2014年2月28日金曜日

ブラックホールから飛び出すガス

 嶺重です。ブログでは、いつも天文研究に直接関係しないことばかり書いていますので、たまには研究の話をします。

 私の専門はブラックホール天文学です。特に、最近興味をもっているのは、ブラックホール近傍から噴き出すガス流です。
 2014年3月、京大の元大学院生の竹内駿さんが、博士の学位を取得する見込みです。彼は修士課程まで京大大学院にいましたが、その後、一般企業に就職しました。しかしながら、研究への情熱は捨てがたく、勤務の終わった深夜や週末の時間を使って天文学研究を継続していました。そして、地道なシミュレーション研究を粘り強く進め、このほど博士論文を完成させたのです。 
 彼の博士論文から、図を1枚、借りました。何やら不思議な図ですが、これは、画面の下部にたまったガス層から、まるで湯気が立つように、ガスが塊となってじわじわ飛び出すようすを表しています。なぜガスがじわじわ飛び出すかというと、下から上向きに、光の圧力が働いているからです。光の圧力がガスを上方へと押し出すとき、このようにむらむら模様ができることを、竹内さんは示したのです。このむらむら模様は、やがて塊となって、ブラックホール近傍から外に飛び出していきます。こうしてブラックホールの周囲には、ガスの雲がたくさん、うようよ飛び回っていると考えられるのです。
 ブラックホールからガスが噴き出していることが、最近わかってきました。もちろん、一旦、ブラックホールの中に入ってしまうと、なにものも外に出ていけませんから、ガスが飛び出すのはブラックホールに落ち込む直前です。ブラックホールに吸い込まれるガスの一部は、周りからエネルギーをもらって、いや奪いとって飛び出していくのです。いわば周りを踏み台にして、自分だけ生き残っているようなもの、人間社会にも似たようなことがありそうですね。


 

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