2015年6月26日金曜日

南アフリカに行ってきました!

こんにちは。観測装置担当の松尾です。
みなさまはいかがお過ごしでしょうか?

私は5月下旬から2週間、南アフリカで観測をしてきました。
観測施設は、ケープタウンから400kmほど北上したサザーランドという小さな町にあります。
南アフリカの季節は、当たり前ですが、日本と逆に秋から冬に向っています。
南アフリカの緯度は20度と日本に比べて低いのですが、標高は1700mあるので、秋にも拘らず、気温はほぼ毎日、氷点下でした。ときに雪や雹も降っていました。
渡航前にケープタウンの気候を調べて洋服を用意していましたが、全くといって良いほどケープタウンとは違い、本当に寒かったです。

観測施設は、South Africa Astronomical Observatory (SAAO)の中にある、口径1.4mIRSF望遠鏡です。口径はすばる望遠鏡には及びませんが、すばる望遠鏡にはない強力な観測装置が取り付けてあります。
名前はSIRIUSで、同時に近赤外線域にある3バンドを同時に取得できるので、明るさが変わるような天体に対しては、威力を発揮します。
また視野が広いので、目的の星と「参照星」と呼ばれる明るさが変化しない星を同時に取得できます。参照星も同時に観測する理由は、地球大気や薄い雲は天体からの光をわずかに吸収するので、明るさが変化しない参照星で地球大気や雲による吸収を補正するのです。
つまり、目的の星の明るさの変化を精度よく調べる「測光」観測が可能になるのです。


少し専門的な話に入ってしまいましたが、次回にお話する頃には、この観測で何が明らかになったかをお伝えできると思いますので、楽しみにしていてください!



IRSF望遠鏡の全体姿です


IRSF望遠鏡からの夕方の風景です


観測施設からの積雪の様子です





2015年6月12日金曜日

30m 望遠鏡の装置

光学など担当の岩室です。

 日頃は3.8m望遠鏡関係の開発研究が中心で、国際協力で進められている30m 望遠鏡(TMT)関連の開発には直接関わることはないのですが、TMT が完成した時に初めに搭載する3つの観測装置の1つ、可視光多天体分光撮像装置(WFOS)の開発に向けて北京で開催された検討報告会に参加する機会がありましたので紹介したいと思います。

 WFOS TMT に搭載される最も大きな装置で、装置でありながら 3.8m望遠鏡程度の大きさがあります。








  上図は、今回の検討報告会のページにある TMT に搭載された WFOS の図(実際には装置を囲む小屋が建てられてその中に装置が入ります)に、同じ縮尺での 3.8m 望遠鏡の図を重ねたものです。この装置も部分ごとに分けて国際協力での開発が予定されており、日本からも国立天文台のグループが参加していました
 私は、TMT 側からコメント役としての参加を要請されて参加したのですが、この装置に関する検討を行った各国の12グループが3日間にわたり発表を行い、それに対して問題点や課題を指摘して今後の開発に繋げるというもので、検討会前後の関連した仕事も含めて結構大変な仕事でしたが、有意義な機会でした。

  今回の北京出張で印象に残ったことは、
1) TMT は多くの国が参加する相当に難しい国際協力プロジェクト
2) 望遠鏡本体だけでなく、装置開発の面でも日本の役割は非常に大きくて重要
3) 北京の砂嵐はすごい
4) 中国のお金の単位「元」を表す記号も「¥」
5) 元を日本円に戻すのが大変
6) 当然ながら日本酒は異常に高い

だったのですが、1) 2) は技術面でもさることながら、物事を進める上での文化面でも各国に相当の差があり、皆、それを意識して進めている姿は印象的でした。日本は単一文化なので普段は文化の違いを意識する必要はないのですが、国際協力で物事を進める上では重要で、障害にもなりうる部分です。日本は技術面・文化面どちらにおいても非常に大きな信頼を得ており、頼りにされている存在であることがこの会議でも改めて確認できました。3) は会議の3日目の昼休みに来たすごい砂嵐のことですが、TV でしか見たこともないような巨大な砂の波が押し寄せてきて、ひどい時には視界 10m 位になってしまう様子には驚きでした。北京在住の中国人は「まあ普通」と平気な様子でしたが、外に居たら大変でしょうね。4) 5) はお金に関係する話なのですが、1元≒13円で1桁単位が異なるにも拘らず、円と元はどちらも「¥」記号で表すようで、ややこしいですね。また、元を円に中国国内で戻すには元を購入した際の両替証明書が必要で、持っていなければ手数料が異常に高い日本国内での換金となります。う~ん、不親切。で、6) となるのですが、どの程度現金が必要になるかわからなかった私は、日本円で3万円を元に替えて(出発時は上記の事情を知らず、余ったら円に戻せばいいかと考えながら両替証明書は即捨て)出張に出たのですが、最終日前日になっても大半が残ったままでした。元の換金に関する事情を現地で初めて知った私は、大量に余ってしまった元をどうしようか考えていた所、今回の会議のコメント役として集まった国際メンバーで一杯やろうということで和食のお店に行く事になり、そこで超高い大吟醸(銘柄忘れましたが、多分日本国内の価格の4倍以上)を大盤振る舞いして(予定通り?)全部使ってしまったんですよね。まあ、良く考えれば中国の国策にまんまとやられてしまった感じなのですが、超高いだけあってお酒はおいしくて他のメンバーにも大好評でした。
  皆さんも中国へ行く際には無駄銭を使わされないように注意しましょう。