2015年9月7日月曜日

天文台長の柴田です。

 2015825日(火)に、世界的な音楽家・喜多郎さんとのコラボDVD「古事記と宇宙」の発売プレスリリースおよび試写会を開催しました。その経緯やうら話を少し紹介したいと思います。
 2012521日に京都で282年ぶりの金環日食がありました。喜多郎さんとお会いしたのは、その年の27日でした。ジャーナリストの玉重佐知子さんのご紹介で、喜多郎さんを京都大学花山天文台にお招きしてご案内したのです。花山天文台の歴史的建物や日本最古の現役望遠鏡であるザートリウス望遠鏡によるリアルタイムHα太陽像などを見ながら、会話がどんどん盛り上がり、喜多郎さんは大の天文宇宙ファンであることがわかりました。そして金環日食の日に何かコラボをしましょう、ということになりました。
喜多郎さんのお名前は、NHKシルクロードの音楽の作曲家として、私も名前は聞いたことがあったのですが、シルクロードは見たことがなく、喜多郎さんの音楽は聞いたことがありませんでした。家に帰ってGoogleで検索して調べたら、何と、グラミー賞を受賞されている世界的な音楽家と知って、びっくり仰天。さらに調べると「古事記」という有名な音楽を作曲されている、「これは素晴らしい!」となったのです。
実はその年2012年は、日本神話の「古事記」ができてちょうど1300年の節目の年ということで、11月に「古事記と宇宙」というシンポジウムを、古事記のふるさとの大和郡山市で開催予定でした。私は宇宙ユニットの磯部洋明君と共に、そのシンポジウムの世話人をしていたので、シンポジウムの際に喜多郎さんをお招きして「古事記」を生演奏していただくのはちょうど良いかもしれない、と思ったのです。それで早速Amazonに喜多郎作「古事記」のCDを注文しました。3日ほどたったら送られてきて、早速、大学との行き帰りの車の中で聴き始めました。そしたら、「古事記」の音楽には感動の連続だったのです。
最初の楽章「始まり」はまさに天地開闢にふさわしい荘厳な音楽でしたし、ヤマタノオロチを表現した「おろち」はまさに怪物が暴れまわるさまを良く表現したダイナミックな音楽でした。この「おろち」を聞きながら、これは「太陽フレアだ!」と思いました。運転中の脳裏には、「おろち」の音楽に合わせてフレア爆発やプロミネンス噴出、X線で見た太陽コロナなどが「暴れまわる様子」が次々に浮かんで来るのです。それで、実際に喜多郎さんの音楽「古事記」に合わせて、太陽フレアの映像などを同時上映する企画をすれば、楽しいだろうな、それを5月の金環日食の日の日食直後に京大時計台で開催予定の日食講演会の際にやり、かつ、同じものを11月の「古事記と宇宙」シンポジウムで喜多郎さんをお招きしてやれば、一石二鳥かもしれない、というアイデアが出てきたのです。
 このアイデアを、京大総合博物館の館長をされていた大野照文先生に相談しましたら、「それはおもしろい!」とすぐに賛同してくださいました。大野先生とは、金環日食の日に、農学部グラウンドで市民の人々を集めた日食観察会の開催、および、その直後の時計台ホールでの日食講演会の開催(博物館と天文台で共催)するということで、色々ご協力いただいていた関係でした。それでさらに、喜多郎さんにもお願いしましたら、この企画と大和郡山市での生演奏もご快諾くださり、企画がスタートしました。
 こうして出来たのが、「古事記と宇宙:音楽と宇宙映像の融合の試み」です。金環日食の日に、喜多郎さんと一緒に金環日食を楽しんだあと、京都大学時計台ホールで喜多郎さん作の楽曲「古事記」に合わせて、宇宙の映像や写真を同時上映する試みをしたのです。
このときはしろうと作りの編集でしたので、その後、磯部君のアイデアで、(学内共同研究として)京都大学学術情報メディアセンターの元木環さん、岩倉正司さん、花山天文台の西田圭佑さんの助けを得ることができるようになり、編集を本格的にやり直した結果、すばらしいコンテンツが出来ました。201211月に、古事記のふるさと大和郡山市で開かれた「古事記と宇宙」シンポジウムでは、喜多郎さんの生演奏に続く形で、本コンテンツを上映しました。その内容を基本にして多少の編集改訂を行い、最後の「黎明」部分については国際版へ大幅改訂してできたのが、このほど発売になったDVD「古事記と宇宙」です。 
 DVDの内容は、
1. 「太始 Hajimari(5:33) 宇宙初期の大規模構造形成と銀河形成シミュレーション
2. 「創造 Sozo(3:39) 太陽系内の惑星と衛星
3. 「恋慕 Koi(6:31) 天の川、星団、星雲、銀河
4. 「大蛇 Orochi(7:07) 太陽フレア、プロミネンス噴出、X線で見たコロナ
5. 「嘆 Nageki(5:48) オーロラ
6. 「饗宴 Matsuri(9:01) 日食、コロナ、プロミネンス、彩層
7. 「黎明 Reimei(8:43) 世界の宇宙学の歴史と未来
というもので、全編鑑賞すると天文学入門になるように、映像や画像が選ばれています。
 私は3年前から、「大蛇(おろち)」や「恋慕」を、小学校の出前授業や市民講演会で活用しています。音楽なしの映像・画像紹介よりずっと聴衆の方々は楽しんでくれます。それどころか、最近は国際会議でも活用しています。つい先日(810日)、国際天文学連合総会がハワイで開催されたとき、「太陽フレアと恒星フレア」のシンポジウムの plenary talk を頼まれたのですが、講演時間が1時間以上ありましたので、途中で息抜きのため「おろち」(7分間)を上映しました。上映が終わった直後に、Did you enjoy ? と聞きましたら、講演途中なのに拍手喝采となって、びっくり。感動の瞬間でした。
 なお、発売元のDIAAからも以下のプレスリリースが出ており、多数購入希望の方は、そこに直接連絡されることをおすすめします。1セットであれば、アマゾンか、京大博物館、京大生協のショップで購入可能です。
 
PS: 10月24日には、喜多郎さんを再びお招きして、第3回花山天文台野外コンサート「月と音の夕べ」が開催されます。ふるってご参加ください。



DVD「古事記と宇宙」(定価3800円(税抜き))とともに、
柴田と喜多郎さん
2015825日、記者発表の際、京大イノベーション棟5階にて)

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