2012年12月1日土曜日

2012年11月30日

ボードの太田です。
11月28-30日、金沢で「ガンマ線バースト研究会」が開催され、参加してきました。
ガンマ線バースト(GRB)というのは、空の一点で突然数秒間程ガンマ線で明るい天体が出現し、その後しばらくの間X線や可視で残光が見られることが多いのですが、これも急速に暗くなってしまうという現象です。そのエネルギー規模は極めて大きく、宇宙最大の爆発現象であることがわかってきています。しかし、まだ謎だらけの天体現象です。そういうわけで、例年、ガンマ線天文学者、X線天文学者、可視光天文学者、電波天文学者、理論天文学者、あるいは研究対象としては、X線星、超新星、銀河、宇宙論、高エネルギー等の非常に広い分野の研究者が一堂に会して、研究発表や議論を行う会となっています。今年は、新たに重力波天文学の研究者も参加しました。日本の本格的重力波望遠鏡KAGRAの建設が今年から始まり、2017年頃の稼働を目指しているのですが、ガンマ線バーストが重力波天体の有力候補になっているからです。KAGRA完成後には年間1-10個程の重力波天体が検出されると期待されています。むろんこれまで重力波の直接検出例はなく、ついに重力波天文学の幕開けと期待されています。重力波天体の有力候補の一つがガンマ線バーストの中でもショートガンマ線バーストと呼ばれるもので、中性子星の連星が合体したものだろうと考えられています。
私は、専門は銀河なのですが、故あって重力波天体の電磁波対応天体を検出してその性質を探るという、プロジェクトに参加しています。重力波望遠鏡では、重力波天体の位置があまり正確にわからない上、その距離を出すことも困難、そもそも検出される信号も非常に弱いと予想されるので、電磁波やニュートリノで対応天体を検出することによってその検出を確実にすると共にその性質に迫る必要があります。このようなアプローチは近年「マルチメッセンジャー天文学」と言われていますが、多くの研究者の共同のもとで重力波天文学を開拓しようというものです。
私の役割は、岡山の188cm望遠鏡、将来的には3.8m望遠鏡を用いて、ガンマ線バースト(特にショートガンマ線バースト)の即時可視面分光観測を行い、残光のスペクトルから天体の物理状態や距離を出そうというものです。現在そのための観測装置の概念設計を行っており、来年度再来年度に製作をして重力波望遠鏡の稼働に間に合わせようという計画です。ショートガンマ線バーストの残光の可視スペクトルがまだないこともあり、何がどう見えるのかよくわからないのですが、研究会では、理論モデルから、予想される可視域で光るメカニズム、可視の光度、スペクトル等の情報を得ることができて大変有用でした。また、重力波望遠鏡が空に対してどんな感度をもつのかというのも初めて知りました。将来、3.8m望遠鏡で重力波天文学幕開けの一翼を担うことができればと思います。
写真は、研究会の様子。高エネルギー加速器研究機構の井岡氏がGRBと重力波の関係についてレビューをするところです。

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