いやー、うちの大学院生・木邑真理子さんがやってくれちゃいました!
何をやってくれたかってーと、ブラックホールですよ、ブラックホール!
ブラックホールが目で見えるって論文を、今年早々、1月7日発売の雑誌
Nature に出してくれました!
あ、興奮して申し遅れました、広報担当の野上です。
馬鹿言っちゃいけない、ブラックホールは光さえ出てこられないから黒い穴・ブラックホールちゃいますのん?と思ったあなた!
そのとーり!あなたは正しい。
じゃあ何を観測したかというと、ブラックホールにものが落ち込むときに、瞬くがごとく、あるいは断末魔の叫び声を上げるがごとく、バタバタと明るさを変化させます。これを観測しました。ブラックホールのすぐ近くというのは、ものすごい重力がかかり、温度が1千万度以上にもなるような、異常な空間になっています。こんな高温の物質が出す光はX線、もしくはガンマ線と相場が決まっていて、実際ブラックホール(近傍領域)の知見の多くはX線での観測によって得られてきました。このバタバタもX線ではこれまでに観測例があり、理論的にも、やたらと大量にものが落ち込んで、ある一定の条件を満たしたときのみ起こりうる現象だろうと理解されてきました。
しかし今回、ブラックホール連星はくちょう座V404星が26年ぶりに明るくなったということで、京大のグループが世界中に観測を呼びかけ、アマチュアも含む多くの方が可視光での観測に参加してくれました。最終的に、26カ国に及ぶ35本の望遠鏡での観測になりました。もちろんX線での観測も、これは我々の呼びかけに応じて行われたというわけではありませんが、行われました。
そのデータを突き合わせて解析したところ、以下のことなどが観測的に明らかになりました。
1)X線でも可視光でも様々な時間尺度で様々な振幅で明るさの変動が観測される。
2)X線での変動が、ほぼ同じような形で、しかし約1分遅れで可視光で観測される。
3)これまでX線でしか観測されたことのない、数分から数時間の時間尺度で繰り返される変動現象が、可視光で観測される。
4)その繰り返し変動は、それほどたくさんものが落ち込んでいない(これまで考えられていた量の10分の1以下の)ときでも起こる。
特に2)3)のことは、ブラックホール周辺でどのようなことが起こっているのか、可視光でもきちんと観測できることを示しています。また4)のことは、ブラックホールはとかく大量のものが落ち込むときに変なことが起こる、と考えられてきたのですが、そんなに極端なときでなくてもやっぱりブラックホールは変な天体であるという、研究者にある種の意識改革を促すことでした。
まあ物理的なことはさておき、今回のブラックホールの瞬き(あるいはブラックホールに落ち込むものの断末魔の叫び)は、目で見える光で11等くらいの明るさの時にも観測されました。研究データとしては、CCDカメラで写真を撮ってその明るさをデジタルに測って記録する必要がありますが、これは20cmくらいの口径の望遠鏡を使えば、まさに「目で見る」ことができる明るさです。実際、目で見た!という観測者の報告が観測者のメーリングリスト上に流れたりもしました。
ブラックホール天体は数が少なく、またこのように明るくなることはとても稀(ブラックホール連星がこんなにきちんと観測できるほど明るくなったのは、全ての天体を合わせても10年ぶり)なのですが、次の機会には是非皆さんも見る、あるいは観測することにトライしてください。
その時には我らが3.8m望遠鏡も、ブラックホールの謎を解明すべくガンガン観測しているはずです。
最後に、ブラックホールの瞬きがわかりやすいように、CCD画像をつなげた動画へのリンクを付けておきます。雑誌NatureのHPで公開されているものです。
また、この成果はたくさん新聞、ニュース、web上の記事で取り上げられましたが、その中で京大の広報のHPへのリンクは以下のものです。
木邑さん自身のHPでも解説記事を掲載しています。
Illstration: 小野英理 |
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