2020年2月19日水曜日

マルチメッセンジャー天文学事始:その後の重力波2


以前、20194月から11月の間の重力波天体追っかけ記を書いたが、その後の状況を簡単に記す。あれから約3ヶ月になるが、状況は似たような感じである。ブラックホール同士の連星合体は、日常的にフツーに起こっている。たまに、中性子星同士の合体やマスギャップイベントもでるが、発生位置の方向が変わったり、撤回もあるという状況。バースト型もたまに出現し、すわ超新星かと浮き足立つ。S200114f(2020114日のイベント)はバースト型で、しかもオリオン座方向で起こった可能性もなくもなく(下図)、「ベテルギウスついに爆発か?!」と思った人もいる。ここ半年ばかり、報道等でベテルギウス近々爆発かと騒いでいるので、という訳でもないだろうが。この時、J-GEMメンバーの中には、「ベテルギウス今夜も見えている」と、目視でモニターする人もいた(笑)。ベテルギウスならスーパーカミオカンデでニュートリノがバキバキに検出されるはずだが(実際にはサチレーションすると聞くが)、そういう噂も耳にせず、謎のままである。と、いうことでなかなか電磁波対応天体の検出の再来がない。

 2月に甲南大学で国際研究会が開催された。この中で面白かった話を少し。

その1:海外でも電磁波対応天体探査観測を行なっているチームがあるが、やはり電磁波対応天体探しには苦労しているようで、重力波到来の確率が高い方向を観測していたら、そっちの確率は非常に低くなり、別の方向の確率が高くなって、そっちに望遠鏡を向けて観測、といった我々と同様の苦労をしていることがよくわかって、安心(?)した。(安心してどうする!)

その2:連星ブラックホールはどうやってできるのか?合体するとどんな電磁波が期待されるのか?そういった最近のモデルの話も期待していたが、なるほどと思うものはなかった。一つびっくりしたのは、連星ブラックホールのモデルとして、重い星の中に二つのブラックホールが連星をなし、それが合体すると、連星ブラックホールの合体イベントになり、かつ電磁波では、超新星爆発・ガンマ線バースト(?)のように見えるというモデルがあるらしいと知ったことである。170817の際に、ガンマ線検出を説明するためのモデルとして、星の中に星があるという発想をしたとか。「なんで星の中に二つもブラックホールがあんねん!」と突っ込んでしまう奇抜なアイデアである。電磁波対応天体の探査には、信頼できるモデルによる予言があると助かるのだが、この説は、うーん、と、いう感じだなあ・・・

 と、いう日々が相変わらず続いている。   


太田記

 

S200114fイベントの重力波到来方向の確率分布(全天)
(Jan 14, 2020 02:18:50 UTC)

5h30m 10° あたりの楕円の領域がオリオン座方向。
ベテルギウスはわずかに楕円の外だが、
確率分布なので、確率0という訳ではない。








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