2017年12月15日金曜日

惑星の多様性についてつらつら思うこと

 今、理学部3回生向けに「惑星物理学」の講義を毎週木曜日にしています。以前は「恒星物理学」の講義を担当していました。惑星と恒星、どちらも夜空に光る星ではありますが、講義の内容(というか傾向)は随分違います。

 恒星物理学は、20世紀前半にその内部構造についての基本が確立しました。基本方程式がたてられ、それを基に恒星進化計算がなされ、観測との比較研究が進み、精緻なレベルで理解が進んでいます。したがって、「恒星物理学」は、「これが基本」「ここからこんな知見が得られる」というトップダウン的な講義になります。

 一方で惑星物理学はそうはいきません。実に多様性豊かで定型がほとんどありません。恒星と惑星でどうしてそんなに違うのか。いろいろ理由があります。たとえば恒星内部でガスは、ある決まったふるまいを示しますが(専門用語で「状態方程式が決定する」といいます)、惑星内部の主成分である岩石や金属、その混合物の状態やふるまいは、複雑でそう単純には記述できません。また、太陽系惑星の場合、探査が進んでその違いがはっきりしていることも、惑星の多様性が目立つ一つの理由かもしれません。そもそも、地球と金星を比べてみても、大きさや質量はほぼ同じ、太陽からの距離もそう大きく違わないにもかかわらず、性質は随分違います。「惑星は個性だ!」とつくづく思います。

 惑星の学びでは、その世界を(人ごとでなく)いかに身近に感じるかが重要に思います。そこに旅行したらどんな気分になるだろうか、どんな風景が広がっているのだろうか、などと想像してみることは楽しみであると同時に、宇宙や天体に関する理解にもつながると(勝手に)思っています。


 幸いなことに、太陽系の惑星や衛星の画像がネットから簡単にとってこれるようになりました。添付の図は火星の風景です。いずれ人類が火星に移住したとすれば(想像してください!)、余暇にこんな場所に出かけることができるようになるかもしれません。

嶺重 慎


画像:クレーターの底に広がる砂丘
PHOTOGRAPH BY NASA, JPL, UNIVERSITY OF ARIZONA



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