2015年1月9日金曜日

たまには観測!

プロの天文学者は、晴れていれば夜な夜な観測していると思われているらしい。だが、一般にはそうではない。しかし、今回はそうである。とはいえ、夜な夜なではない。(なんのこっちゃ)
 
3.8m望遠鏡を使って重力波天体の可視分光観測に挑もうという計画がある。本ブログでも紹介したガンマ線バーストのうち、ガンマ線で輝く時間が短い「ショートガンマ線バースト」と呼ばれる天体は有力な重力波天体候補であると考えられている。ガンマ線バースト の検出位置精度はあまりよくない。しかし、X線でその残光が検出されれば数秒角の精度で位置が決まる。(数秒角と言われてもピンとこないかもしれないが、例えば満月の直径は角度で30分角なのでその1/6030秒角になる。)とはいえ、数秒角でも一般的な天体の分光器には広すぎる。そこで、例えば30秒角の視野内を同時に分光観測できる装置の登場となる。これがあれば、正確にはどこにいるのかわからないターゲットの分光もできてしまう。こういう装置を面分光装置という。

我々のグループでは3.8m用の面分光装置を開発しており、まずは国立天文台岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡への装着を目指している。我々の観測装置は主に3つのパートからできている。望遠鏡の焦点面に、光ファイバー127本を束ねたファイバーバンドルが設置され、これが入口のパート。これらの光ファイバーが、ずずずいーーと20m以上のびている(ファイバーパート)。そしてその先は、望遠鏡ドーム床においてある分光器に入る。分光器パートは既存だけどファイバー用に少々改造が施されている。このあたりの配置については写真参照。

そういうわけで、この半年の間に2回岡山天体物理観測所に行って188cm望遠鏡に面分光装置を装着して試験観測を行ってきた(10月半ばと12月末)。とはいえ、1回の観測では2晩程なので、夜な夜なではない。京大の研究員の松林君、観測所の神戸さんや筒井さん達と観測装置の取り付け作業等を行ったり、分光器の調整をしたりした(これは昼間の作業で数日かかった)。1010日夜には明るい星の光を分光することに成功し、無事ファーストライトを迎えた(さすが特異日!)。よく晴れれば標準星を観測して装置の感度を調べたり、暗い天体の観測を行って計算通りの感度が達成されているか調べるためのデータを取得する。また面分光なのでひろがった天体も観測して、装置の空での方向をチェックしたりする。それ以外にも、天体の導入精度や観測手順確立のためのテスト観測を行う必要もある。その他、観測データを科学的に意味のあるデータにするためには、色々なデータを取得しないといけない。例えば、波長較正といって、波長のわかっている光を面分光装置に入れて、CCDのどこが波長何μmに対応するか対応関係をつけたり、その安定性をチェックしたりする。こういった作業は必ずしも夜でなくてもよいので、もったいないから昼に観測(?)を行うことになる。
と、いうわけで、プロの天文学者は時に昼夜を問わず観測をする、のであった。


太田@20141231





上:188cm望遠鏡と面分光装置。ファイバーバンドルは望遠鏡お尻の黄色の枠内に搭載されているが、写真では小さくて見えない。ここから光ファイバーが出て、望遠鏡背面、左に見えるピア(コンクリートの斜柱)を伝って、ピアの向こう側の分光器に入る。

下:ドーム床におかれた分光器(黄色の枠に囲まれた青い箱状のもの)。上から黒いチューブが垂れ下がっているが、この中に光ファイバーが入っていて、チューブが分光器中に入っていく。




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