リーダの長田です。
書くネタを考え考え、帯に短しタスキに長しと思い悩みつつ小田嶋さんという人のコラムを見ていたら、「ヘタに検索しに行くと、不必要な情報や他人の考えに構想を傷つけられることがあって、それは原稿を書く人間にとって大変に厄介な展開なのだぞ」とあり、「自分の(拙劣であるかもしれない)アイディアに、あくまでも拘泥し続けるエゴの強さ」が大事だとさとされ、その言葉をかみしめているところです。そこで、全く勝手な意見を述べるんですが、、、
昨夜のニュースで鈴木キャスターが「役に立ちません、と、あんなにもハッキリ言われてしまうと・・・」と美しく微笑んでいましたが、113番目の元素を合成したからといって、もちろんそれが近い将来に新薬になるわけでも経済の活性化につながるわけでもなさそうです。
ただ、私のような人間はどうしてもその後に「とは言っても・・・」と、実は基礎科学が将来どれだけ役に立つ可能性を秘めているかと付け足してしまいたくなるのですが、ここのところ老人力がついたのか、そこで潔く終わってしまうのが良いのではないかと、最近は勝手に思っているのです。
先日、一般向けの講演で重力波の検出の話をした際に、とても遠慮がちではあるもののやはり「重力波って何に役立つのですか」という質問がありました。私は電磁波とのアナロジーでずっと話をしていたので、作り話らしいともことわりつつ、150年あまり前にファラデーの電磁誘導の実験が役に立つのかと批判した人に向かって「電気にはそのうち税金をかけるようになりますよ」「まさか」という会話が交わされたとのエピソードがある、と言いました。
英語のページならちゃんと元の言葉だって載っているのではないかとウェブで調べてみると、"Why, Prime Minister, someday you can tax it." とか "Whatuse is a newborn baby?" とかのバージョンがありました。ところが、さらに、これらにはファラデーとフランクリンが一緒くたに出てきて、そして完全に作り話、都市伝説だとハッキリしました。良く考えてみれば、わが英雄のファラデー(ホントにすごい人だと思います)が、そんなハシタナイことを言うはずがない気がしますね。
さて、役に立たない元素の合成を機に原子核の図表を見返してみて、やはりどう考えても不思議なのは、今回のとは全く逆側の軽い方の端で、安定な質量数5と8の原子核が存在しないことです。質量数8のベリリウムが極めて不安定ということのために、ビッグバンでの元素合成が進まなかったのだ、そしてこの不安定さが絶妙なのでその後に星の内部ではそれにヘリウムがぶつかって来ることが起こり、炭素ができ、酸素ができたのだと聞かされると、宇宙の素晴らしさに感激するのでありました。
もしもヘリウムに水素がぶつかった質量数5のリチウムが存在してさらにぶつかって重い元素ができていったり、ヘリウム同士の衝突でできた質量数8のベリリウムが安定だったりしたら、ビッグバンの時に宇宙は安定な重い原子核がすべてできてしまっておしまい、水素の核融合で星が輝くこともなく、生命も誕生せず、となっていたのでしょう。これも役に立たぬ話かもしれませんが、面白いですよね!
なんで役に立つとか立たんとかばっかり言うねん、おもろいかどうかが人生でいちばん幸せをさゆうすることやロウ! 責任者出てこい!「出てきたらどないすんのん?」あやまったらしまいや!(またまたお借りしてすんません、この文は3月25日のこのブログから思いついて、じっと持ってました。)
図:ウィキペディアより、原子核の図表。縦軸に陽子の数、横軸に中性子の数を
取っていて、上記の話は左下隅、質量数278のニホニウムは右上隅のあたりの
話。
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