2014年3月13日木曜日

最近のCMOSカメラ2

光学など担当の岩室です。

 前回に続き今回もカメラネタなのですが、もうすぐ高校生になる娘がカメラに興味を持ち始めた事もあって、ソニーのNEX-5R という小型一眼レフを買いました。2012年発売で現在は既に生産終了品なのですが、その分価格が下がっていて今なら小型デジカメ程度の値段で購入できます。驚くべきことにこの価格でありながら内部には24mm x 16mmサイズのCMOSセンサが入っていて、効率の高い裏面照射タイプではないですが直接見ると感動モノです。






 早速、三脚に固定して夜間の空に向けて撮影してみました。
明るい星であればリアルタイムでフォーカスの確認ができたので、マニュアルモードでフォーカスを調整し、中程度の感度レベルのモードで10秒露出をしたのが上の写真です。人間の目よりは十分に明るく綺麗に撮れて、上の写真では木星しか見えていませんが、実際の写真ではかなりの数の星が写っています。よっぽど面白かったのか、この後娘は1時間近く外で撮影していました。
昔は、写真を趣味にすると初期投資や撮影・現像費用など、かなりかかるので高校生の趣味には難しかったのですが、現在は非常に安価に本格的な写真撮影が行えるので、こういうところにも時代の流れを感じますね。


 ところで、24mm x 16mmというのは結構な面積で、これが読み出し回路も含めてかなり安価に手に入るのと、ワイプ撮影も可能なので複数台を焦点面にジグザグに並べてワイプ撮影をすれば、補正レンズを用いた場合の直径40cmという巨大な焦点面を用いた画像がわずか数十万円の投資で得られ、広報用画像や観望会などの際に使えるように思いました。もっとも、最近は 29cm x 20cm という超大型のCMOSも開発されていますので、お金に余裕があればこういうものを使えるとよりインパクトがありますね。

2014年3月7日金曜日

観測申込

  プロの天文学者は、晴れていれば夜な夜な観測していると思われているらしい。だが、一般にはそうではない。国立天文台の岡山天体物理学観測所188cm望遠鏡やハワイのすばる望遠鏡等で観測して研究をしている人は、年にせいぜい2-3夜とか多くても10夜程しか観測時間がもらえないことが多い。ゼロ夜の年もあるだろうし、雨が降ったらまた来年ね、ということも普通にある。
  これらの望遠鏡は全国共同利用施設であり、日本中の(外国からの応募もあるが)天文学者が利用する望遠鏡なので、観測したい場合には観測提案書を出して、それが採択されなければいけないのである。年2回の募集が普通だが、競争倍率は例えばすばる望遠鏡では4-5倍程度ある。そこらへんの大学入試より倍率が高い。(初期のすばるや現在のALMAはもっと倍率が高い。)
  提案書を審査して、よい提案を採択するというのが趣旨である。望遠鏡を使える時間は限られているので(1年最大で365夜しかない!)、この制度はやむを得ないし当然の事であろう。
  しかし、審査するのも同じ人間であり絶対間違わないというわけでもない。また、審査員の考え方や性格にも依存する。どの研究課題が重要かという判断は分かれることもあるし、またチャレンジングな観測・研究課題には消極的な人もいるだろう。悪く言えば、普通の成果が確実に期待される「良い子的提案」が採択されがちになり、ユニークな提案は採用されにくくなるかもしれない。
 
  3.8m望遠鏡では、半分の時間はこのような共同利用に供する予定となっているが、半分は京都大学で使用する予定になっている。これだと、京大の人々はふんだんな観測時間が予想され、比較的自由な観測が可能になると期待される。長期的なモニター観測だとか、自分で出した萌芽的なアイデアに基づく観測装置の開発やそれを用いた観測等に威力を発揮すると期待される。また、まだ明確に問題化されていないアイデアを試す等、新しい問題を発掘するような研究もできるだろう。特に若い院生には嬉しい望遠鏡かもしれない。このように、3.8m望遠鏡では、上記の様な共同利用観測ではカバーしがたい研究課題や教育といった面で活躍が期待され、共同利用の大きな望遠鏡とで車の両輪のような役割を果たすことになる。
 
  それにしても、観測提案書の締切1-2週間前には、毎度てんてこ舞いである。下書き原稿を何度も何度も何度も推敲し、関連論文を読み返してチェックしたり、計算し直したり、共同研究者からのコメントを入れて修正するなど、もう他の仕事はほったらかしで集中することになる。
  ちなみに、2014年8月―2015年1月の期のすばる望遠鏡の観測申込締切は3月7日正午であった。つまりこのブログの締切と重なっていたわけである。さすがにすばるの締切が終わってからこれを書いている次第である。

太田耕司




観測申込書作成中の机。
 紙に打ち出した原稿に赤入や青入したものを見ながら
 編集作業中。だんだん古い原稿が積み重なってきて、
どれが最新版かわからなくなることも。