2013年6月28日金曜日

To err is ...


 プロジェクトリーダの長田です。
 
 先日、らららクラシックというNHK教育テレビの番組で、サン=サーンスが日食を見ている写真がありました。
彼は2歳でピアノを始め、3歳で作曲をしたという、モーツァルトなみの神童で、さらに天文学・数学・文学などにも造詣が深かったとのことでした。
フランスというのは数学や自然科学への興味を持ったえらい人が出ている国ですね。

 オーギュスト・コントという偉大な哲学者もその一人で、ウィキペディアによると、「一般労働者向けの天文学の講義を18年間継続して運営した」のだそうです。
ただ、私が彼の名を知ったのはそういうまともな道筋ではなく、サイモン・シン著(青木薫訳)の「宇宙創生」の中に紹介されている1842年の彼の言葉「星の形状、星までの距離、星の体積やその運動を知るためにはどうすればよいかはわかるが、星の化学的ないし鉱物的な構造については、われわれは永遠に何も知り得ないのである」からです。
星の化学組成なんかいつまでもわからないよ、というわけです。
もっぱら星の位置を知り天体力学によって宇宙を解き明かそうとしていた当時の天文学にとっては確かにそうだったのでしょう。
ところが20年も経たないうちにブンゼンとキルヒホッフが太陽にナトリウム Na を発見したのでした。19世紀の分光学の勝利です。

 つくづく「過ちは人の常」ということわざを思い知らされるとともに、自然やこの世の仕組みが人間の想像力をはるかに越えていることの例ではないでしょうか。

 なお、太陽のスペクトルをとると、写真のようにナトリウムに特徴的な吸収線がくっきりと現れます。
こういった分光を武器にして天体をさぐるのはこの3.8m望遠鏡でもさかんに行なっていく予定です。

 蛇足です。この表題の「To err is 」から続く文句はしばしばパロディの種にもなっていて、私が初めてこの文句を見たのはある大学の計算機の部屋に掲げてあった
To Err is Human. To Really Screw Up, You Need a Computer. 
人は過ちをおかす。しかし物事を本当に台無しにするには計算機が必要だ。」
でした。





                                       
写真説明:
京大理の附属天文台(飛騨天文台DST)で撮影された太陽のスペクトル。
右のだいだい色のところにナトリウムの「指紋」とも呼べる波長589.0ナノメートルと589.5ナノメートルの2本の吸収線が見える。




2013年6月14日金曜日

3.8m望遠鏡の完成予想図


制御担当の木野です。

 このSARIFWebページには「こんな望遠鏡を作ります!」っていう絵が無いですよね・・・。
これまでの研究発表会や広報活動でも、ずいぶん以前に作った完成予想図を使ってきましたが、より詳細な設計が進んできたので、これを機にいろんな部品たちの図面を集めて完成予想図を作りなおしてみました。

 



 
 
 
 
 
 
 
 

これが、我らが3.8m望遠鏡の姿です。
高さが8m、全幅が7.3mくらい、図面をもとにしているので形はかなり正確ですが色は変更するかもしれません。
リアルな絵にしてみると実感がわいてきますね。
それに自分が担当している場所が目に見えるとやる気も出てきます。
 

もちろん、絵に現れない細かな部品やソフトウェアなどにも開発しなければならない要素はまだ沢山あります。
望遠鏡本体以外にも、星の光を分析する装置(青色の台の上に載せます)や、ドーム・観測棟なども必要です。
お絵かきはこのあたりにして、文字どおり絵に描いた餅にならないよう、研究・開発を進めていきます。



2013年6月7日金曜日

京大バリアフリーシンポジウム


 ボードの嶺重です。

 「バリアフリー」ということばで、戸惑われた方がおられるかもしれません。私はここ数年、バリアフリー天文教材プロジェクトを推進しています。これは、視覚障害者を含め誰もが使える天文学習教材を開発するもので、念願の「絵本」を完成したことは、昨年、書きました(20121119日)。

 京大内外で、そうしたバリアフリー活動を進めておられる方が他にもおられます。また全国の大学で、障害学生支援にあたっておられる方も増えてきました。そのような方々に声をかけまして、京大で最初となりますバリアフリーシンポジウムを、今年の629-30日に開催することになりました。

 シンポジウムの仕掛け人の一人に、広瀬浩二郎さんという方がいます。京大最初の全盲の学生で、現在は国立民族学博物館のスタッフとして「さわる文化」の普及に全力を注いでおられます。関西テレビが広瀬さんの活動に関心をもちまして、66日に行われたシンポジウム記者会見でも取材が入りました。

 「障害者」と聞くと、「かわいそう」とか「がんばっている」という印象をもつ人が大半でしょう。でも、それはどこか違うということを広瀬さんと話していると気づかされます。彼は、視覚障害者は触ることを日常にしている人(触常者)であり、「さわること」のプロである、と言います。その立場で、目がみえる人が忘れている「触覚」という感覚を「ひらく」ワークショップを推進しているのです。「かわいそう」「がんばっている」ではなく「おもしろい」である、健常者が知らない「おもしろい」世界の扉を開くようなシンポジウムにしたい、と共に準備を進めています。

 興味をもたれた方は、

 http://www.ar.media.kyoto-u.ac.jp/b-free/

をご覧ください。出席は「無料」ですが、事前登録が必要です。また、近く関西テレビで広瀬さん特集番組が放映されますので、そちらもぜひご覧ください。