2014年7月11日金曜日

天文台長の柴田です。

先日、620日~29日に英国とチェコに海外出張してきました。 英国天文学会の plenary talk に招待されたのと、チェコ・プラハで Prof Z. Svestka 追悼の国際会議 Solar and Stellar Flares の会議(私もSOCの一人)に出るのが主目的の海外出張です。ともにスーパーフレアが目玉の話題です。折角なので、ついでに英国のグリニッジ天文台を見学してきました。ここでは、グリニッジ天文台訪問の話を少し紹介します。
 
  グリニッジ天文台は、ご存知のように、経度0の基準、世界時の基準となる、世界で最も有名な天文台です。ところが、研究の第一線からしりぞいているらしい、今はどうなっているのだろう?というのが最近の私の関心でした。調べると、博物館・市民天文台(国立海洋博物館national maritime museum の一部) として多くの観光客がやってくる観光名所となっているようなのです。花山天文台の未来を考えるためには、ぜひとも見学・視察してその運営のやり方を参考にする必要がある、というわけで行ってきました。
 ロンドンの中心に行き、船でテムズ川を下りグリニッジに到着しました。途中の船からの眺めは抜群。ロンドン全体の様子が良くわかりました。グリニッジ天文台の最寄の港は、かつて大英帝国の多くの船が航海の後、ここにやってきた港なのです。航海にとって天文の知識は安全航海のための必須の知識でした。だから天文学は実用学問であり、「天文学者」は偉かったのです。だから英国では Astronomer Royalという官職があります。過去には、ハレー彗星のEdmond Halleyが第2代(1720-1742)、電波天文学でノーベル賞を受賞したMartin Ryle12代(1972–1982)のAstronomer Royalでした。現在この職についているのはケンブリッジの理論天文学者 Martin Rees (1995present)です。
グリニッジ天文台は小高い丘の上にあります。ロンドンの街の眺めが素晴らしい。入場料は7ポンド(~1200円)。入ってすぐのところで人々が並んでいるので何があるのだろう?と、たどっていくと、prime meridian (経度0の線=本初子午線)が地面に書いてあり、本初子午線記念碑の前で、それを人々がまたいで写真を撮るのを待っていました(写真参照)。それが人気らしい。私は残念ながら時間がないのでパスしました。
グリニッジ天文台には、昔ながらのフラムスティード初代天文台長が住んでいた建物、Meridian Building(子午線館;子午環(これは花山天文台にもあります)や四分儀、さまざまな種類の時計が展示)28インチ(71cm)望遠鏡ドームがあるほか、最新のプラネタリウムやミュージアム(天文学の歴史や最先端の天文学の成果を紹介)もありました。
 ミュージアムでは、天文学の歴史の展示コーナーのところに
1054  Chinese and Japanese astronomers note a new star flaring up in Taurus.
The remains are now identified as the Crab Nebula.
と書いてあったので、ちょっと嬉しくなりました。(欧米人は意外と知らないので)
 28インチ望遠鏡ドームの壁には観望会の案内が貼ってあり、見ると参加費が結構高いのに驚きました。2時間でプラネタリウム付ですが、大人一人16ポンド(~2780円)、会員は14ポンド(~2400円)、子供は12ポンド(~2100円)。ちなみに、NPO花山星空ネットワークでは、大人1300円、子供700円、NPO会員1000円、で観望会をやっています。英国ではこの倍の値段でやっているのか!というのが衝撃でした。
 立派なみやげものショップが2箇所もあり、さらに軽食が取れるカフェもあり、半日たっぷり楽しめるところでした。
 
   10年後には、岡山3.8m望遠鏡が世界の最先端の研究を牽引する傍ら、花山天文台はグリニッジ天文台のように世界中から観光客が集まる観光名所(かつ教育普及と文化発信の拠点)になっている、というのが、私の夢です。
(2014年7月5日)





                グリニッジ天文台の Meridian Building(右図)。
                 人々がprime meridianをまたいで記念写真を撮る
                (左下図)ため、並んで待っている。
                                             (2014621日)



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