので、高校生を主な対象として理学の面白さを語るものです。

私は、益川さんの前座として、「銀河系中心のブラックホールが光る」という話をしました。こういった現象をとらえるのは、まさに3.8m望遠鏡がねらっていることです。
講演の後、高校生からの質問に答えるのはとても楽しかったです。その中に、「ブラックホールの強い重力場って、研究すると何がわかるんですか?」というものがありました。私にも確かな答えはできないのですが、「私たちはいまや電磁場というものを良く理解していて、そこからいろいろな応用も出てきているけれども、マクスウェルの方程式が出たばかりの19世紀後半には、磁石を動かして電気なんか作っていったい何の役に立つのか、と言われた。重力場についてはまだまだ何もわかっていない。」と答えました。(ファラデーが、生まれたばかりの赤ちゃんが何の役に立つのかと反問したという話(どうやら後世の創作)も残っています。)

ちょっと手違いがあって益川さんの到着が遅れ、私の質疑応答が終わった時にやっと来られたのですが、益川さんは益川さんで、「エジソンの直流送電は結局、時代の波に耐えられず敗れ去った。彼がマクスウェルの方程式、あるいはせめてファラデーの電磁誘導を理解していれば、ちょっと複雑であろうとも交流送電を行なっただろうに。」と話され、基本を理解することの重要さを説かれました。私としては、期せずして本当にちゃんと前座の話ができたのでした。(実はその講演をお聞きしつつ、さらに私の思いはさまよって、益川さんが「ぼくはクラシックばかり聴いている」と言ってらしたことから演奏にも基本が大事・・・と流れていきました、それについてはまたいつか書きましょう。)
とにかく、この望遠鏡でも、しっかりと基本を固めて開発を行なっていきたいと思った次第です。

2012年11月10日土曜日

2012年11月9日

今週も栗田がレポートします。

望遠鏡計画が進むにつれて私たちの仕事も忙しくなってきたため、新しく秘書(事務職員)さんを公募して日常の雑務を助けてもらうことにしました。
仲間が増えるということはうれしいですね。
そのために、広告代理店との打ち合わせを行いました。11月12日から公募広告がWeb上に掲載されます。また興味のある方は一足早くこちらhttp://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/psmt/koubo.htmlもご覧ください!

研究の方はというと、望遠鏡の主鏡(星からの光を集める18枚の鏡)を支える部分(写真)の開発が進みました。続々と部品が納品されて、岡山天体物理観測所の坂本さんと一緒に組み立てました。いろいろと僕の図面の寸法ミスで組み立てられない場所があったりして大変です。そういうバグだしをするのも組み立て試験の目的です。今は坂本さんが制御試験をしてくれています。うまく動くと良いのですが。。それではまた!

2012年11月5日月曜日

望遠鏡計画ブログ開始

2012年11月2日


望遠鏡計画のブログをはじめます。開発者、研究者らが週替わりで日頃の研究や計画の進捗をブログを通して皆さんにお伝えしたいと思います。

第一回目はプロジェクトマネージャの栗田です。

今日は公開シンポジウム「今、日本の宇宙戦略を考える」http://www.jsforum.or.jp/science-event/space_strategy/の事前ミーティングに参加してきました。このシンポジウムは文字通りこれから日本が宇宙開発、科学ミッションなどをどのように進めていくかということをエネルギーや情報、国際協力などの観点から考えるというものです。

ほとんどオブザーバーとしての参加でしたが、生存圏研究所の先生らと知り合うことができて良かったです。また、この計画で開発している望遠鏡の応用を再認識できました。その応用とはスペースデブリ探査です。

スペースデブリとは地球のまわりにあるゴミです。このデブリたちはこれまで人類が打ち上げてきたロケットや衛星の残骸です。大きさは塵のような小さなものから10メートルを超えるようなものまで様々です。このデブリたちはものすごいスピードで地球の周りを飛んでいます。たとえデブリの大きさが1ミリでも国際宇宙ステーションや人工衛星などにぶつかると大事故を起こしかねません。

近年このデブリがどんどん増えてきて、いよいよデブリがどこにあるのか知っておく必要性が出てきました。どうやってデブリを見つけるのか?それには望遠鏡がもっとも有効なんです。できるだけ光をたくさん集めることができる大きな望遠鏡でありながら、素早く動くデブリを追いかける必要があります。

そう、まさにこの計画で開発している望遠鏡に託された使命そのものです。天文学のために開発している望遠鏡も宇宙開発のお手伝いができるというわけですね。