2018年1月12日金曜日

昔の話

光学など担当の岩室です。

 今回は20年前の話です。
 先日、昨年大ヒットした「君の名は」が地上波初放送だったので、どんな映画かと思い見てみました。映画の内容は別として、まあ、よくある科学者的視点から気になることも色々あったのですが、空いっぱいに広がったティアマト彗星のシーンがちょっと気になりググってみました。すると、やっぱりいらっしゃいますね。このシーンを真面目に検討している方が。<こちらのページ>によると、巨大彗星からは「イオンテイル」と「ダストテイル」の2本の尾が出るので、それが描かれているようですね。彗星の見える時間帯と尾の向きも気になったのですが、こちらに関しては当初の映画の設定では彗星の軌道に無理があったようなので気にしないことにします。このシーンを見て、20年前に連続してやってきた2つの彗星を思い出した人も多かったと思います。

 まずは百武彗星ですね。<グーグルで百武彗星画像検索>すると綺麗な絵が沢山出ますが、肉眼での印象は「あれがそうかな...」程度で事前にハレー彗星並みと騒がれた割にはかなりモヤっとした感じだった記憶があります。この時、私は物理教室の助手で、上司だった舞原名誉教授(当時助教授)とともに建設中のすばる望遠鏡に取り付ける第一期観測装置を開発しており、その関係で1996年の3月下旬に2人でハワイ大に別件で立ち寄ってからアリゾナに出張しました。百武すい星はその時にハワイかアリゾナのどちらかで見たのですが、日本では空が明るくて全く見えなかった彗星が暗い空に薄っすらと見えて、舞原さんと「あれがそうかな...」と確認した記憶があります。見間違えの可能性はありますが、夜の9時頃にほぼ天頂に見えて感覚的には30°以上に尾が伸びていました。今同じチャンスがあれば必ずカメラと三脚を持って行くはずですが、その頃はその数年前に木星に衝突したシューメーカー・レヴィ彗星の件もあり、彗星はホイホイ飛んでくるような錯覚があってあまり気にしなかったのが残念です。

 群を抜いてインパクトがあったのがヘール・ボップ彗星です。<グーグルでヘール・ボップ彗星画像検索>すると、これまた綺麗な絵が沢山出ますが、これらは写真で撮ったもので肉眼ではこれほど壮大には見えません(少なくとも日本では見た記憶が無いです)。私は、大学院生時代に独自開発したソフトで新しい観測装置を設計し、舞原さんとともに実機を開発してハワイ大の2.2m望遠鏡に取り付けて何度か観測したのですが、確かその最後の観測が1997年の3月にあり、舞原さんとマウナケア山頂のハワイ大ドームで観測をしていました。観測終了直前の明け方の薄明の頃に、望遠鏡を動かしてくれるオペレータに「いい景色が見れるから外に出てみろ」と言われて観測室からドーム外壁外側の周回テラスに出たところ、目の前に正に上記グーグル画像検索に出てくるような彗星が、東の空にほぼ天頂方向に10°程度に尾を伸ばして見えていまた。通常であれば写真でしか見れないような景色が、さすがマウナケア山頂の条件の良さのおかげで薄明にも関わらず尾の状態まではっきりと肉眼で見る事ができました。この時ばかりは何でもいいからカメラを持ってこなかったことを残念に思った記憶があります(多分、使い捨てカメラでもかなりいい絵が撮れたと思います)。その後数年経ってすばるが完成した際に幾つか写真をもらったのですが、その中にすばる望遠鏡と共に写るヘール・ボップ彗星の写真もありました。Web には同じ写真が上がっていないようなので、撮影者不明ですがスキャナで取り込んで上げておきます。



 この写真は彗星が夕方の西の空に写っているので、私が見た時よりもかなり後の暗くなった状態のものであるのが残念ですが、この写真でも2本の尾が確認できますね(実はナトリウムテイルという第3の尾もこの彗星では発見されたようです)。印象としては、私が見た時は明るさも大きさもこの2~3倍あった感じです。

 これ以降巨大彗星は見ていませんが、次に見える機会があれば是非綺麗な写真を撮りたいと、「君の名は」の映画を見て思ったのでした。




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