2018年8月10日金曜日

天文教育と天文普及

 数ある学問の中から天文学を選んでよかったな、と今にしてつくづく思う理由の一つに、天文学は社会(一般市民)との距離が近い学問ということがあげられます。
 天文学と社会をつなぐ接点「天文教育・普及」活動に関する全国規模の研究会が、8月5-7日に慶應大学日吉キャンパスにて開かれました。主催は日本天文教育普及研究会(全国の天文研究者、小中高の先生、プラネタリウムや科学館など教育施設スタッフ、天文愛好者からなる団体)です。この研究会では毎回、思いもよらぬ、発想豊かな事例紹介が目白押しで、大きな刺激を受けています。今回も全部で160人超の方々が集まり、朝から深夜に至るまで熱い議論が繰り広げられました。初日にはJAXAの吉川真さんによる「はやぶさ2」の特別講演があり、また間瀬康文さんによる「はやぶさ実物大模型」の展示もありました(図1)。
 さて、今回の研究会、一つの大きな特徴がありました。初日限定ですが、すべての講演に手話通訳と、UDトーク(音声認識ソフト)を用いた言語情報の文字投影がついたことです。今回の研究会テーマは「みんなで楽しむ天文・宇宙」。宇宙や天文に興味をもち、もっと知りたい、もっと学びたいと思うことは障害のあるなしに関係ありません。しかしながら、音声情報を取り入れることが難しい聴覚障害者にとって、手話通訳などの情報保障がない会合には出席しづらいのです。そこで今回、本庄谷拓さんほか関係者の多大な協力を得まして、1日だけですが手話とUDトークを導入しました。
 今回、10人弱の視覚障害者・聴覚障害者の参加がありました。私は天文用語の手話表現をテーマに発表をしたのですが(内容はいずれまた)、参加の盲ろうの(視覚と聴覚に障害がある)方から今後の目標について質問がありました。「プラネタリウムや講演会等で、手話通訳や文字情報投影がごく当たり前になること」と答えました。

嶺重 慎


図1:はやぶさ実物大模型たけとよモデルⅡ
特定非営利活動法人ギガスター 間瀬康文氏提供

2018年7月13日金曜日

日本インドネシア 国交樹立60周年

リーダの長田です。
講義の準備をしているといろいろと新しいことに出会えて本当に驚きます。学生よりも教師の方が勉強になるものだということを痛感し続けています。今日も「赤外線天文学」の講義で調べものをしていたら、Turgot教授という方についてAlan Lightmanが書いた文章に遭遇しました。「ラジアティヴ プロセス」略して「ラジプロ」の略称で知られている「宇宙物理学における輻射過程」という教科書の名著の著者Lightmanです。その文章は彼のエッセーであり、いわく、

Turgot教授は熊みたいで40前後でハゲ始めていて猫背でいつもワイシャツのすそが出ていて、しかし、いわゆるうっかり者の教授ではなくてピントがピタリと合っていて、とは言え、学生に向かってではなくて黒板に向かって講義をして、だけど、だからこそ私は彼を指導教官に選んだのだ(Dance for Two (Pantheon Books, New York, 1996), p.163)。さらに興味深い記述が続きます(今やTurgoやらLightmanやら上記の書名やらで検索すれば少しは読めるという良い時代になったものです、興味のある方はぜひ)。

さて、最近遭遇したのはもう1つ、表題のように、In 2018, Japan and the Republic of Indonesia mark the 60th anniversary of the establishment of diplomatic relations.(これは外務省のウェブサイトから。日本インドネシア国交樹立60周年記念事業の募集なんてのもやっているのですが、今から何かに応募するのはむりでしょうねえ)でした。さらに、たどって行くと、

元AKB48で昨年12月にJKT48を卒業して、インドネシアでタレントとして活躍中の仲川遥香(25)が15日、「世界で最も影響力のあるツイッターアカウント」調査の女性の部で、昨年に続いて世界7位にランクインした。(これは日刊スポーツ[2017年11月15日20時0分]の記事のサイトから)というのもありました!

書くネタがなくて、実践ビジネス英語を聞いていたら、1つ取ってくれば盗作だけどたくさん引っ張ってくれば研究だ(そのNHK番組では1938のWilson Mizner の When you take stuff from one writer,it's plagiarism.  When you take it from many writers, it's research.をヘザーさんがおっしゃってました。どうやらたくさんのバージョンがあるようですが。)とあったので、そうだ!と、たくさん書き連ねてみました。どれも私には新鮮な内容でした!!


この日本インドネシア国交樹立60周年記念ロゴを使うにはいろいろ条件があるようで、ここでも、ここまで全部コピーすれば良いだろうと・・・。

2018年6月27日水曜日

火星大接近天体観望会@花山天文台&京大吉田南グラウンド

こんにちは。
広報・サイエンス担当の野上です。 

7月31日(火)は何の日かご存知でしょうか?
雑学ネタ帳・今日は何の日というHPによると、7月31日はパラグライダー記念日、蓄音機の日、クールジャパンの日、トゥインクルレースの日、菜の日となっています。それぞれに興味深いものがありますが、天文好きにとっては別のことが頭に浮かびますよね?

そう、7月31日(火)は火星大接近の日です!公転の関係で地球と火星はだいたい2年ちょっとおきくらいに近づきますが、それぞれの公転軌道が楕円形をしているため、一口に「近づいている」と言っても距離には大きな差があります。国立天文台のウェブサイトの中の「火星とは」というページをたどっていくと、2018年7月31日には火星と地球の距離が5,759万kmとなり、視直径は24.3秒角で-2.8等の明るさになるそうです。
この夜は金星、火星、木星、土星を一晩で見ることができるのですが、さすがに金星には負けるものの、木星よりも明るく見えることになります。
2012年3月6日にもその前後1年の間では最も火星と地球が近づいていることになっていますが、そのときは距離が10,078万kmと今年の2倍近く遠く、視直径が13.9秒角、明るさが-1.2等というので、ずいぶん差があることがわかります。

さて火星が2003年以来15年ぶりくらいの明るさになる今回、宮本正太郎・第3代台長が火星研究で大成果を挙げた花山天文台としては観望会を行わないわけにはいきません!7月31日(火)と8月3日(金)に火星大接近天体観望会を行ないます。宮本さんが実際に使った花山の45cm屈折望遠鏡で、あなたも火星を見てみませんか?45cm屈折望遠鏡以外でも、小型望遠鏡を出して木星や土星の観望も行ないます。
また、宮本さんが挙げた成果を中心に解説する講演も今の台長である柴田さんが行ないます。ご興味を持たれた方は、京都市観光協会のホームページからお申し込みください。
中学生以上4,800円、小学生3,800円の料金をいただきますが、その多くは花山天文台の運営費にあてられますので、どうかご協力をお願いします。

また、より多くの方と一緒に火星他の天体観望を楽しみましょうということで、7月31日(火)、8月1日(水)、8月2日(木)には京都大学吉田南グラウンドでも観望会を行ないます。こちらは参加費無料で事前申し込みも不要です。
友人知人ご家族をお誘いの上、どうぞお気軽にご参加ください。

写真はNASAで公開されている、ハッブル宇宙望遠鏡で観測した火星と、火星探査機マーズ・パスファインダーが撮影した火星表面です。
さて地上から見た火星はどのように見えるでしょうか?
花山天文台、あるいは吉田南グラウンドで確かめてみてください!

2018年6月8日金曜日

飛行機雲

 少年野球をやっていたころ、走塁練習で監督が打ったことに気づかず雲を眺めていたら思いっきりケツバンされたことを覚えているプロマネの栗田です。

 今でこそカメラ付き携帯があるので、面白い雲を見つけたときに写真に収めることができますが、かつてはそうはいきませんでしたよね。ちなみに一番のお気に入りは以下の写真です。南アフリカの観測所から撮影したカナトコ雲です。青空に沸き立つ雲が成層圏で水平に広がり、しばらくすると日没になり頂部だけが夕日で赤く染まりました(つまり赤くない部分は地球の影に入っています)。




 6月1日、せいめい望遠鏡のメンテナンスのために岡山天文台に行った時も面白い雲を見つけました。青空の一角に複数の飛行機雲が短く密集していました。とても印象的で、旅客機でこんなことが起こるだろうか、と不思議でした。同行していたミリタリーにも明るい木野氏に報告すると、もしかするとブルーインパルス(自衛隊の曲芸飛行隊)かもしれない、とのことでした。確かに6/3に山口県の防府でフェスがあるようで、ホームベースの松山から移動の際の一幕だったのかもしれません。




 飛行機雲の数は7本確認できます。ブルーインパルスの編隊は6機だけれども予備機が1機あるらしい。しかも移動中もしっかり編隊を組んで飛ぶらしい。偶然の重ね合わせや自然現象なら面白かったのだけど、きっとこれも相当珍しい(ドクターイエローよりずっと珍しい)だろうから得した気分になっておくことにしました。

 まぁ、こんなに短い飛行機雲を見ることも初めてです。飛行機が急激に高度を変えて冷たい空気の層を短距離で突っ切ったのか、まさかここで演技用のスモークを出したのか。。数分後には輪郭もぼやけてしまいました。



※飛行機雲ができる条件(水蒸気の過冷却または飽和状態)がギリギリの状態では出来てもすぐに消えるため、尾っぽの短い飛行機雲となります。これは時折見かけますが、空に取り残された短い飛行機雲は記憶にありません。同様に珍しい飛行機雲として、薄い雲を切り裂いたものもあります(雲を作ってないので飛行機雲と言えないかもしれませんが)。 



2018年6月1日金曜日

きょうとの505

 惑星観測装置担当の山本です。

 唐突ですが、PHP研究所より『[決定版] 京都の寺社505を歩く(https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=4-569-69247-8)』という新書が上下巻で出版されています。タイトルの通り、京都を12のエリアに分け、計505もの寺社の来歴、見所、所感などが紹介されています。「せっかく京都に住むのだから、一般的な観光名所くらいは廻っておきたい」と思い、京都へ赴任する際に購入した本のうちの1冊(1部)です。健康のために、と5年ほど前に自転車通学から徒歩通学に替えて以来、散歩・散策にハマっており、また、それ以前にもなんとなく頂いた御朱印帳が持ち腐れ状態でしたので、これらを生かし切れるような、なかなか都合の良い本だと思っておりました。

 ただ、505というのはなかなかな数字で、初めのうちは本当にただ「参拝した寺社のことが詳しく分かればいいや」くらいの心持ちで、まさか「すべて廻りきろう」等という事は考えておりませんでした。実際、京都へ来る前から知っていたような超有名な寺社を廻ってみたところで10,20の寺社であり、その数十倍の寺社があると思うと、とてもすべて訪問、は現実的な考えには思えませんでした。


白円で囲まれた丸印が「京都洛北・森と水の会」洛北30社(地図では26社)。
貴船・鞍馬、大原、上賀茂・下鴨神社、曼殊院などが対象。


 とはいえ、時間が経つと積み重なるものがあります。最初の切っ掛けは、修学院の辺りをフラフラしていた時に参拝した鷺森神社で受け取った、「京都洛北・森と水の会」の企画パンフレットでした。この企画は、会員の社寺でご朱印を受ける毎にパンフレットに印を頂き、10個溜まると特製コースターを1つ頂けるというもので、総数30の寺社が参加していました。最初の10個は下鴨神社、上賀茂神社、八大神社、曼殊院など、京都市街からもアクセスし(徒歩で行き)やすい寺社でしたので、すぐ達成できました。しかし山を越えた寺社も多くあるので「ここらからさらに20個は流石にキツいな」と思い、あまり進行しませんでした。しかし大原や鞍馬に行ってみると又一気に印が増えるので20個も達成してしまいます。ここまで来てしまうとなんとか残り10個を、と欲が出てきてしまい、岩倉辺りを休日毎にまわって結局、足かけ3年で達成することが出来ました。


「京都洛北・森と水の会」スタンプ台紙と記念品コースター。
廻りきるのが遅かったためコースター全種コンプリートは出来ず。


 この頃になると、『505』の上巻が紹介している寺社に、だいたい参拝していることに気付くようになります。上巻は東山から左京区、そして上京区あたりの、比較的アクセスし(徒歩で行き)やすい寺社が紹介されており、未訪問の寺社が数十程度になっていました。こうなってくると「せめて上巻の寺社を……」と思ってしまい、実際(左京区の北の端にある峰定寺を除いて)上巻をコンプリートすることが出来てしまいました。


『505』で紹介されている京都市街の寺社。
色付き円が訪問済み、白円が未訪問。地図中央右の大赤円が二条城、
右上大赤円が京都大学、右下大赤円が京都駅、左大赤円が渡月橋。


 こうなってくると……、後はおわかりですね? 

 寺社をぐるぐる廻るようになって、1つ自分に課したルールがありました。それは先ほどからチラチラと仄めかしているように、「徒歩で行く」と言うことです。最初のうちは単に健康のため、と言うのと交通費の節約というような意味しかなかったのですが、だんだんと別の意味を持つようになってきました。京都は古い都です。今のような交通手段がない時代から、いろいろな人がいろいろな思惑を持って、京都を行ったり来たりしていたことが、様々な旧跡を巡ることで分かってきました。あの場所から此の場所までどれくらいかかり、どれくらい疲れて、どういった景色が目に入るのか。今みえている現代の京都の街並みと、過去の都の町並みとでどう違っていて、どう同じなんだろうか。そういう感覚がとても楽しくおもうのです。

 とは言っても、毎回自宅から移動していては、移動だけで1日が終わってしまうので、以前歩いたところまでは交通機関で行ってもよいルールも追加しています。


伏見、宇治、乙訓などを含んだ地図。凡例は上に同じ。


 しかしながら、下巻は郊外の寺社が多く、また徒歩はおろか交通機関を利用してもなかなか到達が難しい寺社が多く控えています。愛宕神社のように1000m級の登山が必要なものや、大阪・奈良との境に近い、非常に遠い寺社などです。


『505』で紹介される寺社の全景。


 しかし、現在までに訪問達成率は85%ほどまできています。出来るところまで、やっていければと思います。

 さて、最後に自分の仕事などに引き付けたまとめなどさせて頂ければ、「可視化が大事」と言うことでしょうか。計画がどれくらい進捗しているのか、全体のどれくらいの位置にいるのか、不足を解消するためには何が必要なのか。こうした調査、検討は研究の世界でも重要な仕事の1つです。学問という大きな世界で言っても、何が分かっていて、何が分かっておらず、何が分かれば、世界の謎を解明することが出来るのか………。

 人へ説明・紹介するときだけでなく、自分で考えるときでも、可視化は大きな力を持っていることが多いです。現在開発している惑星撮像装置がきちんと「せいめい望遠鏡」に搭載され、目標が達成されるよう、きちんとまとめていきたいと思います。



それでは!

2018年5月16日水曜日

システムエンジニア的な話


 光学など担当の岩室です。

 今回はちょっと難しい話です。
世の中で良く「システムエンジニア」という職業名を聞くようになりましたが、これってコンピュータ関係の仕事だという事はわかるけど、実際、何をやっているのかよく分からないですよね。「プログラマ」はプログラムを開発する人ですが、「システムエンジニア」はプログラムを組み合わせて必要なシステム全体を作る人です。私は宇宙物理教室のシステムエンジニア的な仕事も行なっています。

皆さん、メールを送ったりブログやインスタをアップしたり色々ネット内での活動をされているかと思いますが、それぞれ、どんな仕組みになっているかご存知でしょうか。メールであれば、メールの送受信をしてくれる「メールサーバー」というのがどこかにあって、それに接続することでユーザーはメールのやり取りができます。ブログやインスタであれば、ネット上に情報を置いて公開してくれる「ウェブサーバー」というものがあって、そこに情報を送ることで掲載してくれます。どれも、大きなネット関係の会社が無料でサービスを提供して運用されていますが、昔はこれらは使いたい人が独自にサーバーを立ちあげて運用していました。宇宙物理学教室は非常に歴史が古く、1995年頃からそのようなサーバーを独自に立ちあげて運用していたようです。現在もその流れを受けて、小規模ながら各種サーバーを自前で立ちあげて運用しています。これは、非常に労力がかかりますが、ユーザーのやりたいことを自由に行なうことができ、また必要なときに自由に改変できますので、短期間だけ設定を変更するなど柔軟な運用が可能となります。

しかし、このサーバーっていうものはどうやって準備するのでしょう?

実は、サーバーを作るのに必要なソフトは全て無料で入手できます。宇宙物理教室では Debian という種類の linux (リナックスと読みます)を使っていますが、Windows のように単一の会社が扱う商品ではなく、linux は世界中のボランティアによって日々開発されているコンピュータを動かすベースとなるソフトウェア(OS と言います)です。Debian はそれをベースにこれまた多くのボランティアによって「パッケージ」と呼ばれる様々な機能を持ったソフトを部品として準備し、linux 上での多種多様なソフトウェアの集合体として開発されたもので、多くのパッケージの中から必要なものだけを組み合わせて目的にあった特殊なコンピュータを作り上げることができます。Windows でも、どんどんソフトを追加インストールして、使い方を増やせますよね。それが、もうちょっと細かく難しくなった感じです。こういう複雑なものは「スクラップ&ビルド」が必要なので、Debian は2年おきに新たなバージョンが公開されており、セキュリティ対策のため、サーバー PC も数年経つと新しいバージョンのもので作りなおす必要があります(古いものはアップデートされなくなるので、攻撃を受けやすくなります)

最近、宇宙物理教室の全サーバーの総とっかえ作業を行いました。まずは、できるだけ性能の高いコンピュータの部品を揃え、自前で組み立てる所から始まります。RAID と呼ばれる、ハードディスクを2台1組で使うボードを追加する事で、片方のディスクが壊れても問題なく復活できるようにします。部品単位で集めて組み立てるのは、こういう特殊な用途のものを完成品で購入すると非常に割高になるからです。量産品は安いですが、特殊なものは高いですよね。次に、この PC Debian linux をインストールします。その後、この PC に内部でソフト的な PC (仮想PC と言います) を動かすためのパッケージを入れます。その中で数台の仮想 PC を作り、それぞれに linux をインストールして(実際はある程度共通で使うパッケージまでインストールした仮想 PC をコピーして増やします)、そこにメールサーバーやウェブサーバーなどに必要なパッケージを入れることで、メールサーバーやウェブサーバーといった異なる機能を持つ仮想PC ができます(他にも、ユーザが外部から入る際のゲートとなる機能をもつサーバーや、ユーザのログイン名やパスワードの情報を管理するサーバーが必要になります)

 こうしてサーバーが出来上がります。見た目は1台の PC ですが中には数台の仮想 PC が入っていて、1台で数台分の役割をこなします。できるだけ性能のいい部品を揃えるのはそのためです。1台目ができたら、それで新しいサーバーの運用を開始し、これまで運用してきたサーバーの中身を新しい OS で同様に作り変えます(数年前の最先端 PC ですが、まだ何とか使えるので)。この作業は、1台目の中身をコピーするだけなので、大した作業ではありません。このような感じで、同じソフト構成にした PC を3台準備し(仮想 PC の台数では10台以上になります)、どれが壊れてもすぐに代わりの PC が使える体制で運用しています(下写真)最近は、昔に比べてセキュリティ対策がどんどん進化し、日々、より防御力の高いソフトが開発されています。そのため、パッケージを入れる際に昔の知識は通用しない部分が多々あり、その度に最近の情勢を勉強しないといけません。システムエンジニアはそういう意味で日々の努力が必要で、頭の固いオジサンには結構厳しい仕事です。




 ところで、岡山天文台をスタートさせるにあたり、そこでもサーバーが必要になります。最近、宇宙物理教室でサーバーを入れ替えたばかりなので、ついでに岡山天文台のサーバーもお古のサーバー PC を使って9割方完成させて昨日持って行ったのですが、何と輸送の途中で RAID を管理するボードが壊れたか、4台あるハードディスクの3台が同時に壊れたかと思われる事象が発生し、岡山天文台用に仮想 PC 4台を作りこんだ私の一週間は水の泡と消えつつあります(まだ復活の希望は少しありますが)。これまで数年間、宇宙物理教室のサーバーとして動かしてきたお古のサーバーなので、長距離の移動は酷だったのでしょうか。こういうサーバークラスの PC を輸送するときは、ハードディスクのヘッドの振れる方向まで意識して載せ、特に縦Gには注意して輸送しないといけないという事、また輸送後は PC の中身を開けてコネクタやボードのささり具合の目視点検が必要であることを学習しました...

(この PC はこの記事を書いた後に無事自己修復できて最重要部分は復活し、一安心でした)


2018年5月1日火曜日

3.8m望遠鏡の愛称は「せいめい」に決定しました!


 こんにちは。広報・サイエンス担当の野上です。

 決まりました!そう、我々の新しい望遠鏡の愛称です。「せいめい」望遠鏡です!今後はせいめい望遠鏡と呼んでかわいがってあげてください。

 昨年10月下旬から12月20日まで愛称募集を行ないましたが、日本全国から1036通+海外から2通の応募がありました。
年齢層も幅広く、幼稚園の年中さんから80代まで応募がありました。
我々の想像を大幅に上回る応募で、関係者一同感謝感激です。
応募していただいた皆様、どうもありがとうございました!

 この中から選ばれたのが「せいめい」です。平安時代の陰陽師、あるいは天文博士として有名な安倍晴明(あべのせいめい)にちなむものなのですが、この方、日本全国で観測を行なったとされています。3.8m望遠鏡の近くに安部山というのがあり、そこでも庵を構えて天体観測を行なっていたそうです。
ということで、京都にも岡山にもゆかりのある天体観測の大先達のお名前をいただきました。また、この望遠鏡で行なうサイエンスの3つの柱、突発天体・現象の即時観測、系外惑星探査、恒星スーパーフレアの中で、系外惑星探査は宇宙における生命の探求に繋がります。
太陽でのスーパーフレアも、地球での生命の発生や進化に大きな影響を及ぼした可能性があります。まさにせいめい望遠鏡にぴったりの研究テーマと言えるでしょう。

 ちなみに下の画像は、3.8m望遠鏡と同じ敷地にある岡山天文博物館のマスコットキャラクターです。その名も「せいめいくん」!
同じく安倍晴明にちなむものですが、あくまでも偶然の一致です。
これホントです。選考委員会には浅口市長など関係者にも入ってもらっていたのですが、選考委員会では一切そういう話は出ませんでした。決定してからそういう話を聞かされてびっくり、という顛末でした。折りしも大フィーバーを起こした羽生結弦さんのフリープログラムの音楽もSEIMEIでした。これも偶然の一致です!ホントです!

 ということで、これからもせいめい望遠鏡、せいめいくん、羽生結弦さんを応援してください!





2018年4月20日金曜日

キュー観測


 キュー観測って何?急観測や旧観測の書き間違い?そうではない。まさか9観測?それはさすがに、、、じゃあ、やけでQ観測とか?おしい。正解はQueue観測。Queueを英和辞典で見ると弁髪とも書いてあるけど、順番待ちの列のことである。で、何の順番待ちの列かというと、ここでは観測プログラム(観測課題)の列のことである。クラシカルな天体観測では、割り付けられた夜に観測者が自身で観測を実行するが、キュー観測はそのようなスタイルをとらない。あらかじめ採択された観測申し込み(プログラムor観測課題)に重要度に応じて優先順位をつけ、また観測条件に応じて順番を決めて、このスケジュールされた「列」に従って、当番の観測者がその夜の観測を次々と進めていく方式のことである。「プロの天文学者は、晴れていれば夜な夜な観測していると思われているらしい。しかし、実際にはそうでもない」シリーズの観測形態のひとつである。観測条件も考慮して順序を決めていくわけだが、観測対象天体の座標(位置)や月の位相(満月とか新月)は予めわかっているので、かなり前から順番の列を作って準備しておくことが可能である。一方、気象条件は直前にならないとわからないので、前日や当日の昼に予想して順序を決めておいて、夜になったらこれに従い順次観測を実行していくことになる。観測途中で急に薄雲が出てきたとかシーングが悪くなってきたという状況になったら、優先順位は低くても、薄雲でも悪いシーングでも観測可能な申し込みを急遽取りあげて観測を実行するといった具合である。優先度の高い観測課題を特定の夜に割り当てて、でも残念ながら気象条件が悪かったのでまともに観測できませんでした、また来年どうぞ、というような事態を避けるのに好都合であるため、最近の大型望遠鏡で採択されつつ方式である。すばると同じく8m級の望遠鏡であるGEMINI望遠鏡では既にかなりの時間はキュー観測で実施されている。すばる望遠鏡でも、可視撮像観測で導入されつつある。
 
 優先度が高いと評価された観測研究の達成率が上がるため、望遠鏡の効率的運用としては利点がある。但し、キューの効率的な組み方、望遠鏡や観測装置のオペーレーションを行なう人員の確保などといった面には注意が必要である。また、他人が観測を実施するので、どの程度の質のデータが取得できればよいのかという判断基準をかなり詳細に示しておかないといけない。また、例えば院生などが観測の現場を肌で勉強していくといった訓練ができない点にも要注意であろう。
 
 さて、20183月に、3.8m望遠鏡の共同利用の具体的な運用方針が、岡山プログラム小委員会から提出されてきた。それによると、キュー観測が望ましい形態とされている。(クラシカルモードも許容しているが、主なモードはキューとされている。)その理由は上記のような面もあるが、どちらかというと、3.8m望遠鏡ではToO(target of opportunity)観測を重視していることが挙げられる。ToO観測は超新星のように突発的に出現する天体の観測を行うものであるから、何月何日に実施できるかわからない。いつ出現するかわからない天体の観測のために望遠鏡サイトにずっと張り付いて滞在するわけにはいかない。キュー観測実施中であれば、ToO観測を行いますという電話やメール連絡があれば、優先順位を考慮してキューに割り込んでToO観測を実施することができるので、大変効率的である。と、いうわけでキュー観測が主な観測モードになりそうである。しかし、上記の様に院生が観測経験を実地で積むことも教育上必須であり、また観測実行できる人を育成する必要だってある。そこで、京大時間にはなるべく院生が観測を行なうような体制にしておくのがよいだろうと考えられる。
 
 ところで、自動観測でない限り、キュー観測体制下では、担当者は夜な夜な観測を行うことになる。その人達はプロの天文学者であるので、「一部のプロの天文学者は、がむしゃらに夜な夜な人の観測をする」ということになる。将来は、自動キュー観測が目指されている。


太田 201844日 




              GEMINI(北)の雄姿(?)


2018年4月6日金曜日

桜満開~日本の春


 桜が早くも満開になりました。毎年のこととはいえ、その美しさに目を奪われます。
 で、こんなことを考えました。桜の美しさとは何か? それは「統制された乱雑さ」ではなかろうかと。
 話はとびますが、2017年9月に京都大学バリアフリーシンポジウム2017が開かれまして、私も企画に携わりました。テーマは「『障害』で学びを拡げる」。「健常者」という(じつは)限られた世界でしか通用しない「普遍性」をベースになりたってきた学問を、「障害」という観点から見直し、新たな展開を目指そうという趣旨の会合です。従来の「普遍性」から多様性を包含した「真の普遍性へ」。今、障害当事者が発信する新しいスタイルの学問が形になりつつあります。
 宇宙物理学者の池内了さんはこんなことを書いています。「人々の自然観の基礎的概念を打ち立てるべき物理学の目標が、統一的原理の探究から、多様性発現の論理の追究へと移りつつあることに留意すべきだろう。・・・初心に戻って差異をそのまま受け取り、記述し、その根源を探る方向へと転回する時代にさしかかっている」(池内了『転回の時代に~科学のいまを考える』岩波書店)。確かに科学は発展してきた、しかしそれは原理に合わないものを排除した発展ではなかったか、という鋭い指摘であります。単純な原理で表せないもの、それは例えばカオスやフラクタルなど複雑系とよばれる現象であり、また科学と社会との関係でしょう。
 桜に話を戻します。もし桜が、この桜もあの桜も、みな同じ四角形とか三角形に花咲いていたとしたら、おそらく興ざめでしょう(「いや、それがいい」とおっしゃる方もおられるかもしれませんが)。桜の木々は、それぞれに枝を伸ばし、それぞれに花を咲かせています。同じモノはありません。まさに「統制された乱雑さ」。
 「雑」というと、今では「その他もろもろ」とあまりいい意味では使いません。しかし万葉集は「雑」の分類から始まります。年始にいただく「雑煮」と同じく「華やかな開始」という意味があるそうです(鷲田清一『折々のことば』朝日新聞2018年1月3日)。そういえば、星空だってじつに雑な(華やかな)世界ではないですか!
(嶺重 慎)


通勤途中で見つけた桜の花(2018330日撮影)




2018年3月7日水曜日

近未来の話 -3.8m望遠鏡の愛称とプラネタリウム番組-


こんにちは。広報・サイエンス担当の野上です。

前回の私の記事は20171027日のもので、そこでは3.8m望遠鏡の愛称募集のことを書きました。1027日に募集開始で1220日までの約2ヶ月間で、日本全国から幅広い年齢層で1000件を超える応募を頂きました。我々の想像をはるかに超える反響でした。応募していただいた皆様、本当にどうもありがとうございました!

愛称案と合わせて愛称の由来も書いていただきましたが、「なんとなく」というものから小論文か?と見紛うようなものまで様々で、中には感動を覚えたり勉強になったりするものもありました。皆様の期待をひしひしと感じ、我々もきっちりと望遠鏡や観測装置を作り上げ、後世に残るような科学的な成果を挙げていかなければと思いを新たにしております。

さて、この愛称の選考委員会が先日開催されました。いろいろな観点から非常に活発な議論の末、決定に至りました。結果や詳細についてはいずれ正式な発表がありますので、それまで楽しみにお待ち下さい。今回選ばれなかったものの中でも、「これもいいなあ」というものも多数あり、今後の3.8m望遠鏡関連の何かで使われる可能性があります。意外なところで「あ、これ3.8m望遠鏡の愛称で考えたやつや!」という発見があるかもしれませんので、ご自分の応募された案を覚えておかれるとまた楽しみがあるかもしれません。

さて、それとは別に、コニカミノルタプラネタリウムさんが、3.8m望遠鏡を取り上げたプラネタリウム番組を作ってくれることになりました。このメンバーズブログ執筆陣の長田さんと栗田さん、そして私が出演します。実は既にプレビュー版は見せていただいたのですが、印象は「編集ってすごい!」()。どこでいつ上映されるかは今後決まっていくことですが、楽しい番組になっていると思いますので、もしお近くで上映されるということになりましたら是非ご覧下さい。


大宇陀観測所の外観と
大宇陀観測所から岡山天文台に送られた
本棚とソファー




2018年2月26日月曜日

もっと昔の話 ― 雪露天じゃなくFrozenでもなく「虹と雪のバラード」


リーダの長田です。

「君の名は。」の地上波初放送を録画して、さらにそれをいつまでもほうっておいて、しかし、やっと見ました。みつはーーーーー! 百武すい星、ヘール・ボップすい星、さらに昔にさかのぼればハレーすい星、それは私が何とかハワイ大学にポスドクで雇ってもらえた原因のありがたいすい星ではあるのですが、その時は地球との相対関係があんまり良くなくて大して壮観な思い出にはなりませんでした。それで「君の名は。」のようなことにはならなかったわけで・・・。(以上、見ていない人には意味不明のコメントでした。)

さて、もっと昔、1972年に札幌で冬季オリンピックがありました。その公式曲として「純白の大地」という古関裕而の行進曲や賛歌があるのですが、私も先日のNHK-FM番組「クラシックの迷宮」まで全く知りませんでした。古関裕而は1964年の東京でも「オリンピック・マーチ」を作曲してとても有名な曲となり、また「巨人軍の歌」「大阪タイガースの歌」「ドラゴンズの歌」のすべて、さらについでに「君の名は」(1952年からNHKラジオで放送されて、番組が始まる時間になると、銭湯の女湯から人が消えたという伝説のドラマの方)の主題歌なんぞも作ったという、すごい人です(72年当時60代になったところ)。だけどこの札幌オリンピックの曲は全く知られていない、知られているのはむしろ「虹と雪のバラード」でしょう。私の世代だとちゃんと歌える人も多いはず。

何ゆえオリンピック・マーチや「闘魂こめーて」や「六甲おろーしにサッソウと」の線の曲である「純白のだーいち踏みしめー」が流行らなかったのかと言うと、1968年のグルノーブル冬季オリンピック映画とその主題歌「白い恋人たち」(クロード・ルルーシュ、フランシス・レイ)がウィンタースポーツのイメージを一新していたからだ、とNHK-FMの片山杜秀さんは言うのです。

そして、番組は、廣瀬量平(札幌五輪時41)、矢代秋雄(42)、武満徹(41)、山本直純(39)といった人々が委嘱された実に素晴らしい他の数々の公式曲をかけつつ、終わりました(年齢を調べたのは私なので、間違っていてもNHKの責任ではありません)。

40歳前後の人たちが中心になって作る3.8m望遠鏡、やっぱり「昔の名前で出ています」といった人間は精一杯サポートに回らないとねえ、いつまでもオレがオレがという老人はみにくいもんです。あ、古関裕而さんがそんな人だったというわけではありませんよ。それに、61歳頃に太陽からの赤外線を発見したハーシェルや68歳で天文対話
(Dialogue Concerning the Two Chief World Systems)
を出版したガリレオを例に出すまでもなく天文学ではトシをとってもすごい人、たくさんいますから、私も頑張ります!




写真:京都丹後鉄道「はしだて5号」の車内。京都府の北の端の峰山高校に19日に出前授業に行って来ました。峰山駅の駅舎は糸をかけた織機を模したデザイン。峰山高校の先生がおっしゃるには、10日・11日には神戸の舞子高校(私の育ったところのすぐそばの高校。その高台の校庭からは隕石孔が良く見えて・・・というのはウソ)に行って震災の場所巡りをなさったとか。その10日に舞子高校の生徒が、京大で開催の宇宙ユニットシンポジウムで優秀なポスターのユニット長賞を受賞し、私は舞子高校の生徒に賞品を渡していたのでした。
 https://www.usss.kyoto-u.ac.jp/symposium11.html
糸の(ホントはちりめんの)峰山・舞子・京都での入れ替わりです! (まだ「君の名は。」に酔ってます。最後まで、見ていない人には意味不明で、失礼しました。)



2018年2月9日金曜日

Frozen 氷の結晶


プロマネの栗田です。

 寒いですねー。なんでこんなに寒いのだろうと不思議に思います。日常使う摂氏は水が氷る温度で定義されていますが、物理的な意味はありません。むしろ絶対温度に意味があります。0℃は絶対温度で273度で、暖かいなぁと感じる15℃は絶対温度で288度です。その差はわずか5%ほど。なぜ人間はこのわずかな差を大きく感じるのでしょう。(鈍感ならいいのに)。気温の物理的な意味は空気中の分子の速さです。分子が激しく飛び回っていると暖かく、静かになると寒くなります。激しい分子はチクチクと肌を刺激し、静かな分子は優しく刺激するのに。。その分子の速さは0℃で秒速数百メートル程度。温度は速さの2乗に比例するので、分子がたった2%だけ遅く飛び回ると寒く感じるのです。体内が水で満たされているので、0℃付近に敏感なのでしょうか。人間は裸ですからねぇ。寒さの不思議を思うといつも動物園の夏のペンギンや冬のオラウータンを思い出します。ほとんど虐待に見えます。。




  先日、みぞれが降った良く晴れた翌朝、車のフロントガラスにとてもきれいな氷の結晶ができていました。我が家にだけ天から舞い降りた天使の羽か!残念ながらそんなメルヘンな話ではなく、屋根のない駐車場の車のフロントガラスはみなこんな感じでした。
放射冷却で空気中の水蒸気が過冷却状態になり、冷たいフロントガラスに触れ、氷となって張り付いたのですが、どうしてこんな模様を描けるのかが不思議です。自然が芸術家のような絵を描き、またそれが水とは全く関係のなさそうな鳥の羽やシダのような模様となる。

  雪の結晶といえば中谷宇吉郎が有名ですが、朝永とともにノーベル物理学賞を受賞したファインマンの著書から引用したいと思います。「(原子は)互いにくっつき合ってエネルギーができるだけ低くなろうとする。ある原子がエネルギーの低いパターンを見つけたら、ほかの原子も真似をするだろう(ファインマン物理学IVより)」。真似をすることで氷の結晶の様に規則正しい繰り返しのパターンが生まれるんですね。

  しかし、この結晶の曲線美は雪の結晶とも違い、単純ではなさそうです。暦の上では春の到来ですが、チャンスがあれば観察してみたいと思います。





2018年2月7日水曜日

雪露天

惑星観測装置担当の山本です。

 なんだか毎回同じ様な枕詞になってしまっているのですが、126日掲載予定であった本記事では「2018128/29日」のお話をさせていただきます。ある意味、前回の記事の続篇です。

 おさらい:25年来の友人の結婚式があり、そこで友人代表スピーチをいたしました、と言うお話を前回記事にさせていただきました。結婚式に参加した友人というのは、小学生からの友人が4名と、高校生からの友人が2名、という内訳で、小学生からの4人のうち私を含めた3名は、私が帰省すると晩ご飯に誘ってくれたり大晦日には集まって鍋を囲みながら年を越したり、と成年してからも太い付き合いを続けてこられた面々です。それぞれまったく違った人生を歩んでいますので、夢を語りあい苦楽を共にしてきた、と言うわけではないのですが、特に理由が無くても一緒にいて当然、というある種家族のような関係ではありました。

 さきほどより、25年来だ家族だ、などと自慢げ(?)に言っているのですが、実はこれまで泊まりがけの旅行というのをやったこともありません。成人した十数年以上前から、どっか行きたいね、と言う話は出ても、先ほど上げたように毎年年越しで集まっていますし、いつか行けるだろうという慢心からか、この歳までズルズルときてしまいました。たしかにこれから先しばらくは、いきなりメンバーが欠けると言う事も考えにくいところではありますし、それぞれ業種が違うメンバーの日程を合わせる面倒などを考えると、ついついその場の議題になるだけで具体化されずに後回しになっていました。

 とはいえ、今回友人が結婚した、と言う事で、今後は当然彼の家庭の事情が優先されるでしょうし、この先子供などが生まれたらさらに我々との都合を合わせることが難しくなることが簡単に予測できます。ということでいよいよメンバーも気持ちを入れ替え、旅行を具体化させることになりました。旅行の話が出る度に、今回結婚した友人が以前より「(  )と行った雪の露天温泉をおまえらにも見せてやりたい」という話をしており、丁度時期的にも都合が良く、それぞれの繁忙期にかかっていなかったので、実現の運びとなりました。目的地は奥飛騨の平湯温泉です。

 日程と目的地が決まった後は、交通手段や観光ルートなどを決めていきました。レンタカーにするのか冬用タイヤを買うのか、高山へ寄るのか白川郷を経由するのか等、各種検討をレポートにまとめて回覧するなど、普段の仕事より気合いが入っているかも知れないような、そんな3ヶ月弱の計画検討を経て、メンバーの中の1人は、何かイベントがある度に肩を脱臼したりインフルエンザにかかったりするので、励まし、注意し合いながら、ようやく当日を迎えられました。

 当日は関東を大雪が直撃した週でしたし、メンバーの住む地元にも雪が降る様ななかなかの悪条件ではありました。雪の遅延は考慮に入れた旅程だったのですが、それとは無関係に人身事故が起きて私とメンバーの合流が遅れたものの、それ以降は事前検討の甲斐か、ほぼ予定通りに旅程をこなせ、遅延なく宿にチェックインすることができました。

 宿の離れには予約制の貸切露天というものがあり、最低限の灯りと脱衣のための小屋があるだけで、あとは雪と空と山が見えるのみ、という大変風流な場所でした。とはいえあまりにも暗かったので、雪以外の闇が道なのか岩なのか湯なのか分からず、「本当にお湯があるのか?」と思った友人が浴衣のまま様子を見に行ったところ闇夜に空いた湯面に吞まれ消えていったものの、その後もう少しマシな照明のスイッチのありかを見つけ、我々は無事にお湯につかることが出来ました。


貸切露天の様子。灯りはこの照明と月明かりのみ。

旅行レポではないので、高山で買った地酒を楽しんだ話や、早朝に起きて雪の大露天風呂で夜明けを迎えたことなどは置いておいて、これくらいで旅のお話はお開きですが、いくつかのアクシデントはあったものの、基本的には無事に、楽しく旅を終えることが出来ました。予測の付かないこと、予測通りのこと、色々ありますが、目的を見失わず、これからも行きたいものです。きちんと落ちたか落ちていないかも良く分かりませんが、最後までお付き合い下さってありがとうございました。

それでは!




2018年1月12日金曜日

昔の話

光学など担当の岩室です。

 今回は20年前の話です。
 先日、昨年大ヒットした「君の名は」が地上波初放送だったので、どんな映画かと思い見てみました。映画の内容は別として、まあ、よくある科学者的視点から気になることも色々あったのですが、空いっぱいに広がったティアマト彗星のシーンがちょっと気になりググってみました。すると、やっぱりいらっしゃいますね。このシーンを真面目に検討している方が。<こちらのページ>によると、巨大彗星からは「イオンテイル」と「ダストテイル」の2本の尾が出るので、それが描かれているようですね。彗星の見える時間帯と尾の向きも気になったのですが、こちらに関しては当初の映画の設定では彗星の軌道に無理があったようなので気にしないことにします。このシーンを見て、20年前に連続してやってきた2つの彗星を思い出した人も多かったと思います。

 まずは百武彗星ですね。<グーグルで百武彗星画像検索>すると綺麗な絵が沢山出ますが、肉眼での印象は「あれがそうかな...」程度で事前にハレー彗星並みと騒がれた割にはかなりモヤっとした感じだった記憶があります。この時、私は物理教室の助手で、上司だった舞原名誉教授(当時助教授)とともに建設中のすばる望遠鏡に取り付ける第一期観測装置を開発しており、その関係で1996年の3月下旬に2人でハワイ大に別件で立ち寄ってからアリゾナに出張しました。百武すい星はその時にハワイかアリゾナのどちらかで見たのですが、日本では空が明るくて全く見えなかった彗星が暗い空に薄っすらと見えて、舞原さんと「あれがそうかな...」と確認した記憶があります。見間違えの可能性はありますが、夜の9時頃にほぼ天頂に見えて感覚的には30°以上に尾が伸びていました。今同じチャンスがあれば必ずカメラと三脚を持って行くはずですが、その頃はその数年前に木星に衝突したシューメーカー・レヴィ彗星の件もあり、彗星はホイホイ飛んでくるような錯覚があってあまり気にしなかったのが残念です。

 群を抜いてインパクトがあったのがヘール・ボップ彗星です。<グーグルでヘール・ボップ彗星画像検索>すると、これまた綺麗な絵が沢山出ますが、これらは写真で撮ったもので肉眼ではこれほど壮大には見えません(少なくとも日本では見た記憶が無いです)。私は、大学院生時代に独自開発したソフトで新しい観測装置を設計し、舞原さんとともに実機を開発してハワイ大の2.2m望遠鏡に取り付けて何度か観測したのですが、確かその最後の観測が1997年の3月にあり、舞原さんとマウナケア山頂のハワイ大ドームで観測をしていました。観測終了直前の明け方の薄明の頃に、望遠鏡を動かしてくれるオペレータに「いい景色が見れるから外に出てみろ」と言われて観測室からドーム外壁外側の周回テラスに出たところ、目の前に正に上記グーグル画像検索に出てくるような彗星が、東の空にほぼ天頂方向に10°程度に尾を伸ばして見えていまた。通常であれば写真でしか見れないような景色が、さすがマウナケア山頂の条件の良さのおかげで薄明にも関わらず尾の状態まではっきりと肉眼で見る事ができました。この時ばかりは何でもいいからカメラを持ってこなかったことを残念に思った記憶があります(多分、使い捨てカメラでもかなりいい絵が撮れたと思います)。その後数年経ってすばるが完成した際に幾つか写真をもらったのですが、その中にすばる望遠鏡と共に写るヘール・ボップ彗星の写真もありました。Web には同じ写真が上がっていないようなので、撮影者不明ですがスキャナで取り込んで上げておきます。



 この写真は彗星が夕方の西の空に写っているので、私が見た時よりもかなり後の暗くなった状態のものであるのが残念ですが、この写真でも2本の尾が確認できますね(実はナトリウムテイルという第3の尾もこの彗星では発見されたようです)。印象としては、私が見た時は明るさも大きさもこの2~3倍あった感じです。

 これ以降巨大彗星は見ていませんが、次に見える機会があれば是非綺麗な写真を撮りたいと、「君の名は」の映画を見て思ったのでした。