2015年5月15日金曜日

星のある風景

 宇宙や星空に何を感じるか、あるいは何を求めるか。人それぞれだと思いますが、仕事(や人間関係?)に疲れてふっとみあげた星空に癒される、ということもあるのだろうと思います。
 中高生向けの天文学入門の本を執筆する中、何かわかりやすい、それでいてインパクトのある写真がないかなと思って探していました。ふと、一枚の写真に出会ったことを思い出しました。
 少々古い話になって恐縮ですが、昨年の暮れ、長野の志賀高原ロマン美術館に秋季小企画展「時空の回廊――大西浩次・星景写真展」を見にいきました。撮影者の大西さんが直々に案内や解説をしていただくという、贅沢な鑑賞旅でした。
 その企画展の案内チラシの写真があまりにも印象的だったので、許可を得て掲載しておきます。この写真は、美術館入ってすぐの、数人入ればいっぱいになるような、こぢんまりとした部屋にありました。部屋の壁一面に戸隠のとある場所の星景(星のある風景)写真。真ん中に一本の木、背景に月、遠景に天の川の星の群れ。写真に見いるうちにどんどんそこに引き込まれ、音が消え、周りが見えなくなりました。そしてついには写真に写された宇宙と自分が一体になったような、不思議な感覚を覚えました。
 西洋の宇宙観と東洋の宇宙観は根本的に違うんだと、どこかで読みました。われわれ天文学者は宇宙を「対象」として、その現象の科学的解明に精を出しているのですが、それは西洋式の宇宙のとらえ方のようです。東洋の宇宙観は、むしろ宇宙のただ中に入り込みます。人も動物も地球も宇宙もみな一体という意識が強いんだそうです。そういえば、宮澤賢治の詩(『春と修羅』序文)にも

 わたくしという現象は/仮定された有機交流電灯の/ひとつの青い照明です。


ということばがあります。昔から好きだった宮澤賢治ですが、大西さんの写真の世界にひたりながら、科学者・芸術家の賢二の思いが少しは理解できたような気がしました。

嶺重 慎








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