2014年10月21日火曜日

天文台長の柴田です。

今日(1018日)は、みなさまに嬉しいご報告です。
京大天文台の予算ピンチを解決するための募金活動の一環として、8月22日から1020日までの60日間限定で、「太陽フレアの解明と宇宙天気予報の研究」というタイトルでクラウドファンディングhttps://academist-cf.com/projects/4/shibata なるものを始めていましたが、それが今日、ついに目標額の350万円を達成できたのです! 
と言っても、ピンと来ない人もおられると思いますので、ちょっと説明しましょう。
「クラウドファンディング(crowd funding)とは、不特定多数の人がインターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語」wiki )というものです。「多くの人々から少額の寄付を通して出資を集める」wiki)のが特色です。英語では crowd なんですね。先日、外国の友人に cloud funding とメールして間違いを指摘されました。Cloud computing cloud と同じだとばかり思っていたのです。Wiki をちゃんと読んでおくべきでした。
今回は1020日までに目標額の350万円を集めることが出来た場合にのみ、決済が確定する、というルールでした。ところが、開始後一ヶ月の9月下旬になっても目標額の4分の1程度しか集まらず、達成が危ぶまれていたのです。
それで twitter  https://twitter.com/cosmic_jet で、できるだけつぶやくようにしたり、多くの人々にメールを送って、みなさんの知人に宣伝してくださいとお願いしたりしていました。しかし、10月に入るまでは、なかなか寄付が増えず、なかばあきらめの境地だったのですが、多くのみなさん(特にフォロワーの多いみなさん)の発信や新聞報道(読売新聞10月6日中部地区)、さらにはインターネット報道(ハフィントン・ポスト 10月9日)などのおかげもあって、最後の10日間で100人以上の方が寄付してくださり、ついに達成できたのです。とりわけ最終日(1020日)直前のこの数日で50人以上の方が寄付してくださったのは驚きでした。もう少しで達成、という状況が、支援しようというモチベーションを高めるのですね。
さて、今回、クラウドファンディングを始めたきっかけは、宇宙物理学教室に4月に着任したばかりの新任助教の佐々木貴教さんからのメールでした。佐々木さんの元教え子(東工大大学院生)の知人に、クラウドファンディングのベンチャー企業を立ち上げた若い社長さんがいるので、ぜひ会うと良い、附属天文台の予算ピンチの解決のために少し役立つかもしれません、とのことでした。それでお会いしたのが、このクラウドファンディングのサイト「アカデミスト」を運営している会社の代表取締役の柴藤亮介さんでした。柴藤さんご自身も最近まで首都大学東京で原子核理論の研究をしていた元大学院生で、博士論文になる予定の論文は投稿中だそうです。周りの大学院生や研究者を支援する仕事をしたい、ということで今年2014年4月に「アカデミスト」を立ち上げとのこと。研究者支援のクラウド・ファンディングとしては日本で初めてだそうです。それは素晴らしい、京大天文台の寄付集めが、同時に柴藤さんの日本初の研究者支援事業の応援にもなるので、一緒に頑張りましょう、ということで始めました。
柴藤さんとは佐々木さんも含めて、何をテーマに寄付集めをするのが良いか、色々相談しましたが、まずは、最近予算が打ち切られた飛騨天文台のSMART望遠鏡の維持費(年間1000万円程度)を獲得して太陽フレアの解明と宇宙天気予報につながる研究で成果を上げることを目標としました。私が推進している様々な研究を柴藤さんに紹介したところ、太陽フレアの動画がおもしろい、それをリターンにしましょう、ということになったものです。さらにフレアTシャツ(以下の写真参照)やフレア・エコバッグもリターンに追加しました。(後者は嶺重教授の提案です)
今後は、岡山3.8m望遠鏡の運用経費獲得のクラウド・ファンディングも始めたいと思っています。みなさまのご支援やご協力をいただけましたら、大変幸いです。

(2014年10月19日)

以下の写真は、フレアTシャツを来て、(左)喜多郎さんと(花山天文台野外コンサートの直前)、(右)篠原ともえさんと(嵐山宙フェスの際)。いずれも201410月4日。
篠原さんの勧めで、フレアTシャツを着込みました。そのため、その日は夕方の花山天文台野外コンサートのときも、ずっとフレアTシャツで過ごしたのでした。








2014年10月3日金曜日

2014.10.3

   鏡製作担当の所です。

日本・アメリカ・カナダが中心となり計画を進めてきた、超大型望遠鏡TMT (Thirty Meter Telescope)の建設が本格的にスタートしました。
この望遠鏡は対角1.44mの六角形の分割鏡を492枚組合わせて口径30mの主鏡を構成します。日本は望遠鏡本体構造や分割鏡の製作などを担当することになっています。
分割鏡の製作は国立天文台とキヤノン()が共同で進めるようですが、今年6月にカナ ダで開催された学会の集録をみると、日本独自の技術ではなく、Keck望遠鏡の分割鏡で実績があるstressed mirror polishingというアメリカが開発した技術を用いて分割 鏡を製作する方針になったようです。
ものづくりに携わる者として、日本の技術が採用されなかったことが残念でなりません。TMTの次の計画(20402050年に口径100m?)では鏡の製作に日本の技術が採用される よう、地道に技術開発を進めていかなくてはいけません。

さて、京都大学3.8m望遠鏡の建設予算がつき、先月から分割鏡の量産を開始しました が、これと並行して新しい鏡面加工技術の開発を大阪電気通信大学と共同で進めています。
秘密保持契約の関係で詳しい説明はできませんが、この新しい加工技術は研削と研磨 の良いところをとったもので、研磨より格段に加工能率が高く、研磨では避けることができなかった縁だれを生じない画期的な鏡面加工方法です。
写真は加工実験の準備風景で、大阪電気通信大学が所有するNCフライス盤に専用の工 具回転軸を取り付けたところです。

ちなみにこのNCフライス盤は、NC部は30年前、フライス盤本体は40年以上前のものです。きちんと作られた機械は、適切なメンテナンスを行えば何十年もの間、現役で稼動さ せることができます。
京都大学3.8m望遠鏡も数十年にわたって活躍し、数多くの新しい天文学的知見をもたらしてくれると期待しています。