2015年10月30日金曜日

「月の色」


光学など担当の岩室です。

 今年の秋は "スーパームーン" が話題になりましたが、私も流行にあやかって月の写真を撮ってみました。使用した機材は、口径 25cm ドブソニアン望遠鏡の銀次ソニーNEXTマウントアダプタを介してNEX-5R を直接焦点に接続したものです。望遠鏡を暫く外気になじませた後、大気揺らぎが大きいなぁ...と思いながら雲の切れ間を縫って念入りにフォーカスを合わせ、1/200 のシャッタースピードでとにかく連写。100枚近く撮ってから、運良く大気揺らぎの最も小さい1枚を選定しました。こういう手法は「ラッキーイメージング」と呼ばれ、天文学でも使われる場合があります。

画像の全体を見ると、カメラのせいか(オートホワイトバランスってやつでしょうね)見た目よりも白っぽい感じで写っています。
このままではただの月の写真で面白くないので、色を強調してみることにしました。すると、意外なことに場所によってかなり色が異なり、また、その境界は結構はっきりと分かれていたのです。これは、表面にある岩石が太陽光を反射するときの反射率特性(アルベドと言います)の違いを現しており、多分、それぞれの部分ができた時の年代の違いとかが関係しているのだと思いますが、インターネットで調べてもどちらの部分も玄武岩ということしかわからず、色の違いの原因はわかりません。




どなたか、詳しい話をご存知でしたら連絡下さい。それにしても、色を強調すると別の星の衛星みたいですね(ガニメデとか)
中央右上の青い海がアポロ(11)が初めて着陸した「静かの海」だそうです。建設が始まりつつある口径30m望遠鏡に究極の大気揺らぎ補償装置を付けても、月面上の10mのものが識別できるかどうかというレベルなので、地球からは着陸船は見えません(月の周回衛星からは見えている ようですが)
こんなに遠いところまでよく行ったもんですね。


それから、月と言えば中国が口径15cmの紫外線望遠鏡を上記「静かの海」2つ左の「雨の海」に設置してから1年半、望遠鏡は順調に稼働しているらしく、最近の研究報告の速報 にも出ていました。中国は進んでいる部分と遅れている部分の差が激しく、全体としてすごいと思うべきなのかどうだか良く分からないといった印象ですね...



2015年10月16日金曜日

新・天文学入門

 今年(2015年)6月に岩波ジュニア新書を刊行しました。『新・天文学入門』(岩波ジュニア808)です。これは、埼玉県の春日部女子高校教諭の鈴木文二さんと私の共編著の本で、実質5人で惑星・恒星から銀河・宇宙に至る壮大な物語を執筆分担しました。「ジュニア新書」と銘打っていますが、決してレベルを落とした本ではありません。理系の本を敬遠されがちな一般の方も十分楽しめるような本づくりを目指しました。
 じつはこの本、2005年に刊行した『天文学入門~星・銀河と私たち』(岩波ジュニア512)の改定版です。この10年間、天文学、ことに惑星科学の進展にはめざましいものがあります。わたしたちから縁遠い宇宙の姿が明らかになった一方で、宇宙と地球とわたしたちとの「つながり」という観点は、ますますクローズアップされてきたように思います。ことに系外惑星の相次ぐ発見が、「つながり」を強めました。そこで系外惑星の記述に多くのページをさきました。
 鈴木さんの手になるコラム2は、私も関わっている高校生天体観測ネットワーク(Astro-HS)についてです。活動に参加した高校生はこう語りました。「全国の高校生が同時に観測するというこの計画は、300校近い参加があったそうです。いろいろな場所で、同じ流星を追う、まだ顔も見たことない高校生と時間を共有したのです。素敵な思い出でした。」コラムは次の言葉で締めくくられます。「宇宙を知りたい、その思いは、地球に生きる人類だけでなく、他の惑星系に住む宇宙生命も、きっと同じなのではないかと思います。」

嶺重 慎



 
岩波ジュニア『新・天文学入門』