今日は五山の送り火である。大文字山の大の字の一部に白いテントが張られ、遠目にもいつもと雰囲気が違う。銀閣寺門前では護摩木に願を書く人が群れ、午前中には大勢の人が山に上って行く。が、今回は、天文学の話をする。
2016年3月のブログで、「ALMAでは採択された観測課題を申請者本人が観測することはない。観測所が責任をもって観測を実施してくれるのである。」そして「ALMAでは、観測終了後のデータ処理までしてくれるのである。」と書いた。確かにそうなのだが、ALMAに採択された観測申し込みには3段階ある。グレードAが最高位で、これで採択されると、最優先課題として観測が実行される。気象条件などでその年(サイクル)に観測が実施できなくても翌年(次のサイクル)に持ち越してもらえる。グレードBはこれに次ぐ優先課題であるが、翌年への持ち越しはない。この下にグレードCがあって、グレードAやBの課題が気象条件などで観測できないとか、そもそも観測天体がないといった空き時間を利用して観測を行うというものである。従って、観測が実施される保証もない。Filler(埋草)とも呼ばれ、運がよければ観測が実施される。
さて、この2017年7月半ばに、ALMAから「Dear Kouji Ohta, This is a notification for
project 2015.1.01129.S, PI: Kouji Ohta.」というメールが来た。一瞬何のメールなのか飲み込めなかったのであるが、2015年4月にALMAに申請していた観測課題のデータが用意できたというお知らせらしい。この観測課題は2015年8月にグレードCで採択されたもので、2016年2月頃には「観測できるかもしれないので、観測諸元を指定したファイルを準備せよ」という指令が来た。これは、どっかに隙間時間ができたら観測するからその観測の諸元(例えば1回の積分時間、分光器の詳細設定等々)を最終的に決めて、ファイルとして作成し、ALMAに送れという指令である。観測される可能性があるので、喜んで準備して送り、ALMA側でも設定をチェックしてもらい、少しやり取りがあったのを思い出した。ところが、その後何の音沙汰もなくなったので、結局隙間時間はできなかったのだろうと思って、諦めていた。1年たった2017年2月頃まで何事もなく、さすがにサイクルをまたがることはないので、すっかり(?)忘れてしまっていた。そしてそれから約半年後に急にデータの準備ができたという知らせが来たので、「?」となったという次第である。後になって考えると、最近ALMAでは取得できたデータの処理が追いつかずデータ配信が滞る状況があると聞くのでそのせいかもしれないと思い至ったが、今回の理由は知らない。
数日後にデータのありかを示すURLが送られてきて、これを取得した。大きなデータであり、1日近い転送時間がかかったが、なんとかダウロードして、その後CASAというソフトを使って簡易的にデータの様子を眺めたところ、所定の周波数に信号が見えていた(図)。しかも、予想とは少し違う強度分布を示していたので、なんか面白い結果になっているのかもしれない。解析はまだ準備中であるが、楽しみである。「観測しない観測」だと、観測データは忘れた頃にやってくることがある。まるで棚ボタ気分である(七夕ではない)。果報は寝て待てということか。
太田 2017年8月16日
簡易画像。見ても何かわからないかもしれないけど、赤っぽい部分が信号に対応する。
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