2013年1月4日金曜日

新年のご挨拶


SARIFの評議員、附属天文台長の柴田です。

あけましておめでとうございます。

昨年は、京大天文台恒星研究グループの「太陽型星のスーパーフレア」の研究成果がNatureに出版され、大いに盛り上がりました。スーパーフレアというのは、太陽で起きている最大級のフレア(太陽面爆発)の10倍以上のエネルギーを解放する爆発現象です。通常の大フレアでも、人工衛星の故障、通信障害、停電などの被害が起きますから、スーパーフレアがもし太陽で起きたら、地球規模の社会インフラ(通信、電力、交通)の障害など大災害が起きると考えられます。

これまでは、スーパーフレアは若い星や近接連星系、ホットジュピター(星近くの木星くらいの巨大惑星)をもつ星、などでしか起こらない、つまり我々の太陽では起こらない、と信じられていました。ところが、太陽と良く似た星(太陽型星)を8万個、ケプラー探査機を用いて調べましたら、何と、148個の太陽型星で365回のスーパーフレアを発見したのです。

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/120517_1.htm

しかもこれらの星にはホットジュピターを持つ星が一つもなかったので、スーパーフレアはホットジュピターがなくても起きる、つまり、我々の太陽でも起こる可能性がある、ということになったのです。ただし、発生頻度は、最大級の太陽フレアの100倍~1000倍のスーパーフレアの場合800年~5000年に一度という程度ですので、すぐに心配することはありませんが、一昨年の東日本大震災の大地震が1000年に一度くらいでしたから、これは遠い未来の話ではなくて、現在の問題としてとらえるべきだと思っています。

もし太陽でスーパーフレアが本当に起こると大変なことになるので、少しでも可能性が否定できないならその対策・準備が必要です。そのためには、やはり、太陽に良く似た星をもっと時間をかけて観測し、スーパーフレアを起こした太陽型星はどれくらい太陽と似ているのか、スーパーフレアの発生条件は何か、前兆現象は何か、など、明らかにする必要があります。太陽型星の詳しい長期観測が必要です。

実はこういう観測をするのに、3.8m望遠鏡は世界で最も適しています。長期にわたり観測日数を多くとって分光観測ができるし、また、突然発生したスーパーフレアをいち早く詳細に分光観測することも可能です。ぜひ、早く3.8m望遠鏡を完成させて観測を開始し、太陽型星のスーパーフレアを解明して、未来の人類社会の安全に貢献したいと思います。

一方、太陽型星の活動の観測は過去の太陽活動を解明する上でも重要です。太陽型スーパーフレア星の観測から、「太陽(恒星)活動は地球(惑星)環境にいかなる変動を与えたのか?」、「太陽(恒星)は生命の進化にどんな影響を与えたのか?」、「なぜ我々は生まれたのか?」という疑問を解明するためのヒントすら得られる可能性があるのです。

思い起こせば、50年以上前、私が小学校に入ったころ、毎日「自分はなぜここにいるのか」という疑問ばかり考えていました。結局、この子供のときの疑問の答えが知りたくて、宇宙の研究者になったのですが、ついにその疑問に私なりのアプローチで迫れるようになって、ワクワクしています。しかも、単に過去の謎が解明できるだけでなく、「人類の未来」の災害を軽減することにも貢献できる、ということで、恐ろしい話の割にはワクワクしています。このワクワク感を皆さんと共有できれば幸いです。

今年もよろしくお願いします。

201212
 
 

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