2013年3月11日月曜日

めっちゃ優秀な同級生

 プロジェクトリーダの長田です。
 私たちは京都大学 大学院理学研究科の物理学・宇宙物理学専攻(「京大理学部の宇宙物理」と言えば簡単だけど、正式名称の方はちょっとした早口言葉ですね)に属しています。物性物理を研究しているグループにも、めざましい研究成果をあげている人たちがいますが、その中で前野悦輝教授は超伝導の研究をしています。最近も面白い結果を出して、新聞発表をしていました。

 彼らは、ルテニウム酸化物という物質を冷却して超伝導状態にしています。ルテニウム酸化物はとても注目されている物質で、その理由の一つとして、超伝導の教科書に書いてあるクーパー対(つい)の電子のスピンがプラスマイナスで合計ゼロというのではなくて、ルテニウム酸化物では同じ向きのスピンの電子がペアを組んで合計1という値になっているのではないかと考える証拠がいくつもあるそうです。今回は、超伝導から普通の電気抵抗を持つ状態に変化する際の様子(相転移とよばれる)を調べて、それが過冷却や過熱をともなう「一次相転移」という現象であると突きとめたとのことです。
   超伝導状態のルテニウム酸化物に磁場を掛けて、磁場の強度を高めていくと、過冷却や過熱がなくてエントロピーが連続変化する「二次相転移」ではなく、一次相転移で急激に超伝導が壊れることを見つけたのです。京大のホームページ
<http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/130215_2.htm>
によると、
「今後の超伝導の基礎研究において重要な意味を持っているだけでなく、超伝導の導電線などへの応用に関しても有用な指針を与えると考えられます」とのことです。
   こういう、教科書に書いてあることがガラガラと崩れる可能性のあるようなテーマを研究していきたいものです。
 
    と、以上長々と書いてきましたが、実はこの前野教授は大学時代の同級生で、米国カリフォルニア大で博士号取得後、広島大助教授などを経て京大に戻って来た人です。
センダンは双葉より・・・の言葉通り昔からめっちゃ優秀でしたが、お茶目<http://www.ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/elementouch/index.html>でもありました。

  蛇足を加えて、数学専攻の三輪哲二教授から聞いた話です。
こうやって、ある人のことをめっちゃ優秀と言い切ってしまうと、ああ、その人は天才なんだと、それでわかった気になって思考停止に陥るというのです。
   ガウスが小学生だったとき、算数の先生が、生徒に計算をさせておいて一休みしようと思い、1から100までの数をすべて足すといくつになるかという問題を出したという逸話があります(真偽は不明)。
  しかしガウスはたちどころに等差数列の和を求める式を考え出して答えてしまったといいます。ああ、さすが天才なんだなあ、でおしまい。
   しかし、本当にそうなんだろうか、ガウスって足し算や掛け算を習った後で、数の演算が楽しくって日頃からいろいろと数をこねくり回して遊んでいたのではないだろうか、と三輪先生は言うのです。
   だからこそ、先生がそういう問題を出した時にたちどころに答えが出せた、天才って私たちが片づけてしまうのは、実は、日頃から楽しんでいる人の才能のことなのじゃないだろうか・・・。
   確かに、これを楽しむ者に如かず、と言いますよね。

(前回のブログで「さらに私の思いはさまよって、益川さんが『ぼくはクラシックばかり聴いている』と言ってらしたことから演奏にも基本が大事・・・と流れていきました、それについてはまたいつか書きましょう。」としました<http://sarif-report.blogspot.jp/2012/11/20121113-httpwww.html>が、それはあまりに脇道にそれるので、どうぞ私のページ<http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~nagata/mehe.htm>でお読みください。)

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