2013年12月6日金曜日

二百分の一の授賞


 先日、毎日出版文化賞の授賞式に行ってきました。

-えっ、何か著書が受賞されたのですか?

 答えは、YES/NO、そうともいえますし、そうでもないともいえます。

-えええっ、どういう意味ですか?

 今回、自然科学部門に、岩波科学ライブラリーというシリーズが受賞しました。私は恥ずかしながらその中の一冊を執筆しました。20年間で200冊出ていますので、単純に割り算すると、1/200だけ受賞したことになります。通常、こうした賞は、一冊の本(あるいはシリーズの本)が対象ですから、今回の受賞は、破格の扱いということになります。しかし、1/200でも嬉しいです。

-受賞式はいかがでしたか。

 いろいろ楽しい思いをしました。何よりも、受賞者のスピーチです。一流といわれる人はかくあるべきか、ということがよくわかりました。みなさんの、執筆にかける共通した思いは、「渾身」というひとことで表されるでしょうか。うんうんうめくような思いで、極限までに自分を研ぎ澄ませ、魂を絞りつくすようにして作品を生み出し・・・、それでいて、人を思いやる温かさに満ちあふれておられるのです。とても感動いたしました。まさに、芳醇な赤ワインをいただいた後に残るような余韻が、スピーチ後も会場に漂っていたのを実感し、まことに稀有な体験でした。

-ところで、著書の内容は?

 私が書いたのは、「ブラックホールを見る!」という2008年に出した本です。ブラックホールの常識は、「何でも吸い込む怖い穴」ですが、このブラックホール観が、今世紀に入って、がらりと変革をとげつつあります。すなわち、宇宙最大のエネルギー源としての働きが、にわかにクローズアップされてきたのです。3.8m望遠鏡計画も、まさにそのようなブラックホールの働きの一端をとらえるべく建設されています。早く完成させて、皆さまがたに、ブラックホール活動の観測について、ご報告したいものです。

 

(嶺重 慎)


 

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