2016年3月11日金曜日

「ブラックホール天文学」という世界

 本を出しました(2016年1月刊行)。今回の本は、一般向けではなくて、大学に入って天文学の研究を始めようとしている学部~大学院学生向けの教科書『ブラックホール天文学』(日本評論社)です。
 本書のテーマは、「宇宙のエンジン:ブラックホール」です。ブラックホールは宇宙に多大なエネルギーを「供給する」エンジンということです。「吸い取る」ではなく「供給する」です。これは「ブラックホールとは、何でも吸い込む怖い穴」という常識に反しますね。なぜそういうことになるのでしょうか? それが本書のテーマです。
 理屈は難しいのでここには記しませんが、ただ、「ものごとには両面がある」
という「人生の知恵」のようなものがここでも通用する、とだけコメントしておきましょう。「頼りがいがある人」と思ったら、じつは「自己主張の強いだけの人」だったとか、「優柔不断でいらいらさせる人」と思ったら、「いろいろな立場を理解し面倒みてくれる苦労人」であったとか、そのように人を多面的にとらえる智恵に通じるものがあります。
 さて、私は本を書くとき、とくに理系の難しい本を書くとき、できる限り身近な例にたとえて解説するように心がけています(まだまだ未熟ですが)。すると、天体現象においても、人間社会と共通することが見えてきます。三角関係が好例です。人間社会で三角関係は不安定の象徴ですが、三つの星の集まりもやはり不安定です。互いに同じ距離を保ちながら回転しているうちはいいのですが、中の二つの星が接近するとバランスが崩れ、一気に破滅に向かいます。3つ以上の星の集まりは不安定で長続きしないのです。
  しかし、太陽の周りを多くの惑星が何十億年も周り続けています。不思議です。じつに不思議です。それだから地球上で生命が生まれ、進化し、私たちがここにいるのですが、やっぱり不思議です。そう思いませんか?

(嶺重 慎)



『ブラックホール天文学』(日本評論社)




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