2015年7月22日水曜日

銀河鉄道の夜

こんにちは、プロマネの栗田です。

先日大阪府立三国丘高校の生徒さん40名余りが見学に来られました。観測所には岡山文博物館もあり、そこで僕も一緒にプラネタリウムを鑑賞させていただきました。その日のプログラムは生徒が選んだ宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」でした。
物語は、「ではみなさんは、そういうふうに川だとわれたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」という先生の話しから始まるのですが、この一節は観測天文学の発展、つまりガリレオが望遠鏡を用いて天の川を星の集団だと発見した重要な出来事に関連します。恥ずかしながら僕も学部の講義のイントロで天の川の写真を見せ「みなさんこれが星の集まりだと思えますか」なんていつも話していたので、さらに物語に引き込まれてしまいました。

帰ってから原作をもう一度読み返しました。この天の川に関する描写は物語のあちこちで登場するのですが、中でもジョバンニが列車の窓から「一生けん命延びあがって、その天の川の水を、見きわめようとしましたが、はじめはどうしてもそれが、はっきりしませんでした。けれどもだんだん気をつけて見ると、そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとおって、・・」と続きます。やはりここでも天の川が一体何でできているのかという素朴な疑問を探求する姿をジョバンニを通して表現していて、おそらく宮澤賢治自身の天の川への想いが描かれていると想像されます。

中学生の時の記憶の彼方にあった名作銀河鉄道の夜を読み返してみると当時は全く感じなかった感動を覚えました。偶然なのですが、このプログラムを選んだ三国丘の生徒さんと提供してくれた博物館のみなさまにこの場を借りて感謝いたします。あと、このプラネタリウム用の作品ですが、映像もとてもきれいで、桑島法子(ほうこ)さんによる朗読も大変すばらしかったです。


2015年7月17日金曜日

観光と観望

  観測装置担当の山本です。

   2015年7月半ばにニュース番組を賑わせた天文イベントと言えば、冥王星への探査機最接近、ではないでしょうか。この探査機はアメリカ航空宇宙局(NASA)の打ち上げたニュー・ホライズンズで、2006年の打ち上げから9年半の歳月を掛けて冥王星まで到達しました。
ニュー・ホライズンズが冥王星に最接近したときの距離はおよそ1万3500kmで、これは地球の直径(1万2800km)くらいです。地球と太陽の間の距離(1天文単位といいます)が、地球の直径の1万倍くらい(1億5000万km)で、冥王星まではおよそ32天文単位なので、今回のミッションは京都から矢を射って、大阪においてある的に的中させるような、超高精度でおこなわれました。
それだけ頑張ってニュー・ホライズンズは冥王星までいって、しかし着陸や冥王星軌道にとどまることが出来ないので、通り過ぎるだけなのです。その通過中に沢山の写真を撮って観測を行っているのですが、地球とニュー・ホライズンズの通信回線がとても細いため、新しい画像を受け取るまでにとても時間がかかってしまいます。それでも、ハッブル望遠鏡を持ってしてもぼんやりとしか分からなかった冥王星の詳細な画像が得られつつあります。実は冥王星表面に巨大なハートマークが描かれている! ということがニュースになったことをご記憶の方もおられると思います。

   ハッブル望遠鏡のような、高性能の望遠鏡で観測するよりも、やはり現地に行く方が沢山の情報を得られるのは、当然の話ではあります。しかしながら、太陽系内の天体を探査にいくのでも、10年近くの時間がかかるわけですから、冥王星よりもはるかに遠く(少なくとも冥王星からさらに20万倍くらいは遠い)の天体を探査するにはやはり、望遠鏡による観測しかないのです。

   私の興味は、太陽以外の恒星周りに存在する惑星、系外惑星ですので、やはり望遠鏡で頑張るしかありません。
遠くからでも分かる事、遠くからでしか分からないこと、そういったことを積み上げて、我々の身近な疑問(地球に生命は何故生まれたのか、地球以外に生命は居ないのか)を明らかに出来たら、と思います!!







   先日左大文字の火床まで登って、京都を一眸してきました。
大学や自宅、普段生活している町々を望めました。