2018年6月27日水曜日

火星大接近天体観望会@花山天文台&京大吉田南グラウンド

こんにちは。
広報・サイエンス担当の野上です。 

7月31日(火)は何の日かご存知でしょうか?
雑学ネタ帳・今日は何の日というHPによると、7月31日はパラグライダー記念日、蓄音機の日、クールジャパンの日、トゥインクルレースの日、菜の日となっています。それぞれに興味深いものがありますが、天文好きにとっては別のことが頭に浮かびますよね?

そう、7月31日(火)は火星大接近の日です!公転の関係で地球と火星はだいたい2年ちょっとおきくらいに近づきますが、それぞれの公転軌道が楕円形をしているため、一口に「近づいている」と言っても距離には大きな差があります。国立天文台のウェブサイトの中の「火星とは」というページをたどっていくと、2018年7月31日には火星と地球の距離が5,759万kmとなり、視直径は24.3秒角で-2.8等の明るさになるそうです。
この夜は金星、火星、木星、土星を一晩で見ることができるのですが、さすがに金星には負けるものの、木星よりも明るく見えることになります。
2012年3月6日にもその前後1年の間では最も火星と地球が近づいていることになっていますが、そのときは距離が10,078万kmと今年の2倍近く遠く、視直径が13.9秒角、明るさが-1.2等というので、ずいぶん差があることがわかります。

さて火星が2003年以来15年ぶりくらいの明るさになる今回、宮本正太郎・第3代台長が火星研究で大成果を挙げた花山天文台としては観望会を行わないわけにはいきません!7月31日(火)と8月3日(金)に火星大接近天体観望会を行ないます。宮本さんが実際に使った花山の45cm屈折望遠鏡で、あなたも火星を見てみませんか?45cm屈折望遠鏡以外でも、小型望遠鏡を出して木星や土星の観望も行ないます。
また、宮本さんが挙げた成果を中心に解説する講演も今の台長である柴田さんが行ないます。ご興味を持たれた方は、京都市観光協会のホームページからお申し込みください。
中学生以上4,800円、小学生3,800円の料金をいただきますが、その多くは花山天文台の運営費にあてられますので、どうかご協力をお願いします。

また、より多くの方と一緒に火星他の天体観望を楽しみましょうということで、7月31日(火)、8月1日(水)、8月2日(木)には京都大学吉田南グラウンドでも観望会を行ないます。こちらは参加費無料で事前申し込みも不要です。
友人知人ご家族をお誘いの上、どうぞお気軽にご参加ください。

写真はNASAで公開されている、ハッブル宇宙望遠鏡で観測した火星と、火星探査機マーズ・パスファインダーが撮影した火星表面です。
さて地上から見た火星はどのように見えるでしょうか?
花山天文台、あるいは吉田南グラウンドで確かめてみてください!

2018年6月8日金曜日

飛行機雲

 少年野球をやっていたころ、走塁練習で監督が打ったことに気づかず雲を眺めていたら思いっきりケツバンされたことを覚えているプロマネの栗田です。

 今でこそカメラ付き携帯があるので、面白い雲を見つけたときに写真に収めることができますが、かつてはそうはいきませんでしたよね。ちなみに一番のお気に入りは以下の写真です。南アフリカの観測所から撮影したカナトコ雲です。青空に沸き立つ雲が成層圏で水平に広がり、しばらくすると日没になり頂部だけが夕日で赤く染まりました(つまり赤くない部分は地球の影に入っています)。




 6月1日、せいめい望遠鏡のメンテナンスのために岡山天文台に行った時も面白い雲を見つけました。青空の一角に複数の飛行機雲が短く密集していました。とても印象的で、旅客機でこんなことが起こるだろうか、と不思議でした。同行していたミリタリーにも明るい木野氏に報告すると、もしかするとブルーインパルス(自衛隊の曲芸飛行隊)かもしれない、とのことでした。確かに6/3に山口県の防府でフェスがあるようで、ホームベースの松山から移動の際の一幕だったのかもしれません。




 飛行機雲の数は7本確認できます。ブルーインパルスの編隊は6機だけれども予備機が1機あるらしい。しかも移動中もしっかり編隊を組んで飛ぶらしい。偶然の重ね合わせや自然現象なら面白かったのだけど、きっとこれも相当珍しい(ドクターイエローよりずっと珍しい)だろうから得した気分になっておくことにしました。

 まぁ、こんなに短い飛行機雲を見ることも初めてです。飛行機が急激に高度を変えて冷たい空気の層を短距離で突っ切ったのか、まさかここで演技用のスモークを出したのか。。数分後には輪郭もぼやけてしまいました。



※飛行機雲ができる条件(水蒸気の過冷却または飽和状態)がギリギリの状態では出来てもすぐに消えるため、尾っぽの短い飛行機雲となります。これは時折見かけますが、空に取り残された短い飛行機雲は記憶にありません。同様に珍しい飛行機雲として、薄い雲を切り裂いたものもあります(雲を作ってないので飛行機雲と言えないかもしれませんが)。 



2018年6月1日金曜日

きょうとの505

 惑星観測装置担当の山本です。

 唐突ですが、PHP研究所より『[決定版] 京都の寺社505を歩く(https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=4-569-69247-8)』という新書が上下巻で出版されています。タイトルの通り、京都を12のエリアに分け、計505もの寺社の来歴、見所、所感などが紹介されています。「せっかく京都に住むのだから、一般的な観光名所くらいは廻っておきたい」と思い、京都へ赴任する際に購入した本のうちの1冊(1部)です。健康のために、と5年ほど前に自転車通学から徒歩通学に替えて以来、散歩・散策にハマっており、また、それ以前にもなんとなく頂いた御朱印帳が持ち腐れ状態でしたので、これらを生かし切れるような、なかなか都合の良い本だと思っておりました。

 ただ、505というのはなかなかな数字で、初めのうちは本当にただ「参拝した寺社のことが詳しく分かればいいや」くらいの心持ちで、まさか「すべて廻りきろう」等という事は考えておりませんでした。実際、京都へ来る前から知っていたような超有名な寺社を廻ってみたところで10,20の寺社であり、その数十倍の寺社があると思うと、とてもすべて訪問、は現実的な考えには思えませんでした。


白円で囲まれた丸印が「京都洛北・森と水の会」洛北30社(地図では26社)。
貴船・鞍馬、大原、上賀茂・下鴨神社、曼殊院などが対象。


 とはいえ、時間が経つと積み重なるものがあります。最初の切っ掛けは、修学院の辺りをフラフラしていた時に参拝した鷺森神社で受け取った、「京都洛北・森と水の会」の企画パンフレットでした。この企画は、会員の社寺でご朱印を受ける毎にパンフレットに印を頂き、10個溜まると特製コースターを1つ頂けるというもので、総数30の寺社が参加していました。最初の10個は下鴨神社、上賀茂神社、八大神社、曼殊院など、京都市街からもアクセスし(徒歩で行き)やすい寺社でしたので、すぐ達成できました。しかし山を越えた寺社も多くあるので「ここらからさらに20個は流石にキツいな」と思い、あまり進行しませんでした。しかし大原や鞍馬に行ってみると又一気に印が増えるので20個も達成してしまいます。ここまで来てしまうとなんとか残り10個を、と欲が出てきてしまい、岩倉辺りを休日毎にまわって結局、足かけ3年で達成することが出来ました。


「京都洛北・森と水の会」スタンプ台紙と記念品コースター。
廻りきるのが遅かったためコースター全種コンプリートは出来ず。


 この頃になると、『505』の上巻が紹介している寺社に、だいたい参拝していることに気付くようになります。上巻は東山から左京区、そして上京区あたりの、比較的アクセスし(徒歩で行き)やすい寺社が紹介されており、未訪問の寺社が数十程度になっていました。こうなってくると「せめて上巻の寺社を……」と思ってしまい、実際(左京区の北の端にある峰定寺を除いて)上巻をコンプリートすることが出来てしまいました。


『505』で紹介されている京都市街の寺社。
色付き円が訪問済み、白円が未訪問。地図中央右の大赤円が二条城、
右上大赤円が京都大学、右下大赤円が京都駅、左大赤円が渡月橋。


 こうなってくると……、後はおわかりですね? 

 寺社をぐるぐる廻るようになって、1つ自分に課したルールがありました。それは先ほどからチラチラと仄めかしているように、「徒歩で行く」と言うことです。最初のうちは単に健康のため、と言うのと交通費の節約というような意味しかなかったのですが、だんだんと別の意味を持つようになってきました。京都は古い都です。今のような交通手段がない時代から、いろいろな人がいろいろな思惑を持って、京都を行ったり来たりしていたことが、様々な旧跡を巡ることで分かってきました。あの場所から此の場所までどれくらいかかり、どれくらい疲れて、どういった景色が目に入るのか。今みえている現代の京都の街並みと、過去の都の町並みとでどう違っていて、どう同じなんだろうか。そういう感覚がとても楽しくおもうのです。

 とは言っても、毎回自宅から移動していては、移動だけで1日が終わってしまうので、以前歩いたところまでは交通機関で行ってもよいルールも追加しています。


伏見、宇治、乙訓などを含んだ地図。凡例は上に同じ。


 しかしながら、下巻は郊外の寺社が多く、また徒歩はおろか交通機関を利用してもなかなか到達が難しい寺社が多く控えています。愛宕神社のように1000m級の登山が必要なものや、大阪・奈良との境に近い、非常に遠い寺社などです。


『505』で紹介される寺社の全景。


 しかし、現在までに訪問達成率は85%ほどまできています。出来るところまで、やっていければと思います。

 さて、最後に自分の仕事などに引き付けたまとめなどさせて頂ければ、「可視化が大事」と言うことでしょうか。計画がどれくらい進捗しているのか、全体のどれくらいの位置にいるのか、不足を解消するためには何が必要なのか。こうした調査、検討は研究の世界でも重要な仕事の1つです。学問という大きな世界で言っても、何が分かっていて、何が分かっておらず、何が分かれば、世界の謎を解明することが出来るのか………。

 人へ説明・紹介するときだけでなく、自分で考えるときでも、可視化は大きな力を持っていることが多いです。現在開発している惑星撮像装置がきちんと「せいめい望遠鏡」に搭載され、目標が達成されるよう、きちんとまとめていきたいと思います。



それでは!