2013年7月12日金曜日

ガンマ線バーストと連携観測


ボードの太田です。期せずして前回の吉田氏によるブログがガンマ線バーストの話でしたが、今回もガンマ線バーストの話題です。
 
一昨年度より、大学間連携なるプロジェクトを推進していまして、日本各地の大学或いは公共天文台の中小口径望遠鏡(だいたいは1mちょっと程度)そして海外に設置されている日本の大学が持つ中小口径望遠鏡でネットワークを形成して観測を行っています。このような連携を組んでおけば、ガンマ線バーストのような天体が突然出現しても、日本のどこそこ地方は雨で観測できなくても、別の地方では観測可能かもしれません。また、地球上の経度をある程度押さえて観測体制を築いておけば、いつでも観測可能だし、モニター観測も可能になります。更に、ある望遠鏡では、可視の撮像を行って、ある望遠鏡では近赤外線撮像を行い、そしてさらに別の望遠鏡ではスペクトルを撮るといった多機能な観測も可能になります。このような協力体制を築くことによって、研究の効率や能力が格段によくなって、これまで単独の天文台では不可能だった研究が可能になります。しかも、観測手段等の教育も連携して行う事も可能になってきます。大学間連携によって、既に、超新星や活動銀河核等で連携観測の成果がでてきています。

 さて、201366日。66日は「雨ざーざー降ってきて」の日ですが、コッペパンではなくて、ガンマ線バーストが出現しました。大学間連携で、それとばかりに観測が行われたわけですが、このうち、名古屋大学の南アフリカの望遠鏡が、近赤外線で明るい残光を検出しました。非常に明るかったので、私なんぞは近くのガンマ線バーストだろうとタカをくくっていたのですが、やがて、赤方偏移が6くらい、つまり127億光年位という報告がでてきました。(この結果は残念ながら外国の望遠鏡がレポートしました。)

 このくらい遠いガンマ線バーストはこれまでにもあったので、それ自体は驚くことではないのですが、遠さのわりにはみかけの明るさが並はずれて明るいのでびっくり仰天したわけです。そこで、すばる望遠鏡で追究分光観測をせねばならないのではないかということで、今度は、すばるのガンマ線バーストチームに、「観測しませんか」というメールを投げて、その晩のうちに可視分光観測を実行することになりました。その結果、非常に質のよいスペクトルが取れました。こんなに遠い天体で、こんなに良質のスペクトルをとることは普通できません。ガンマ線バーストならではの観測データです。普段暗い銀河を相手にしている私は、並はずれてきれいなスペクトルを見て感激した次第です。(実は感激の背景には語るも涙(?)の個人的な話があるのですがそれは省略します。)すばるガンマ線バーストチームでは慎重にしかし大急ぎでデータ処理解析し、データのモデル解析を行いました。この際、上記南アフリカ天文台で得られた観測結果も大いに役にたちました。このすばるによる観測結果から、宇宙の再電離問題に(多少大げさに言うと)人類史上初の非常に大きな一石を投じることができそうになってきています。これを書いている時点では、まだ、内容の詳細やスペクトルを見せるわけにはいきませんので、ご容赦ください。

 近年このような連携的観測で、科学的成果が出てくるケースが多くなってきているような気がします。3.8m望遠鏡は大学間連携の中核として活躍することが期待されています。是非早く完成させて、こういったドキドキものの観測で大いに活躍してもらいたいものです。

0 件のコメント:

コメントを投稿